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戦車砲のサイドミラーって? ハイテク10式戦車はアリ 16式機動戦闘車はナシ…要らない?

  • 2022年6月4日
  • 乗りものニュース

総火演などで優れた命中精度を披露する陸上自衛隊の機甲部隊。90式戦車や10式戦車はハイテク装備で高い射撃精度を確保していますが、16式機動戦闘車はそこに「職人技」も加わるそう。その違いについて見てみます。

砲身先端についている「ミラー」の役割

 陸上自衛隊最大の実弾射撃演習といわれる「富士総合火力演習」。通称「総火演」とも呼ばれるこの演習で注目を集めるのは、やはり戦車の射撃ではないでしょうか。陸上自衛隊では74式戦車、90式戦車、10式戦車の3車種が現役であり、会場広場から遠く離れた的(てき)を狙って迫力満点の実射を披露しています。

 総火演では、例年、ほぼ百発百中ともいえる精密な射撃を行っていますが、その優れた命中精度を実現するため、戦車には各種の専用装備が取り付けられています。

 たとえば「砲安定装置」と呼ばれるシステムは、上下、前後左右と複雑な動きをする車体の挙動を読み取り、砲身だけは常に的を狙い続けるようその動きをコントロールするものです。ほかにも、弾道と目標の未来位置とを算定し、常に射角を補正し続ける「射撃統制装置」なども、優れた命中精度を確保するために現代の戦車に必須のものとなっています。

 ただ、それらは基本的には車内に搭載されているため、外から見つけることはできません。とはいえ、それらと連動するものとして、戦車の精密射撃に欠かせない装置が、砲身の先端に取り付けられています。

 その名は「ボアサイト・ミラー(砲口照合ミラー)」。簡単にいうと「鏡」で、具体的には10式戦車の場合、砲身の付け根付近にある「砲口照合装置」からレーザーを照射して、ボアサイト・ミラーに反射させます。そのレーザーの跳ね返り具合で砲身の歪みを検知し、その誤差を射撃統制装置に入力することで、正確な射撃を実現しているのです。

10式よりも新しい16式に砲口照合装置がない理由

「ボアサイト・ミラー」と「砲口照合装置」は、日本の戦車では90式戦車で初めて採用されたシステムで、同車と最新の10式戦車に搭載されています。そのため、それ以前に制式採用された74式戦車に取り付けられていないのは致し方ありませんが、逆に10式戦車より新しい16式機動戦闘車も、このボアサイト・ミラーが取り付けられていません。なぜでしょうか。

 その大きな理由は、調達コストの増加です。具体的な金額は不明ですが、このボアサイト・ミラー装置一式を導入すれば、命中精度が向上するのは間違いないものの、とうぜん調達価格も上昇してしまいます。

 調達コストが増加してしまうと、改編が進む即応機動連隊や偵察戦闘大隊に16式機動戦闘車を行きわたらせることができません。そのため、防衛省・陸上自衛隊は少しでも調達価格を抑えるため、このボアサイト・ミラー装置一式を削除したようです。

 とはいえ、16式機動戦闘車でもボアサイト・ミラーのテストを行っていたのが伺える車体が存在します。それが試作第1号である99-2099号車です。そこから推察すると、試験段階では16式機動戦闘車もボアサイト・ミラーの搭載を考慮したことがあったといえるでしょう。なお、試作2号車からはこのボアサイト・ミラーが取り外されています。

機械に頼らず職人技でカバー

 ちなみに、前述したように74式戦車にはボアサイト・ミラーが搭載されていません。そのため、隊員たちはその日の気温や射距離などから砲身の歪みを事前に把握し、射撃時に誤差の修正をしていたそうです。いわば乗員の「職人技」によって高い命中精度を担保していたのですが、実はここにも16式機動戦闘車にボアサイト・ミラーが搭載されなかった理由があります。

 陸上自衛隊で最大勢力を誇った74式戦車は、後継となる16式機動戦闘車の登場によって徐々に数を減らしています。その影響で、74式戦車を降りた元戦車乗りたちは、新たに16式機動戦闘車へと車両の「鞍替え」を行っています。

 それまでボアサイト・ミラーを装備していなかった戦車に乗っていたため、16式機動戦闘車にボアサイト・ミラーがなくても問題ないというワケです。いうなれば、「ボアサイト・ミラーなどなくても的を射抜いてやらぁ!」という気概に溢れた戦車乗りが、16式機動戦闘車の乗員として任務に就いているのです。

 もちろん、ないよりはあった方が便利なボアサイト・ミラーですが、なくてもなんとかなる。そんな職人技が、16式機動戦闘車の精密な射撃を実現しているといえるのかもしれません。

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