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日の丸ロケットの火がパラリンピック聖火になぜ!? 誕生の経緯や採火方法をJAXAに直撃

  • 2021年8月28日
  • 乗りものニュース

東京2020パラリンピックの聖火は、パラリンピック発祥の地であるイギリスのストーク・マンデビルの火に、全国各地約900か所で採られた火が合わさってできています。そのひとつには「宇宙開発の火」というのも。実際に採火したJAXAに話を聞きました。

宮城県生まれのロケットエンジンの火が聖火に

 2021年8月24日(火)、東京2020パラリンピックがスタートしました。オリンピックと同じようにパラリンピックにも聖火がありますが、その炎はただ1か所の採火地から運ばれてきたわけではありません。日本全国の880か所で採火され、都道府県ごとにまとめられた後、東京でパラリンピック発祥の地といわれるイギリスのストーク・マンデビルで取られた火とひとつに合わさって、国立競技場で燃えています。

 それぞれの採火地では、工夫をこらした採火がされたそうですが、宮城県角田(かくだ)市では、市内にあるJAXA(宇宙航空研究開発機構)角田宇宙センター内のロケットエンジンの試験設備から種火が採られました。種火の採火は2021年7月21日に行われ、専用のランタンで保管された後、8月14日に角田の聖火として改めて採火され、パラリンピックの聖火となりました。

 角田宇宙センターで種火の採火が行われるにあたっては、角田市から提案があったといいます。角田市はブランディング戦略として「5つの”め”」(米・豆・梅・夢・姫)を制定しており、そのなかの「夢」=「宇宙」ということで、「宇宙のまち角田」をアピールする方法で採火ができないかセンター側に相談をしたとのこと。それを受け、センターでは関係者が話し合いを重ねた末、ロケットエンジンの試験設備からの採火なら安全策を取ったうえで何とか実現可能であると判断し、角田市に回答しました。

採火の経緯と方法

 当初、JAXAは東京オリンピック・パラリンピックの開催と同じ2020年度にH3ロケットの打ち上げを予定しており、角田宇宙センターでもその打ち上げに向け、ロケットエンジンのターボポンプ試験が実施されている状況でした。両者の成功を祈念し、世界を盛り上げるという思いの下、H3ロケットのエンジン試験設備から採火するという構想であったといいます。

 その後、新型コロナウイルス感染症の影響によりオリンピック・パラリンピックはともに延期になりましたが、H3ロケットも計画が見直されたため、ともに2021年度に持ち越されました。

 実際に採火を行ったのは、ロケットエンジン試験設備の一つ「液酸/液水エンジン供給系試験設備」(通称FETS)内にあるバーンポンドのパイロットバーナーです。一般的には耳慣れない単語が並びますが、どのようなものなのかというと、ここはロケットエンジンの心臓部であり、燃料と酸化剤を送り込む役割を担うターボポンプを試験するものです。

この試験設備では、現在開発中のH3ロケットのメインエンジンである「LE-9」をはじめ、これまで種子島宇宙センターから打ち上げられた全てのロケットエンジンのターボポンプ試験を実施しています。

 試験には水素ガスを大量に使う(最大で750l/s)ため、安全に配慮する必要があります。そのため「バーンポンド」という人工の池に水素を導いて、点火器であるパイロットバーナーで点火し、燃焼処理します。パイロットバーナーの燃料はプロパンガスを用いています。

 実際の試験時は最高で50mにも達する火柱が上がるため、安全管理上、人が近寄って採火することはできません。そのため、パラリンピックの種火の採火では、特別にパイロットバーナーだけに着火し、長い棒の先に布を巻いた器具で火を採ったそうです。

パラ聖火の種火が生まれた角田宇宙センターとは

 角田宇宙センターは、JAXAの研究開発施設です。前身は1965(昭和40)年に発足した航空宇宙技術研究所角田支所(現・西地区)と、1978(昭和53)年に発足した宇宙開発事業団角田ロケット開発室(現・東地区)で、2003(平成15)年10月1日に宇宙航空3機関がJAXAに統合された際にひとつになりました。

 ここはロケットエンジンの開発と試験、航空機用エンジンの開発と試験を一貫して行える施設で、例年ならば毎年1回ある特別公開で一般向けに施設を開放するほか、常設の宇宙開発展示室で施設の紹介を行っています。なお、2021年8月現在は新型コロナウイルス感染症蔓延の影響で特別公開の予定は未定であるほか、展示室の見学も休止しています。

 JAXA角田宇宙センターの植田所長は、聖火への思いを以下のように語りました。

「角田宇宙センターの前身である科学技術庁航空宇宙技術研究所角田支所が開所したのは奇しくも前回の東京オリンピックの翌年の1964(昭和39)年でした。以来、55年に渡って角田市の皆様のご理解とご協力により、日本の基幹ロケットエンジンの研究開発を進めてまいりました」

「今回、角田市よりパラリンピック採火に対する協力依頼を受け、パラリンピック開催と開発中のH3ロケット打ち上げが同じ年度である奇縁もあり、できる限りの協力をさせていただくことにしたものです。ロケットエンジンの開発設備から採られた火が、パラリンピックの聖火となって、すべてのパラリンピアンを見守ってくれるものと信じております」

 東京2020オリンピックの閉会式では、国際宇宙ステーションで撮影された画像が使われました。パラリンピックで灯る聖火は、宇宙に届く乗りものを作る火を合わせています。このように、オリンピックとパラリンピックの双方で宇宙が関わるようになったというのは、少しずつではあるものの、着実に宇宙空間が身近なところに来ようとしているのを象徴しているといえるのかもしれません。

採火の様子や式典を動画でチェック!

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