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方向幕やバスカードも過去のものに? いまや珍しいバスの設備【路線バス編】

  • 2018年7月21日
  • 乗りものニュース

日本の路線バスは、乗りやすさ、わかりやすさを向上させるべく日々進化し続けています。「ノンステップ化」「ICカード」「カラーLED行先表示」などの普及が進んだ一方で、数を減らし、いまや珍しい存在となったサービスや設備もあります。

「デジタル化」「バリアフリー」で進化する路線バス

 より「乗りやすいバス」「分かりやすいバス」をめざし、日本の路線バスは日々進化し続けています。一方で、「いまでは珍しい」「数を減らしている」サービスや設備があるのもまた事実です。これらの流れに共通するキーワードを付けるとしたら、「デジタル化」「バリアフリー」という言葉があてはまるかもしれません。

コレクターズアイテムとなった「方向幕」

 最近、街中を走る路線バスの行先表示を見て、何か気付くことはありませんか。鉄道の駅や車体の行先表示では当たり前になりつつあるLED方式の行先表示器が、バスにおいても普及しているのです。

 LED行先表示器を導入するメリットは、「スムーズに行き先や種別を変更できる」「表示内容の編集が容易」「多彩な表示が可能」「メンテナンス費用を下げられる」など様々。現在主流なのは、オレンジ色など単色で表示するタイプですが、最近は複数の色を用いるカラーLED行先表示器も徐々に普及してきています。

 その影で急速に数を減らしているのが、「方向幕」と呼ばれる幕式の行先表示器です。行き先や運行区間、路線名などを表示した「幕」(フィルム状のもの)を、巻き取り器などを使って表示させるというものですが、LED式の普及が進むにつれ、「車両の転属や路線の改廃時に幕の交換作業が必要」「モーターやギアといった駆動部分のメンテナンスコストがかかる」などのデメリットが目立つようになりました。加えて、方向幕は焼却すると有害物質が発生するために、焼却処分ができません。このため、バス関連イベントで廃品として販売されることが多く、短時間で完売になることも多い人気のコレクターズアイテムにもなっています。なかにはネットオークションなどで高額で取引されているものもあります。

 一方で、京都市交通局(京都市営バス)のように、あえて方向幕を採用し続けるバス事業者もあります。同局ではもともと方向幕の系統番号を色分けして意味を持たせていましたが、2014年3月の運行計画変更で、さらに経路に応じたシンボルカラーを採用した結果、単色のLED行先表示では複雑な配色ルールに対応することが難しいため、現在でも方向幕を採用しているのです。

 じつは同局では、2010年代に入ってからいったん新車でLED行先表示器を採用していましたが、新運行計画が発表された2013年度新車からフィルム式の方向幕に戻していました。しかし、「平成30年度交通事業予算概要」によると、予算の重点項目の中に「見やすいフルカラーLED行先表示器の導入」が明記されており、早ければ2018年度にはフルカラーLED行先表示器を搭載したバスが登場する予定になっています。

車内も「デジタル化」 バスカードはどこへ?

 車外の行先表示器と同様に、車内設備も「デジタル化」が進んでいます。

運賃表は「デジタル式」ももう古い? 「幕式」はさらに希少に

 車内に設置されている運賃表の液晶表示化(LCD化)も進んでいます。LCDの運賃表は導入コストこそ高いものの、「データの書き換えのみで運賃改定や系統新設・廃止に対応できる」「広告や各種お知らせなど多彩な表示が可能」といったメリットがあります。

 これにともない数を減らしているのが、幕式運賃表とデジタル運賃表です。もともと、幕式運賃表はかつてのデジタル運賃表の普及で数を減らしており、いまではほとんど見かけなくなりましたが、最近はLCD運賃表の普及で、デジタル運賃表も数を減らしています。

 一部のバス会社では、現在もデジタル運賃表が第一線として活躍していますが、ICカードの普及でLCD運賃表示器も今後さらに普及すると予想されます。そう遠くないうちに、デジタル運賃表と幕式運賃表が過去のものになってしまうかもしれません。

バスのICカード導入を国も推進 バスカードはなくなる?

「Suica」「PASMO」といった交通系ICカードの普及と、それらの共通利用化は、鉄道だけでなくバスにおいても進んでいます。これにともなって急速に数を減らしているのが、磁気式のプリペイドカード(=バスカード)です。

 鉄道ではJRをはじめ多くの事業者が磁気式プリペイドカードの運用を終了していますが、バスにおいてもICカード化の流れは急速で、大都市の主要バス会社ではほぼ完了。多くの地方のバス会社でも、LED行先表示器やLCD運賃表と合わせてICカードの導入が進んでいますが、道南バス(北海道室蘭市)、和歌山バス(和歌山市)、中鉄バス(岡山市)など、磁気式プリペイドカードの運用を続けているところもあります。

 しかし、国土交通省は「交通政策基本法に基づく交通系ICカードの普及・利便性拡大」の一環として、全国相互利用サービスに加盟しているIC乗車カードを、それに加盟していない地域独自のICカードが運用されているエリアでも使えるようにすることを推進しています。今後さらにICカードの普及が進むことが予想され、そう遠くない時期に磁気式のプリペイドカード(=バスカード)が完全に無くなるということもありうるかもしれません。

車内の「声」と「扉の位置」も変わってる!

