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海自導入か「多用途防衛型空母」、どんな船に 期待されるのはその「存在感」?

  • 2018年4月1日
  • 乗りものニュース

海上自衛隊への空母導入検討を巡り、さまざまな言説が飛び交う2018年3月でしたが、ひと口に空母といっても用途や役割によって種類があります。海自が導入するとしたら、どのような船がどのような役割を担うことになるのでしょうか。

さらに現実味を帯びた? 百家争鳴な海自空母導入の是非

 2018年3月20日(火)、自民党の安全保障調査会が、現在政府が進めている次期防衛大綱と中期防衛力整備計画の改訂作業に対する提言の骨子を発表しました。

「防衛大綱」とはおおむね10年後までを念頭に置いて、どのような方針で防衛力の整備を進め、防衛省・自衛隊がどのように活動していくかを定めたもの、「中期防衛力整備計画」は、防衛大綱の策定から5年間で、防衛大綱で定められた方針を実行するためにどんな装備を導入し、それをどう使うかを定めたものです。

 現在の防衛大綱は2014(平成26)年度に定められたものですが、北朝鮮の核兵器や弾道防衛ミサイルなどにより、日本を取り巻く安全保障環境が一段と厳しくなっていることから、安倍晋三首相は2017年8月に小野寺五典防衛大臣へ防衛大綱の見直しを指示していますが、それとは別に自由民主党は与党の立場として、防衛大綱をどのようなものにすべきかの検討を行なっており、安全保障調査会の提言はそれをまとめたものです。

 この提言には注目すべき点が非常に多いのですが、提言の発表後、最も大きな反響を呼んだのは、おそらく「多用途防衛型空母」を導入すべしという項目なのではないかと思います。

 日本政府は1978(昭和53)年に、海上自衛隊が保有できる空母と保有できない空母について、地上や艦船を攻撃する攻撃機を搭載する「攻撃型空母」は導入できないが、対潜ヘリコプターなどを搭載する「対潜空母」は導入できるとの見解を示しています。

 「攻撃型空母」「対潜空母」という分類はかつてアメリカ海軍が使用していたものです。すでにこの分類は使われておらず、2018年3月現在では意味を持たない言葉なのですが、今回の提言には同時にF-35のSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)型のF-35Bを導入して、多用途防衛型空母に搭載することも含まれているため、かつての政府見解との整合性を持たせるため、あえて「防衛型」という文言を入れたものと思われます。

「多用途」について安全保障調査会は、大規模災害が発生した際に、ヘリコプターで負傷した被災者を輸送して治療する病院船の機能や、車両などを輸送する輸送艦の機能、海上自衛隊が運用している、洋上に敷設された機雷を除去するMCH-101掃海・輸送ヘリコプターを搭載する、掃海機母艦などの機能などを持つ艦と定義しています。

「空母」といってもいろいろある? 各国海軍の場合

 日本では「空母」と聞くと、横須賀に配備されている「ロナルド・レーガン」をはじめとするアメリカ海軍のニミッツ級原子力空母や、中国海軍の「遼寧」のような、多数の戦闘(攻撃)機を搭載する、大型空母の姿を思い浮かべる方が多いのではないかと思いますが、世界では、今回安全保障調査会が提言した、多用途防衛型空母のような空母が増えています。

 イタリア海軍が運用する「カブール」は、空母に分類されていますが、海兵隊員などの地上部隊の人員を収容するスペースと、地上部隊を地上に送りこむ揚陸艇を搭載しています。航空機の格納庫は車両の格納庫としても使用可能で、イタリア陸軍のアリエテ戦車であれば24両が搭載可能となっており、車両を搭載するための出入り口(ランプ)が2か所設けられています。また医療設備も手術室3室と病室、歯科治療室を備えており、病院船としても高い能力を発揮できます。

 スペイン海軍の「ファン・カルロス1世」は、地上部隊を揚陸艇とヘリコプターで揚陸させる強襲揚陸艦という艦種に分類されていますが、F-35Bなどが離陸する際に滑走距離を稼ぐ役割を果たす、スキージャンプ甲板を備えており、必要に応じてVTOL(垂直離着陸)戦闘攻撃機のAV-8B「ハリアーII」を搭載し、軽空母として使用することができます。

