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南シナ海の海自艦艇活動が航行の自由作戦ではない理由 中国へのけん制明らか、なぜ?

  • 2018年10月6日
  • 乗りものニュース

2018年初秋、南シナ海では、日本の海上自衛隊が中国の野望をけん制すべく大いに活動しています。南シナ海といえば、米英などが実施した「航行の自由作戦」が知られますが、これとは違うといいます。どういうことでしょうか。

南シナ海で活発に活動する海上自衛隊

 海上自衛隊は、2018年8月26日から10月30日の日程で、ヘリ護衛艦「かが」を中心に、高い防空能力を備える護衛艦「すずつき」と、攻守共にバランスの良い性能を備える護衛艦「いなづま」の計3隻を、南シナ海を含むインド太平洋方面に派遣しています。これらの艦艇は、フィリピンやインド、シンガポールといった国々への訪問を予定していて、すでに2018年9月7日にフィリピン海軍と、さらに9月22日にはインドネシア海軍と共同訓練を実施しています。

 また、こうした事前に訪問予定が明らかにされていた国とは別に、8月31日にはフィリピン近海においてアメリカ海軍の空母「ロナルド・レーガン」と、その約1か月後の9月26日にはインド洋においてイギリス海軍のフリゲート艦「アーガイル」との共同訓練をそれぞれ実施しています。

 さらに、9月13日には海上自衛隊の潜水艦「くろしお」と共に、対潜水艦戦の訓練を南シナ海において実施したことも明らかにされました。これに関しては、のちに政府から、実は日本が15年前からこうした潜水艦の訓練を南シナ海で実施してきたことが明らかにされています。隠密性が命である潜水艦の活動が公表されるのは極めて異例ですが、それが行われた理由に関しては後述します。

 こうした海上自衛隊によるインド太平洋地域への「かが」のようなヘリコプター搭載型護衛艦(「ひゅうが」や「いずも」など、ヘリコプターの運用を中心的機能とする護衛艦)を中心とする艦艇部隊の派遣は、2017年の護衛艦「いずも」を中心とする部隊の派遣に続いて2年連続の実施となり、海上自衛隊が南シナ海を含む同地域での活動を活発化させていることがうかがえます。

日本から遠く離れた南シナ海で活動するワケ

 海上自衛隊の艦艇が日本から遠く離れたインド太平洋地域、とりわけ南シナ海での活動を活発化させていることについて、やはり中国へのけん制という理由が大きいことは間違いないでしょう。

 日本が平時より南シナ海に海上自衛隊の艦艇や航空機を派遣し、そこで存在感をアピールすることによって、もし南シナ海で有事が発生した際には、日本が海を越えてその問題に関わってくるかもしれないという疑念を中国に抱かせることとなるでしょう。そうなれば、いざというときに中国はフィリピンやベトナムなど自分達より戦力の小さい海軍を相手にするだけではなく、より手ごわい相手である海上自衛隊にも対応する必要がでてきます。そうなれば、中国が南シナ海での覇権を握るためにはより強力な戦力を投入する必要に迫られ、結果としてそのハードルがグッと高まることになるでしょう。とくに、今回南シナ海において「かが」との共同訓練を行ったことが明らかになった海上自衛隊の潜水艦は中国にとって非常に厄介な存在となるでしょう。

 潜水艦は海に潜りながら静かに活動する、まさに「海の忍者」ともいうべき存在で、実際に姿が見えなくとも、敵に対して「もしこの海域に潜水艦がいたら……」という恐怖を与えることができます。つまり、今回の異例の訓練公表の理由として、海上自衛隊の潜水艦が南シナ海にいるかもしれないという可能性をあえて示すことで、中国軍に対して活動に関する制約を与えたり、警戒の強化を余儀なくさせたりすることを目的としていたとみられます。

 さらに、海上自衛隊と南シナ海に面する国々の海軍が定期的に共同訓練を行うことによって、お互いの練度の向上や有事の際の相互連携の基礎を築くことができ、いざというときには中国に対して日本を含む多数の国々が連携して対応する、言い換えれば中国を包み込むことができるようになるでしょう。こうしたことによって、南シナ海における中国の動きをけん制することができると考えているのではないかと思われます。

海上自衛隊が南シナ海で「航行の自由作戦」を実施しない背景

 南シナ海では、中国が自分たちの物だとして領有権を主張する岩礁や人工島にアメリカ海軍やイギリス海軍が軍艦を接近させ、そのような主張は認めないということを示す「航行の自由作戦」を実施していますが、じつは自衛隊は南シナ海においてこの作戦にこれまで一度も参加したことはなく、さらにはそもそも参加させる予定もないことが政府の説明によって明らかにされています。

 南シナ海への海上自衛隊の艦艇派遣が中国をけん制するという目的で行われているならば、なぜ海上自衛隊の艦艇を同作戦に参加させないのでしょうか。

 これは、日中間で見解の相違がある尖閣諸島の問題と関係があると筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は推測します。もし仮に、海上自衛隊が南シナ海で「航行の自由作戦」に参加すれば、中国もそのお返しと言わんばかりに東シナ海の尖閣諸島周辺で行動をエスカレートさせる可能性があります。そうなれば、現場での緊張度は高まってしまい、事態の悪化を招きかねません。そうした事態を避けるために、日本としては南シナ海での行動について「領有権問題と対中けん制をあえて切り離している」と考えられます。

 いずれにせよ、10月末までの残りの派遣期間中に3隻の護衛艦が果たして何をするのか、そして今後自衛隊全般として南シナ海問題にどう関わっていくのか、要注目です。

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