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早すぎた「宙に浮く乗りもの」!? 成田空港内を結んだ「シャトルシステム」とは

  • 2018年10月16日
  • 乗りものニュース

かつて、成田空港で出国手続きをした人だけが利用できた乗りものがありした。一見して電車のようでしたが、車輪はなく、日本唯一の仕組みで運行されていたこの交通システムとは、何だったのでしょうか。

成田空港ターミナル内にあった「電車っぽい乗りもの」

 成田空港は1978(昭和53)年に開港。1992(平成4)年には第2ターミナルが、2015年には第3ターミナルが完成し、日本の玄関口として毎日多くの人を受け入れています。

 このうち第2ターミナルには、本館とは別にサテライトと呼ばれる離れのような別棟があります。ここには81〜99番搭乗口があり、これら搭乗口を利用する人は出国手続きを終えたあと、サテライトへ向かわなければなりません。本館の2階部分から、動く歩道も設置された全長300mほどの通路がサテライトへ延びていますが、じつはこの通路ができたのは、第2ターミナルやサテライトの開設から20年以上経ってからのことでした。

 では、通路が完成するまでは、どのように第2ターミナル本館とサテライトを行き来していたのかというと、「シャトルシステム」と呼ばれる乗りものが結んでいたのです。

 シャトルシステムは黄色い電車のような1両編成の乗りものでした。鉄道でいう複線(線路が上下1本ずつ)のように2本のレーン上を走るもので、1レーンにつき2台、計4台の車両が同時に運行。最高速度は20km/hで乗車時間は1分強、1台あたりの最大定員は312人で、それぞれ1日約190往復していました。飛行機の離発着がない深夜や早朝も、空港職員などが利用していたため、24時間運行でした。

宙に浮いて走った!? その正体はじつは…

 レーンに沿って走るシャトルシステムは、一見して鉄道の一種である新交通システム(ゆりかもめなど)のように思われます。しかし、その仕組みはまったく異なっていました。シャトルシステムの「車両」自体には車輪もなく、モーターやエンジンのような動力も搭載されていなかったのです。

 ではどうやって動いていたのかというと、車両の下部につながれた牽引用のワイヤーによって引っ張られていました。ワイヤーは本館側の駅側にあった直径2mほどの巨大な巻き上げ機につなげられており、レーンの両脇に備えられたガイドレールに沿って、車両を牽引していたのです。運転士は乗っておらず、本館側の直下にあったシャトル監視室で運行がコンピュータ制御されていました。

 つまり、シャトルシステムは「横に進むエレベーター」だったのです。事実、このシステムを開発したのは日本オーチス・エレベータ。法規上もエレベーターの扱いでした。

 さらにこのシャトルが特徴的なのは、車体が浮いているということ。車体が浮く乗り物というと磁力によるリニアモーターカーを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、このシャトルシステムはまったく違う仕組みで宙に浮いていたのです。

 全長約16mある車両の下面には、タイヤを寝かせて敷き詰めたように、丸くて平べったいエアーパッドが並んでいます。そのエアーパッドの下方に開いた直径1cmほどの孔から、圧縮空気が噴出されます。それにより地上から約0.1mm車体が浮き上がり、摩擦による抵抗をなくすことで、ワイヤーにて水平に牽引できたのです。日本国内ではここだけ採用されていたシステムでした。

引退後は空港近くで余生を送る

 このシステムは、巨大ターミナルゆえの歩行の負担をなくすものでしたが、長距離輸送や大量輸送には向いていませんでした。実際、レーンがあった場所に新設された通路は、歩いても5分ほど。シャトルシステムの乗降時間や待ち時間などを考えると、年々利用人数が増えていた成田国際空港では、あまり利便性の高い乗りものとはいえなかったようです。また、老朽化の兆しもあったなかで、不具合発生時の代替手段をどう確保するかという課題も抱えていました。

 シャトルシステムのすぐそばで通路の新設工事が進められ、シャトルシステムは稼働から21年後の2013(平成25)年9月に廃止。日本で唯一の水平に移動するエレベーターは姿を消し、翌日から通路の使用が開始されました。新設の通路は前述のとおり、動く歩道などで歩行の負担を軽減するだけでなく、柱や窓枠を極力減らし、航空機を一望できる眺望を活かすなどして、移動を「楽しみ」に変えるというコンセプトで造られています。

 空港から消えたシャトルシステムですが、2018年現在、その姿を見ることができる場所があります。成田空港のすぐ南、千葉県芝山町にある空の駅「風和里しばやま」。この敷地の片隅にシャトルシステムの車両が2両、屋外展示されています。

 展示車両は「シャトルシステム LAST RUN」と書かれたステッカーも前方に貼られたままで、廃止時の姿をとどめています。見学は自由。車両の中に入ることはできませんが、窓から車内を覗くことが可能。離着陸する飛行機を上空に眺めながら、シャトルシステムが多くの旅行客を乗せた往時を思い浮かべることができるかもしれません。

記事制作協力:風来堂、加藤桐子

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