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噴火時も出動、陸自75式ドーザのひみつ 「頑丈、速い、力持ち!」を実現する工夫とは

  • 2018年5月5日
  • 乗りものニュース

銃弾や砲弾が飛び交う戦場での活動を想定し、装甲板という鎧を着こんだブルドーザーはしかし、かつての火山噴火の現場で大きな活躍を見せました。その作りにも、現場での運用を考えたさまざまな工夫が施されています。

あの雲仙普賢岳の噴火警戒下を出動

 2018年4月19日(木)、250年ぶりに宮崎県にある硫黄山が噴火しました。その近傍には、ここのところ連続的に爆発的噴火を繰り返している霧島連山新燃岳もあります。

 他方、記憶に新しいところでは年初の1月23日、群馬県の草津白根山でも噴火が起き、スキー訓練中だった陸自隊員ひとりが墳石の直撃を受けて亡くなっています。また、2014年9月の御嶽山(長野県/岐阜県)における噴火でも、噴石の直撃を受けて多数の登山者が死傷しています。

 そのような時にいち早く救援に駆け付けられるよう、陸上自衛隊では2018年4月現在、硫黄山や新燃岳の周辺に位置する都城駐屯地(宮崎県都城市)や国分駐屯地(鹿児島県霧島市)に、既存の装輪装甲車に加えて悪路走破性に優れた装軌(いわゆるキャタピラ)式の73式装甲車を北海道から移管、配備しています。

 このように噴火に備える準備を陸上自衛隊としては行っていますが、今後火山活動がさらに活発化すれば、73式装甲車同様に装甲板で覆われた防御力の高い車両の増勢が必要になると思われます。そのひとつとして、75式ドーザという選択肢もありうるでしょう。

 この75式ドーザ、簡単にいえば装甲ブルドーザーで、元々は銃砲弾飛び交う最前線でも障害処理が可能なよう開発されたため、車体を防弾板で囲っているのです。そのため通常のドーザーよりも防御力が高く、実際に1992(平成4)年に発生した雲仙普賢岳(長崎県)の噴火災害では、噴火の予兆が続く危険ななかで、火砕流によって荒廃した島原市郊外にて火山灰土や瓦礫などの撤去にあたりました。

通常の4倍以上のスピード

 75式ドーザは戦車や装甲車と異なり、戦車砲や機関銃ではなく大きな排土板(ドーザーブレード)を装備しています。これにより市販のブルドーザーを濃緑色に塗っただけの「中型ドーザ」と同程度、おおむね9割程度の作業能力を確保しているそうです。

 ただし民間のドーザーと異なるのは排土板の真ん中にヒンジがあり、折れ曲がるようになっている点です。これにより土砂を前に押し出すだけでなく、土砂を右や左に寄せたり、除去する幅に合わせてブレード幅を調整したりすることができます。また折れ曲がるので、トレーラーに載せた際も排土板を外さずに車幅に収めることが可能です。具体的には、作業時は車幅3.45mなのに対して、走行時は2.7mに縮めることができるのです。

 しかも75式ドーザは、戦車や装甲車に追随できる機動性が要求されたため、最大速度が45km/hと土木機械としては非常に高速で走ることが可能です。一般のブルドーザーやショベルカーが約10km/hなのと比べると、その4倍以上の速度で移動できるのです。

反比例する速さと力強さを両立させる、文字通り「逆転」の発想とは

 ただし、車を運転したことのある人だとわかると思いますが、パワー(トルク)を求めると速度は出せず、スピードを出そうとするとトルクは細くなります。これは船の場合だとタグボートも同じことが言えますね。

 そこで本車の場合は発想を逆転させ、走行時と作業時で前後が変わるというほかに類を見ない構造としました。これは排土板のある方向を正面とした場合、高速走行に充分な視界を得ることが難しかったことや、土木作業時は抵抗の大きい地面に食い付く履帯が最適なのに対して、走行時はむしろ抵抗の少ない、地面から離れやすい履帯が向いているという相反するものをひとつにまとめるためでもありました。その結果、車内の操縦席はシートの背もたれが可動することで前後の向きが変わる構造になっており、操縦手はその都度向きを変えるようになっています。

 しかも前後逆ということは、イザという時は猛スピードで後退できる、すなわち逃げられるというメリットがあるとも言えるでしょう。

 75式ドーザは既に制式化から40年以上経ち、総数で約100両が陸上自衛隊へ導入されましたが、いまだに現役で使われています。配備先も日本全国で、九州では福岡県の小郡駐屯地や飯塚駐屯地に配備されています。

 南九州には配備されていませんが、このまま火山噴火の警戒が続くようなら、もしかすると73式装甲車と同じく都城駐屯地や国分駐屯地に移管配備されるかもしれないですね。

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