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国内ヘリパイロットの4割を輩出、陸自の「FEC」とは 資格取得へどんなコースが?

  • 2018年7月29日
  • 乗りものニュース

日本国内のヘリコプターパイロットの約4割を輩出しているのは、民間でも空自でも海自でもなく、実は陸上自衛隊です。ヘリパイロットになりたい場合、陸上自衛隊はひとつの選択肢になるかもしれません。具体的にどのようなコースがあるのでしょうか。

まずは入隊せよ! 陸自ヘリパイロットへの道

 陸上自衛隊が保有する装備品には、大空を舞う航空機も含まれています。その大多数は各種ヘリコプターで、駐屯地のイベントなどで縦横無尽に飛び回るその姿を見ると、空への憧れも強くなっていきます。

 ところで、陸海空自衛隊でヘリコプターパイロットになるにはどのような方法があるのでしょうか。

 そのひとつに、幹部候補生として入隊して、飛行要員に選抜されるというコースがあります。「幹部候補生」とは、文字通り将来の幹部自衛官(尉官以上の階級。外国や旧日本軍では「士官」と呼称)を目指すコースのことで、おもに大学卒業以上の資格保有者を対象として募集しています。防衛大学校の卒業生も、基本的にはこれと同じコースが用意されています。

 ほか航空自衛隊と海上自衛隊には「航空学生」という制度があり、おもに高校卒業と同程度の資格や学力の保持者を対象とした募集をしています。ちなみに、パイロットは航空機の操縦という高度な技能を持つことなどから幹部自衛官へ任官することになりますが、航空学生もその際には幹部候補生学校で幹部教育を受けることになります。こちらのコースは入隊からパイロットになるための道のりが明確になっていて分かりやすいといえるでしょう。

 他方、陸上自衛隊でヘリパイロットになるためには、空自や海自とは異なるアプローチが必要になります。もちろん、陸自にも幹部候補生からパイロットになるための道のりはあります。ただし、空自や海自のように入隊時からパイロットになるための教育を受ける航空学生のような制度はありません。陸上自衛隊でパイロットになる道はひとつしかないのでしょうか。

 実は、一般公募されている入隊コースにはない、陸上自衛官になってからチャンスが巡ってくる「陸曹航空操縦課程(フライト・エンリステッドマン・コース、以下『FEC』)」というヘリコプターパイロットへのコースが存在するのです。

幹部コース外からのヘリパイロットへの道、陸自の場合

 FECでヘリコプターパイロット候補としてこの教育を受けるには、「防衛大学校卒業や一般幹部候補生などの幹部候補生」以外のコースで陸自に入隊し、まずは部内での選抜試験をクリアして陸曹に昇任しなくてはなりません。無事に陸曹へ昇任したら、1年以上部隊での勤務経験を積み、その段階で27歳未満の者だけに受験資格が与えられます。

 部隊の実状からすると、18歳で入隊して陸曹になるまでには最短で4年程度の年月が必要になります。最短で陸曹になったとしても22歳で、そこからさらに1年の勤務経験を積む必要があることから、受験できるのは23歳ころとなり、受験可能回数は少なくなります。そのためFECには、中学校卒業とともに自衛隊へ入隊した、高等工科学校の卒業生が多くなります。高等工科学校を卒業すると、卒業後1年間部隊で勤務したのちに陸曹へ昇任します。たとえば、中学校卒業と同時に15歳で高等工科学校へ入校した場合、20歳で陸曹になれるので、受験チャンスは多くなります。

 こうして無事にFECへ進むことが許された隊員たちは、どのような教育を受けるのでしょうか。

ヘリパイロットになるための第一歩は座学から

 陸自ヘリパイロットの養成は、幹部を対象とした教育は航空学校明野本校で行われ、陸曹を対象としたFECは航空学校宇都宮分校で行われています。両教育ともにまずは、パイロットとして必要な英語や各種航空機に関する知識などの基礎的な教育を9ヶ月間受けることになります。このあいだはずっと座学が続くそうです。

 前期教育が行われたあとにはいよいよTH-480Bを使用した中期教育が行われます。このTH-480Bというヘリコプターは、米エンストロム・ヘリコプター・コーポレーションが製造したヘリコプターで、もともと米陸軍の練習機として開発されましたが、結局米陸軍には採用されておらず、インドネシアやエストニアなどでの国境警備用に採用されています。練習機としては陸上自衛隊とタイ王国陸軍が採用しています。軽く小さい機体で操縦性能が良く、陸自の航空機としては珍しいブルーメタリック塗装になっています。

 教育期間中は教官1名に対して学生2名が付き、集中した教育訓練が行われます。9ヶ月間にわたる中期教育を修了して試験に合格すると、操縦士の証明であるウイングマークと国家資格とを取得する試験を受験することになります。

機種ごとに訓練期間も異なる

 無事に試験をクリアしたあとは、後期教育としてUH-1J「ヒューイ」やUH-60JA「ブラックホーク」、CH-47JA「チヌーク」などといったヘリコプターの実機による教育が行われます。それぞれの機種によって教育期間が異なり、最も教育期間が短いのがUH-1J「ヒューイ」の約14週間です。逆に、最も長いのがAH-64D「アパッチ・ロングボウ」で、約26週間の教育を受けることになります。そのため、FECに入校してからパイロットになるには、最短で1年9ヶ月、最長でも2年3ヶ月掛かることになります。

 こうして一人前のヘリパイロットになるFECの隊員たちですが、幹部自衛官もほぼ同じコースを辿ることになります。唯一違う点は、FECの場合、教育を終えて部隊勤務を開始してから、幹部候補生学校に入校して幹部自衛官に任官するという点くらいです。

 階級の昇任具合でお話しすると、陸曹の最下等階級である3等陸曹でFECに入校して、中期教育が終わる前に2等陸曹に昇任します。部隊勤務が始まるころには1等陸曹に昇任して身分は陸曹操縦学生から飛行幹部候補生となります。そして幹部候補生学校に入校するころには陸曹長となり、幹部候補生学校を卒業して部隊に戻る頃には3等陸尉へ任官します。その後は、パイロットとしての知識や技術を向上させ、立派なパイロットになるために、日々努力を重ねるといいます。

 日本のヘリコプターパイロットの約7割が自衛隊に所属しています。自衛隊全体でのヘリコプターパイロットは陸自が約7割と最も多く、陸自内でのヘリコプターパイロットの約8割がこのFEC出身者です。約7割×約7割×約8割でイコールすると、日本の空を飛ぶヘリコプターパイロット全体の約4割がFEC出身者となるのも興味深いお話です。

 ちなみに、陸自には唯一の固定翼機となるLR-2連絡偵察機も配備されていますが、陸自は自前での固定翼パイロットの教育機関を持っていないため、山口県に所在する、海上自衛隊小月航空基地に隊員を派遣して、海上自衛隊にその養成を依頼しているそうです。

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