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「熊本空港アクセス鉄道」実現か? 一度は「断念」された構想が再浮上したワケ

  • 2018年8月3日
  • 乗りものニュース

かつて検討されながら実現しなかった「熊本空港アクセス鉄道」が注目されています。一度は「断念」された構想であるにも関わらず、なぜ再浮上したのでしょうか。

利用者見込めず検討を凍結

 現在は「阿蘇くまもと空港」という愛称を持つ、熊本空港。その名の通り阿蘇山の麓にあり、熊本の「空の玄関口」です。現在、この空港と熊本市を結ぶ鉄道の構想が浮上しています。

 実は10年以上前にもアクセス鉄道が検討されたものの、このときは事実上断念されています。一度は結論が出たはずなのに、なぜここに来て構想が再浮上したのでしょうか。

 熊本空港は戦時中、現在の熊本市東部の長嶺南地区に陸軍の飛行場として開設。戦後の1960(昭和35)年に民間空港としてオープンしました。しかし、周辺の市街地化が進んだため騒音の問題が懸念されるようになり、航空機のジェット化も難しいといった課題を抱えるようになったのです。このため1971(昭和46)年、益城町と菊陽町の境界線付近に移転し、いまに至っています。

 ただ、現在の熊本空港は熊本市の中心部から直線距離でも約15km離れていて、アクセスは旧空港より不便になりました。そこで熊本県は2004(平成16)年、アクセス鉄道の検討を始めました。

 しかし、当時の検討では総事業費が286億円と試算。自治体などが線路施設を建設、保有し、列車を運行する鉄道事業者に施設を貸し付ける「上下分離方式」の場合、少なくとも224億円は地元負担になることが見込まれました。地方の自治体にとっては、おいそれと出せる金額ではありません。

 また、アクセス鉄道の利用者数も1日あたり5000人が必要なところ半分の2500人しか見込めないことが分かり、熊本県は2008(平成20)年に検討の凍結を表明。アクセス鉄道の建設を事実上断念したのです。

再検討は「分岐」「モノレール」「市電」の3案

 その代わり、当面は既存の鉄道とバスを組み合わせることでアクセスの改善が図られることになりました。2011(平成23)年、豊肥本線の肥後大津駅と空港を結ぶシャトルバス「空港ライナー」の運行が始まっています。2017(平成29)年には肥後大津駅に「阿蘇くまもと空港駅」という愛称が付けられ、空港の「最寄駅」であることをアピールしています。

 一方、熊本空港の利用客数は検討凍結後の2009(平成21)年度以降、280万人台で推移していましたが、2012(平成24)年度ごろから急速に増えました。2015年度には過去最高の約318万人を記録。熊本地震が発生した2016年度こそ300万人を割り込みましたが、2017年度は訪日外国人観光客による国際線利用者の大幅増加もあって334万人となり、過去最高記録を更新しました。

 アクセス鉄道の検討を凍結した10年ほど前に比べれば、鉄道でアクセスする人数も増える可能性が高く、採算性の向上が見込めます。また、熊本市の中心部と空港を直通するリムジンバスは朝夕を中心に遅れや乗り残しが慢性的に発生。定時輸送が可能な交通機関、つまり鉄道整備の必要性が高まってきたといえます。

 こうしたことから熊本県は、2018年度の一般会計当初予算に空港アクセス改善のための調査費(900万円)を計上。空港運営の民営化(2020年予定)や新しいターミナルビルの完成(2022年度)を控えたタイミングにあわせ、アクセス鉄道の整備を再び目指すことにしたのです。

 熊本県は鉄道によるアクセス改善について、(1)豊肥本線から分岐して空港まで延伸、(2)モノレールを熊本市の中心部から空港まで建設、(3)熊本市電(路面電車)の延伸の3案を比較検討しています。ただ、モノレールは建設距離が長くなるうえに、ほかの鉄道路線からの直通運転ができません。市電は普通の鉄道に比べて速度が遅くなる可能性が高そうです。

 となると、今回の再検討も、豊肥本線の分岐延伸案を基本に進められているのではないかと思われます。

阿蘇方面や南阿蘇鉄道からも直通列車?

 2004(平成16)〜2008(平成20)年に検討された案では、豊肥本線の三里木駅で分岐。熊本県民総合運動公園を経由して空港まで延伸する全長9.8kmのルートが想定されていました。このルートを踏襲するのか、あるいは全く別のルートになるのかが焦点になりそうです。おそらくは熊本県などが出資する第三セクターが建設し、JR九州が第三セクターから線路を借りて列車を運行することになるでしょう。

 過去の検討案のまま建設された場合、分岐線が接続する三里木駅は豊肥本線の電化区間内(熊本〜肥後大津間)ですから、熊本駅と熊本空港を直通する普通列車が走るでしょう。ただ、豊肥本線は全ての区間が単線。時間帯によっては列車の増発が難しいため、肥後大津行きと熊本空港行きの列車が三里木駅まで連結して走るかもしれません。

 熊本〜熊本空港間の所要時間は、各駅に停車する普通列車の場合で30分台後半から40分台になるでしょうか。途中の主要駅のみ停車する快速列車なら、もう少し短くなる可能性もあります。現在運行されているリムジンバスの所要時間は熊本駅前〜熊本空港間が約1時間ですから、10〜20分くらいは短縮されると思われます。

 ちなみに、豊肥本線・肥後大津〜立野〜阿蘇間は熊本地震の影響で運休が続いていますが、2017年から復旧工事に着手。立野〜中松間が運休中の南阿蘇鉄道も、2022年度の再開に向けて復旧工事中です。再開の暁には、南阿蘇鉄道の列車を豊肥本線に乗り入れさせることも検討されています。

 アクセス鉄道が建設されれば、豊肥本線の阿蘇方面や南阿蘇鉄道からも、空港へのアクセスが改善されます。熊本市中心部からのアクセスに比べ需要は小さいと思われますが、あるいは震災復興の「目玉」として、空港から南阿蘇鉄道や豊肥本線の阿蘇方面に直通する観光列車も運転されるかもしれません。

 もちろん、建設費をどう調達するかなどの課題は残っており、本当に実現するかどうかはまだ分かりません。とはいえ、10年前よりは実現の可能性が高くなったことは確か。今後の動きが注目されます。

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