 デジタル化は目に見えるものだけに留まりません。車両も変化しています。

そういえば昔はなかった「発車します」アナウンス デジタル化で可能に

「次は〇〇です」「次とまります」「バスが完全に停止してから席をお立ち下さい」など、路線バスに乗ると必ず耳にする車内放送。じつはこれもデジタル化が進んでいます。

 昔は、あらかじめ録音した音声を、大きなカセットテープで再生する方法が採用されていました。カセットテープが伸びて「つぎ〜は、○○です〜」など“ムラ”がある放送に懐かしさを感じたものですが、現在はデジタル化が進み、アナウンサーや声優などが発した録音音声をデジタル機器で再生する方式が主流に。なかには、パソコン上で音声を制作し、その音声をデジタル機器で再生するバス会社もあります。

 これにより、カセットテープではできなかった扉が閉まった際の「発車します」、降車ボタンが押されたときの「次、止まります」など、シーンに合わせたリアルタイムな車内放送が可能になったほか、期間限定で有名人の特別アナウンスを車内放送で流すといったことも比較的簡単にできるようになりました。

 デジタル機器で再生する方式が主流になるにつれ、車内放送のテープと放送再生機器はほとんど使われなくなりました。一方で、これらも方向幕と同様に人気のコレクターズアイテムになっており、放送再生機器を家庭用の電源で動くように改造して、車内放送を自宅で楽しむバスファンも少なからずいます。

消えた「前後扉バス」 日本唯一のノンステップ車両もあった

 運転席横とリアオーバーハング(後輪よりも車体後ろ側)に扉が付いている「前後扉」のバス。詰め込みが効くことから、関西をはじめとする西日本地方を中心に全国各地で活躍していましたが、ノンステップバスの普及と、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)に準拠するため、現在は低床化して車椅子の乗降をしやすくできる「前中扉車(前扉と中扉を持つ車両)」が主流になっています。

 これにともない、前後扉のバスは数を減らしています。現在は一部の地方事業者などで活躍していますが、大都市圏で新型ノンステップバスが普及し、中古のノンステップバスが地方へ移っていることから、そう遠くない時期に消滅することが考えられます。

 ノンステップ化を背景に「前中扉」が普及していきましたが、じつは「前後扉のノンステップバス」も存在しました。1997(平成9)年発売された「三菱ふそう・エアロスター ノーステップバス」に、「前後扉仕様」がラインナップされていたのです。エンジンの配置位置を工夫することで、後扉まで完全ノンステップを実現したのが特徴でしたが、後扉付近の通路幅が狭く、車椅子での乗車が困難であったことから、全くといっていいほど売れなかったそうです。2000(平成12)年に神姫バスがこのモデルのメーカーサンプル車を購入し、日本で唯一の前後扉ノンステップバスとして一時期注目を集めました。

【番外】乗れたらラッキー!? 絶滅危惧種「モノコックバス」とは

 現在、街中を走るバスを眺めてみると、角張ったスタイリッシュなデザインのバスばかりが目につきます。これらのバスは「スケルトンバス」と呼ばれ、現在のバスのデザインの主流ですが、かつては丸みを帯びて頑丈にみえる「モノコックバス」が主流でした。現在はほぼ見かけることがありませんが、それでも日本では数台ほど現役で活躍しています。

 現役の路線バスとして活躍しているのは、士別軌道(北海道士別市)と沖縄バス(那覇市)、東陽バス(沖縄県南城市、現在長期運休中)、伊予鉄南予バス(愛媛県八幡浜市、不定期運行)の4社。このほかに、弘南バス(青森県弘前市)が貸切車として、熊本バス(熊本県熊本市)が動態保存車として在籍しています。

 愛らしい姿を見るために全国各地からバスファンが訪れる一方で、修理に必要な部品の確保が次第に難しくなっており、活躍できる期間も残りわずかと考えられます。乗りに行くのであれば、できるだけ早いうちに訪れた方がよいかもしれません。

 以上、「今では珍しい」「数を減らしている」バスのサービス・設備の中から、おもなものを紹介しましたが、装備品やサービスを細かく見ていくと、「そういえばあったよね」というものがまだまだ出てくるかもしれませんね。

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