 オーストラリア海軍も、予算不足のためいまのところF-35Bを搭載する予定はありませんが、「ファン・カルロス1世」の準同型艦であるキャンベラ級強襲揚陸艦を2隻保有。トルコ海軍も準同型艦「アナドル」の建造を進めており、「アナドル」にはF-35Bを6機搭載する計画がなされています。またイタリア海軍が建造を進めている新強襲揚陸艦「トリエステ」は、通常はヘリコプター12機から15機を搭載しますが、必要に応じてF-35Bの搭載も可能となっています。

 ジェット戦闘機の運用能力と強襲揚陸艦(輸送艦)の機能を兼ね備えた多用途空母は、韓国やシンガポール、中東諸国などでも導入が検討されていると報じられており、「ファン・カルロス1世」を建造したスペインのナバンティア社など複数の造船メーカーが、多用途空母の設計案を各国に提案しています。

新造? 改造? 導入するならどんな船が考えられるのか

 自民党の安全保障調査会は、多用途防衛型空母をどのようにして導入するかについてを明確にしていませんが、海上自衛隊が2隻を運用しているいずも型ヘリコプター搭載護衛艦に改修を加える案と、新たに建造する案、その両方を行なう案が存在しているようです。

 新規建造案のなかにはニミッツ級のようなカタパルトを備えた、本格的な空母を導入すべしという声もありますが、予算や政治的な配慮、海上自衛隊の定員などの面からすると、恐らくF-35Bを十数機搭載できる規模の小型空母になる可能性が高いと考えられます。

 安全保障調査会の提言発表以前に一部のメディアは、多用途防衛型空母は島嶼防衛などで地上部隊を上空から支援するF-35Bの、洋上補給基地をおもな用途とすると報じました。これを受けて一部の評論家の方々からは、たかだか十数機のF-35Bを搭載する空母を導入するより、航空自衛隊のF-35Aを増やし、それを支援する空中給油機や早期警戒管制機などを導入する方が合理的という意見も出されています。

 確かにその用途のみに限定すれば、評論家の方々のご意見はごもっともなのですが、実のところ多用途防衛型空母には、単なる洋上補給基地以上の役割が求められています。その役割を読みとくキーワードとなるのが「自由で開かれたインド・太平洋戦略」です。

期待される役割は非戦時下にあり?

「自由で開かれたインド・太平洋戦略」は、2016年8月に安倍首相が発表した新たな外交戦略で、国際社会の安定と繁栄の鍵は、太平洋とインド洋を法の秩序に則った自由で開かれた状態に保つことにあり、日本はその責任を果たしていくというものです。

 この戦略で日本がどのように軍事的な役割を果たすかは明確にされていませんが、政府はアメリカやオーストラリア、インド、さらにはクイーン・エリザベス級空母のインド洋・太平洋への派遣構想を持つイギリスなどと協力して、力による現状の変更と、自由主義国家が重んじる海洋の自由航行という原則への挑戦を辞さない姿勢を示す中国に圧力をかけて、紛争の発生を未然に防ぐという構想を持っているようです。

 空母は通常の水上戦闘艦(護衛艦)に比べて、敵対国に対しても友好国に対しても与えるプレゼンス(影響力)が大きく、海域に存在することで紛争の発生を抑止する効果を持っています。

 従来の小型空母には、地上基地や大型空母で運用される戦闘機に比べれば能力面で見劣りがする、「ハリアー」シリーズのような戦闘機しか搭載することができませんでした。しかしF-35Bの登場により、小型空母の持つプレゼンスは、以前よりも大きなものになっていることは間違いなく、F-35Bを搭載する多用途防衛型空母も、「自由で開かれたインド・太平洋戦略」のなかで、一定の役割を果たせるものになると思われます。

【写真】F-35Bだったら何機入る? 海自護衛艦「いずも」の格納庫

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