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未来の戦車か先祖返りか? 今後を占うかもしれないロシアのBMPT「ターミネーター」

  • 2022年1月23日
  • 乗りものニュース

現代戦車の戦い方は基本、戦車対戦車を想定していますが、その最初期は歩兵相手を想定したものでした。ロシアのBMPTは、まさにそのコンセプトで作られた、新しいタイプの戦闘車両であり、戦車という兵器の明日を占う存在かもしれません。

あの映画にちなんだ名前? 現実世界に作られた「ターミネーター」

「ターミネーター」といえば、SF映画に登場する対人戦闘用サイボーグが広く知られますが、21世紀に同じ名前の対人兵器が登場しました。ロシアが「戦車でも装甲兵員輸送車でもない新カテゴリの兵器」と主張する「BMPT(戦車支援戦闘車)」の名称です。ちなみにロシア語の発音だと「テルミナートル」になります。チェチェン紛争で歩兵の携帯対戦車火器により自軍戦車が損害を被った戦訓を受け着想された、「戦車を掩護する戦闘車」というロシア独自のものです。

 ロシアの「ターミネーター」はSF映画に登場するような未来的なイメージではなく、第1次世界大戦の、戦車という兵器が未だ黎明期だったころのものへ先祖返りしたように見えます。第1次世界大戦に登場した最初の戦車は特徴的なひし形の「マークI」で、味方歩兵の突撃を掩護するのが目的であり、つまり戦車の相手は敵歩兵でした。

 第2次世界大戦期になると戦車の相手は戦車となり、大きな主砲、厚い装甲、早い足の戦車の開発競争が繰り広げられます。1939(昭和14)年の開戦から1945(昭和20)年の終戦までの6年間における、各国による開発競争での戦車の進歩ぶりには目を見張るものがあります。

 現代の戦車は「走」「攻」「守」に加え「コンピューター化」が究極形に達し、進化の限界であるともいわれます。21世紀に入り、戦車対戦車のガチンコ勝負がほとんど起こっていない原因のひとつが、究極形の戦車同士による戦闘はコスパが悪すぎる、というものです。コスパの悪さから戦闘が回避されるなら抑止力として存在意義もありますが、兵器の変化はシーソーゲームであり、話はそんなに簡単ではありません。

 そして、高コストの戦車に低コストで対抗する方法が生まれてくるのは自然の流れです。すなわち、歩兵が携行して扱える携帯対戦車火器や仕掛け爆弾、ドローンの台頭です。兵器は進化したものの、戦い方そのものは戦車VS歩兵という構図であり、前述したように、第一次世界大戦当時の様相へと回帰したように見えてきます。

BMPT「ターミネーター」の装備は? そのルーツは?

 いったん廃れた多砲塔戦車のコンセプトが復活する兆しを見せていることも、戦車の先祖返り傾向を感じさせます。BMPTの開発段階では、機関砲2門を2基の砲塔へ別々に装備し、ほかに機銃装備砲塔を2基と、計4基の砲塔を載せた試作車(オブイェークト781)も造られています。

 アメリカのM1「エイブラムス」戦車にも、砲塔上に機銃の付いた遠隔操作武器システムを追加したバージョンがあります。つまり、多砲塔戦車の特徴である多方向に同時に火力を発揮したいというニーズが復活しているのです。

 BMPT「ターミネーター」の武装は、一見して戦車とは様相が違います。T-90戦車の車体をベースとしていますが、大口径かつ長砲身の主砲は無く、30mm機関砲2A42を連装し、30mm自動擲弾銃を車体に2門、7.62mm機銃と9M120-1「アターカ」対戦車ミサイルを4発、搭載しています。対戦車ミサイルとはいったものの、これは戦車よりも、建物内に潜む敵兵を狙い撃ちするのが目的です。外部監視センサーが多いのも特徴です。ちなみに砲塔はひとつです。

 アフガニスタンやチェチェンの戦訓で、対歩兵戦には大口径長砲身の主砲より、大きな射角が取れ連射できる多連装機関砲の方が有効であるとされます。アフガニスタンでソ連軍は本来、航空機を狙う4連装23mm機関砲装備のZSU-23自走高射機関砲を対ゲリラ戦に持ち出しました。高射機関砲なのに対空レーダーや対空照準装置が外されてしまった、自走対歩兵機関砲(?)バリエーションまで現れました。これが「ターミネーター」のルーツかもしれません。対空多連装機関砲で対人射撃はやりすぎ感がありますが、いかに戦車が歩兵を恐れているかの証左です。

誤情報に注意 BMPT「ターミネーター」開発から配備までの経緯

 BMPTの原型オブイェークト787は1997(平成9)年にロシア軍の審査を受けますが、採用は見送られます。そのままクビンカ戦車博物館にお蔵入りかと思いきや、1998(平成10)年になって発注されることに。これを受け量産車の開発が始まるものの、その途上にロシア軍の装備調達計画を大幅に見直した、2009(平成21)年の「セルジュコフ(当時の国防相)改革」でまたも採用中止となります。外国から受注済だった少数が輸出され、2017(平成29)年にはシリア政府軍の装備が確認されており、内戦で使用されたようです。

 シリアでの実績が認められたかは分かりませんが、再度ロシア軍はBMPTの採用を決め、2018年に先行量産車が取得されて国家審査を受けます。2021年12月には最初のBMPT中隊が編成されて、運用研究が本格化しているようです。

 従来の戦車のように大火力を持つわけでもなく、歩兵戦闘車のように歩兵を搭乗させるわけでもありませんが、メーカーのウラル・ヴァゴン・ザヴォドは「BMPT1両で歩兵戦闘車6両と40名の歩兵から成る自動車化狙撃兵小隊1個分の戦闘力がある」とアピールしています。

 ロシア国防省機関紙では、市街戦の対歩兵戦闘で戦車を掩護するという単機能的な使い方ではなく、野外での歩兵戦闘支援や多用途火力支援戦闘車として考えられているようで、戦車大隊(3個小隊、31両)には1個BMPT中隊(10両)を配属することが提案されています。2021年9月の「ザパト21」演習で戦車とBMPTの共同行動する様子が紹介されており、この考えを検証したのかもしれません。

 ソ連時代は兵器の名称を基本、発表していませんでしたが、ロシアになってからの兵器ネーミングセンスは侮れません。最近姿を見せた新型戦闘機の「LTSチェックメイト」はなかなか秀逸だと思います。BMPT「ターミネーター」は機械が人間を追い詰めるSF映画から取っているとすれば、意味深です。

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