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防空システム「イージスアショア」の特徴は? 導入で、日本が得られる大きなメリットとは

  • 2018年8月5日
  • 乗りものニュース

日本政府が導入を目指す「イージスアショア」について連日報道がなされていますが、そもそもどのようなもので、導入することによりどのようなメリットがあるのかを解説します。

そもそも「イージスアショア」とは

 2018年7月末、連日の報道で話題となった「イージスアショア」ですが、しかし取り上げられるのはその価格が中心で、「イージスアショア」自体の説明についてはあまり見受けられません。そこで、今回はこの「イージスアショア」とは一体どのようなもので、導入すればどんなメリットが期待されるのかなどについて概説したいと思います。

 イージスアショアについて見ていく前に、まずはこの「イージスアショア」という言葉の意味から見ていきたいと思います。そもそも「イージスアショア」という言葉は、「イージス」と「アショア」というふたつの単語がくっついてできています。

 前半分の「イージス」は、敵の航空機やミサイルを遠距離から捉えるレーダーや、そこで捕捉した敵を撃ち落とす迎撃ミサイルなど、さまざまなシステムが組み合わさってひとつの強力な防空システムを構成する「イージスシステム」のことで、ニュースなどでよく耳にする「イージス艦」のイージスと同じ意味です。

 一方後ろ半分の「アショア」は、英語で「陸上」を意味する言葉です。つまり、「イージスアショア」とは、「陸上にあるイージスシステム」ということになります。

 これは、実際にイージス艦とイージスアショアの画像を見比べてみれば一目瞭然です。イージスアショアは、イージス艦の艦橋周辺部分を陸上にすっぽりと移設したものだということがお分かりになるかと思います。

実は世界でたった3基

 では、イージスアショアについてもう少し細かく見ていきましょう。イージスアショアは、敵が発射したミサイルをレーダーによって探知、追尾し、迎撃ミサイルを発射してこれを撃破するための地上設置型防空システムです。

 イージスアショアは、大きく分けてふたつの建物によって構成されています。ひとつは、壁面にレーダーを張り付け、さらに通信用のアンテナなどを組み込んだ建物、そしてもうひとつが、迎撃ミサイルを発射するための垂直発射装置(VLS)を組み込んだ建物です。

 現在、イージスアショアはアメリカ軍のみで採用されていて、ヨーロッパをミサイルの脅威から守るためにルーマニアとポーランドに実戦用のイージスアショアがそれぞれ1基ずつ配備されているほか、ハワイのカウアイ島に実験用のイージスアショアが1基、合計3基のイージスアショアがいま現在この地球上に存在しています。

 また、地上設置型の防空システムということでものすごくがっしりとした建物を想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはイージスアショアは「移動する」ことも可能です。もちろん、建物にタイヤがついているわけではなく、イージスアショアを構成する建物を一度解体し、それを別の場所に運んで組み立てなおすことによって設置場所を移動することができるというわけです。

 では、そのようなイージスアショアを導入することによって、一体日本にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

イージスアショアのメリット

 まず挙げられるのが、24時間365日の連続した弾道ミサイル防衛(BMD)体制の確立です。

 現在、日本の弾道ミサイル防衛体制は海上自衛隊のイージス艦4隻と、航空自衛隊の地対空ミサイルPAC-3によって構成されています。しかし、このうち海上自衛隊のイージス艦は、365日連続して海に浮かんでいられるわけではありません。たとえば、船体のメンテナンスのために定期的にドックに入る必要があったり、乗員の休養や物資補給のために港に停泊したりする必要もあります。その点、イージスアショアは地上に設置されているため定期的な修繕などを必要とするわけではありませんし、運用する人員を交代制にしてローテーションを組めば、24時間365日いつでも弾道ミサイル防衛に従事することができます。

 さらに、イージスアショアの導入で得られる最も大きなメリットとして、「イージス艦の弾道ミサイル防衛からの解放」が挙げられます。

 そもそもイージス艦は、弾道ミサイル防衛のみを行うための存在ではありません。本来の任務は味方の艦隊を敵の航空攻撃から守る艦隊防空であって、弾道ミサイル防衛は後々付け加えられた任務です。

 しかし、昨今の北朝鮮情勢の影響で、海上自衛隊のイージス艦は日本海での長期間の弾道ミサイル警戒任務を強いられ続けてきました。これにより、本来イージス艦が行うべき艦隊防空に当のイージス艦が加わることができなかったり、あるいは日常のこまごまとした訓練を行ったりすることも難しくなってしまいました。これは、イージス艦の運用能力低下につながりかねない深刻な事態です。実際に、アメリカ軍でも弾道ミサイル防衛がイージス艦に及ぼすこうした悪影響を念頭に置き、地上を守るための弾道ミサイル防衛は地上にあるシステムで行うべきではないか、という意見も出始めています。

 そこで、常日頃から行う弾道ミサイル防衛はイージスアショアに任せ、いざというときにはイージス艦も加わって弾道ミサイル防衛を行うようにすれば、イージス艦の運用能力を維持向上することができるでしょうし、イージス艦の運用に余裕が出てくれば、現在尖閣諸島をめぐって日本と対立がある中国の海洋進出に対応させることもできます。これこそが、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)が考えるイージスアショア導入で日本が得る最も大きなメリットです。

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