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唯一立ち入れた御料車がある!? マロネフ59形 皇族以外も乗せた数奇な歴史

  • 2022年5月24日
  • 乗りものニュース

京都鉄道博物館にはマロネフ59形という寝台車が保存されています。これは元々、戦前に製造された皇族・貴賓用1・2等寝台車です。豪華なのはいうまでもありませんが、まず立ち入れない皇族専用車両の中で、唯一公開されたことがあるのです。

現代の視点から見ても豪華な1等寝台

 皇族専用の鉄道車両は「御料車」と呼ばれます。ただ最後に御料車と名付けられたのは、1960(昭和35)年に製造された「1号御料車(3代)」であり、電車のクロ157形やE655系「和」の特別車(E655-1)は御料車とは呼ばれないようです。

 さいたま市の鉄道博物館には、1876(明治9)年製造の1号御料車(初代)を初め、2号(初代)、7号、8号、9号、10号、12号の御料車7両が保存されています。また5号御料車と6号御料車は、愛知県犬山市の博物館明治村で保存されていますが、車内への自由な立ち入りはできません。

 京都鉄道博物館には、のちに14号御料車となったマイロネフ37290形の同型車両、マイロネフ37292(現在のマロネフ59形)が保存されています。同車はイベントにて車内が公開されたことがあり、唯一の「立ち入れる可能性がある皇族・貴賓用客車」といえるでしょう。

 このマイロネフ37292は、1938(昭和13)年に国鉄鷹取工場(神戸市須磨区)で製造されました。形式としてのマイロネフ37290形は3両が製造され、うち37292は最後に製造された車両です。

 昭和天皇の弟宮や貴賓客専用として製造された車両であり、定員は1等個室2名、2等寝台12名の合計14名と極めて少ない豪華車両でした。

当時では珍しかった洋式便器を設置 なぜ?

 2等寝台は、夜間に向かい合わせ座席を引き出して下段寝台とし、折りたたまれた上段寝台を展開する「プルマン式」を、鋼製客車として初めて採用しています。寝台の長さは180cm、幅は91.5cm(肘掛けの中心線基準なので、有効幅はやや狭い)、当時としてはゆとりのある設備でした。

 そして1等寝台は、1人用区分室(個室)2室が備わっていました。この個室は長さ2.59m、幅1.862mの広さで、4.82平方メートルの専有面積がありました。これは寝台特急「北斗星」などに連結された1人用A個室寝台「ロイヤル」の居室部分(約4平方メートル)を上回る広さであり、現代の視点でも非常に豪華な設備です。

 なお、この2室は唐紙風の引戸を解放することで、2室を連結することも可能でした。個室内にはソファとテーブル、夏季は扇風機も設けられていました。

 カーテンの留め具やテーブル下、座席下には金メッキも施されており、貴賓車としての風格がありました。当時の1等寝台は個室内に洗面台が設けられていましたが、マイロネフ37290形では化粧室として、長さ1.905m、幅1.39mの広さを持つ個室が設置されていました。ちなみに化粧室と接続するトイレは、当時では極めて珍しい洋式便器であり、海外の来賓に配慮されていました。

 このマイロネフ37290形は、車両の半分だけに1等車を示す白帯があり、残りの半分が2等車の青帯という変わったスタイルでした。1941(昭和16)年に形式改正が行われ、スイロネフ38形に変更されます。

頻繁に形式が変わる!

 しかし、敗戦後に進駐したアメリカ軍に接収され、1949(昭和24)年に車軸駆動冷房装置を搭載したスイロネ37形に再度変更されました。1951(昭和26)年ごろに晴れて接収を解除されると、スイロネ37形「1」は14号御料車に、「2」はマイロネ39形に、先述した、後に京都鉄道博物館で保存される「3」はスイロネ37形に戻した上で皇太子用非公式御乗車用車両に、それぞれ改造されました。

 この皇太子用非公式御乗車用車両はさらに変わります。1952(昭和27)年にブレーキ装置を操作できる緩急車設備を復活させ、重量増加も反映してマイロネフ38形1となりますが、1955(昭和30)年に1等寝台車が廃止されたことで、マロネフ59形1に改番されます。1961(昭和36)年の廃車後は、大阪・弁天町の交通科学博物館で、翌1962(昭和37)年から2014(平成26)年の閉館まで保存されていました。

 そして2016(平成28)年に京都鉄道博物館へ移設され、現在に至ります。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は特別公開時に車内を見学しましたが、極めて贅沢で精緻に作りこまれた車両として、強い印象を受けました。

 なお14号御料車となった「1」ですが、シャワー室も備え、皇太子用として使われた後、国賓用となりました。イラン皇帝やペルー大統領、フィリピン大統領などを乗せた後で引退し、2022年現在は東京総合車両センターの御料車庫で保管されています。皇族専用車両が一般公開されたことはありませんが、筆者はいつの日か見てみたいと思うものです。

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