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陸自の足「1/2tトラック」とは 「隊内で最もありふれた車両」はどんなクルマ?

  • 2018年6月12日
  • 乗りものニュース

陸自で「パジェロ」といえば、1/2tトラックを指します。ベース車両はもちろん三菱「パジェロ」で、どこの部隊にも見られるごくごくありふれたクルマですが、それだけ不可欠なクルマと言えるかもしれません。

「ジープ」から「パジェロ」へ変身

 陸上自衛隊の、どこの部隊にもある車両といえば「1/2tトラック」が挙げられます。「トラック」という呼称ではありますが、ベース車両は三菱自動車におけるRV(あるいはオフロードSUV)の代名詞ともいえる「パジェロ」(2代目)です。

 1/2tトラックは、1973(昭和48)年に制式採用された「73式小型トラック」が元になっています。この73式小型トラック、汎用の小型トラックとして三菱「ジープ」のJ-24-A型と呼ばれる型式が採用されました。隊員たちからはそのまま「ジープ」と呼ばれ長年親しまれていたクルマです(編集部注:以下本記事で「ジープ」と記述する場合、この先代73式小型トラックを指します)。

 1996(平成8)年になると、当時の最新排ガス規制への対応や、事故の際の衝突安全性の向上を図る必要などがでてきました。また。操縦性や居住性の向上も求められていたことから、当時の防衛庁は新73式小型トラックとして「パジェロ」ベースの車両を採用することにしました(編集部注:以下本記事で「パジェロ」と記述する場合、この新型73式小型トラック=1/2tトラックを指します)。なお、「ジープ」のほうはその後、1998(平成10)年まで生産されましたが、2018年現在では陸自のごく一部の部隊を除き、そのほとんどが退役しているため、なかなか見ることができません。

 実は、この「ジープ」から「パジェロ」への転換には、ある思惑があったといわれています。将来的に、旧式化した「ジープ」はいずれ排ガス規制に適合しなくなるのが明らかでした。制式化された装備品を変更することは非常に複雑な手続きをともなうため、スムーズに新型への更新ができないと思われていました。このため、当時の防衛庁は、現行の「ジープ」を改造することにしたのです。しかし、改造コストが掛かりすぎ、なおかつ車体の大きさからも改造には限界がありました。そこで1996年、前年に東洋工機から社名を変更したパジェロ製造の、(現行型)73式小型トラックを採用することになったのです。

 この更新に際しては、あくまでも「73式小型トラック」の改造版である。とのことで、予算要求し、そのまま国会で承認されています。また当時の自衛隊上層部でも、「ジープ」を改良したら「パジェロ」になった、という認識だったそうです。2001(平成13)年には「パジェロ」の正式名称が「73式小型トラック」から現在の「1/2tトラック」へ変更されています。

自衛隊車両で初めてラジオ(無線にあらず)を搭載!

「パジェロ」こと1/2tトラックは、おもに指揮、連絡用に使用されたり、少人数の人員輸送や、車体に手を加えて対戦車火器を搭載したりして使用されています。最大6名が乗車可能ですが、3ドアのため中間の席に座るには前席を倒す必要があります。また、運転席の後ろの席を前に倒して、その場所に無線機を置く場合もあります。この場合は最大定員5名となります。が、一番後ろのスペースには荷物が置かれることが多いため、実質3名定員のような感じで運用されます。

 運転には普通免許と自衛隊内の資格が必要になります。ただし、特別な操縦方法は必要なく、いたって普通のクルマと同じ感覚で操縦することができます。

 シフトレバーのパネルには上から「P、R、N、D、2、L」と表示されていて、これは市販のAT車と変わりません。ちなみに「ジープ」はすべてMT車でした。シフトレバーの横には駆動輪を切り替えるトランスファー・レバーが装備されており、このレバーで2駆、4駆、4駆高速レンジ・デフロック、ニュートラル、4駆低速レンジ・デフロックと切り替えることができます。この装置のおかげで、不整地でも安定して通行することができます。

 そして、自衛隊車両としては初めてAM/FMラジオが搭載されました。これは情報収集が目的で、「パジェロ」が採用される1年前に発生した阪神淡路大震災がきっかけになったとの説もあります。従来の自衛隊車両には、ラジオといえば軍用無線機でした。そのため、普通のラジオの登場は隊員たちに非常に歓迎されたのです。ただし、訓練中はAM/FMラジオを切って、無機質な軍用無線のラジオをずっと使用しています。

 軍用無線といえば長いアンテナが取り付けられるのですが、「パジェロ」にも例外なく取り付けられます。実はこの長いアンテナが、運転手にとってはやっかいな存在になる時があるのです。「パジェロ」は車体が小さいため、うっそうとした林のなかにも入っていくことがあるのですが、そうすると長いアンテナが木の枝に引っかかって折れてしまう場合があります。昔の無線機アンテナは柔軟性があって、少しくらい引っかかっても大丈夫でしたが、2018年現在使用されている広帯域多目的無線機のアンテナは硬く太いため、いままでのように林の奥深くまで入っていくことができなくなってしまいました。それでも、強引に突っ込んでいってアンテナが引っかかったかどうかなど分からない装甲車と比較すると、アンテナ破損率は少ないそうです。

携行缶ほか、いかにも自衛隊な搭載アイテム

 車体をぐるりと見渡してみると、同じ「パジェロ」でも、初期型、中期型、最新型で相違点が見えてきます。外観上でもっとも違いが分かるのが、フロントのフォグランプです。初期型は1個のフォグランプがバンパーの運転席側に取り付けられていますが、中期型以降の「パジェロ」では2個のフォグランプがバンパーに埋め込まれています。ほかにも初期から中期型にはボンネットの上にターボ吸気用の穴が開けられていましたが、新型のボンネットには穴が開いていません。

 車体後部に回ってみると、いかにも軍用チックな缶がひとつ積んであります。これは携行缶と呼ばれる入れ物で、20リットルの燃料を入れておくことができます。ただこの携行缶ですが、このままではクルマへ給油することができません。そのため、車内には専用の給油管が搭載されていて、これを使ってクルマの燃料タンクに給油します。ほかにも車体後部には、万が一スタック(立ち往生)した時に使うショベルや、前に進むのに邪魔な木を切り倒すための斧が積まれていますが、筆者(矢作真弓:軍事フォトライター、元陸上自衛官)は一度も使ったことがありません。

 この「パジェロ」は自衛隊内で最も普及しているクルマと言っても過言ではありません。各地のイベントで見られるほか、一般道を走行することも多いので、どこかですれ違う可能性も高いです。装甲車よりも見劣りしてしまうため、注目されにくいのですが、自衛隊の活動には不可欠な存在なのが、この「パジェロ」なのです。

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