サイト内
ウェブ

戦車はもう不要なの? 台頭する無人兵器 英は生産終了…「陸戦の王者」今後のあり方は

  • 2021年7月9日
  • 乗りものニュース

戦車はその誕生以来、常に「対抗手段」と共にあったといえるでしょう。対戦車ミサイルなどの対抗手段が登場するたび戦車不要論は囁かれてきました。無人兵器の台頭で改めて不要論が浮上する昨今、いよいよその命脈は尽きるのでしょうか。

ドローンの時代に戦車は時代遅れ?

 映画やアニメでは、戦車はどちらかというと「悪役」で「やられ役」のほうが多いようです。現実でもミサイルや無人航空機(いわゆるドローン)の発達により、ボタンひとつで破壊されるようなありさまの戦車は時代遅れで、もう要らないという意見も聞かれます。

 2020年9月27日から11月9日にかけて発生した、アゼルバイジャンとアルメニアの国境紛争であるナゴルノ・カラバフ紛争は、ドローンが多く使われ、SNSを利用した宣伝戦も盛んだったのが特徴的です。

 モニター内に四角のマーカーで囲まれた戦車の映像が映しだされ、次の瞬間、戦車は爆炎に包まれます。ドローンから発射された対戦車ミサイルが、戦車に命中した瞬間です。このような映像が多くSNSへ投稿されたので、戦車は地上を這って逃げ回るだけの単なる標的になり下がり、やはり要らないものだ、と広く印象づけました。

 戦車は「陸戦の王者」といわれますが、王者だけにライバルや強敵も多いものです。王者の座は、もう過去のものになったのでしょうか。

 たとえば戦車の発明国であるイギリスは、2009(平成21)年に戦車製造ラインを停止し、事実上、戦車生産を放棄しました。予算の制約で戦車の新車受注を見込めなくなったメーカーの経営的な判断によるもので、企業は利益を上げるのが最優先課題ですので、戦車製造が儲からないのであれば止めてしまうのは当然のことです。

 もっとも、これは戦車不要論に基づくものではなく、イギリス国防委員会は議会に対し「戦車を無くすことはあり得ない」という旨の答申をしています。とはいえ国内の製造ラインはもうありませんし、将来、戦車の更新をどうするのか方針も決まっていません。

新型戦車の開発はいまなお世界中で

 一方、2018年6月11日から開催された「ユーロサトリ」兵器展示会に、ドイツの「レオパルト2」の車体にフランスの「ルクレール」の砲塔を載せた「ヨーロピアンメインバトルタンク(EMBT)」という合体戦車が展示されました。PR展示用のフェイクかと思いきや、メーカーのKNDS(KMW+Nexter Defense Systems)は大真面目に造っていました。しかも単なる静態展示品ではなく、実際に走って、撃ってみせる動画も配信され、戦車として機能することを示しています。

 KNDSはその名の通り、ドイツの「レオパルト2」のメーカー、クラウスマッファイ・ヴェクマン(KMW)と、フランスの「ルクレール」のメーカーである国有企業、ネクスターシステムズとの合弁事業です。

 このレオパルト/ルクレール合体戦車のEMBTは、将来のヨーロッパ標準を目指すドイツ/フランス主要地上戦闘システム(MGCS)プログラムのPRでした。ドイツの「レオパルト2」は2021年のいまでも中古車市場で人気のベストセラー戦車、フランスの「ルクレール」は最初からデーターリンクシステム(ベトロニクス、車輌電子工学)を装備して設計されたデジタル戦車の先駆けです。

 ネクスターの装軌(いわゆるキャタピラ)車プログラムの責任者であるフランソワ・グロシャニー氏によれば、EMBTはパワフルな「レオパルト2」のシャシーと軽量な「ルクレール」の砲塔を組み合わせることで、非常に高い能力を備えたといいます。

 実は「レオパルト2」には砲弾の自動装填装置が装備されておらず、このため装填手が必要で乗員は車長、操縦手、砲手とあわて4名だったのですが、「ルクレール」はもともとこれを装備しているので装填手は不要であり、砲塔内乗員は1名、よってEMBTの乗員は車長と操縦手合わせ3人でよいとのこと。さらに、「レオパルト2」の砲塔より約6tも軽量になったといいます。両メーカーの長所を組み込んだ、ヨーロッパ標準戦車のモデルという触れ込みでした。

 MGCS開発は2012(平成24)年から着手されていましたが、KNDSが設立されたのは2015年12月15日です。EMBTの展示はMGCSプログラムの本格始動アピールと、2015(平成27)年に登場したロシアの新型戦車T-14「アルマータ」を意識していることは間違いありません。戦車の新車を製造しているのはロシア以外にも中国、日本、韓国、トルコなど国産、純国産を含めるとまだいくつも残っていますので、ヨーロッパ先進国が戦車製造を止められないわけです。

どれほど最新鋭でも必ず「時代遅れ」になる戦車

 2021年現在の安全保障環境は、戦争と平和という単純に区分けできる時代は終わり、競争と紛争のグレー時代だといわれます。戦車や戦闘機のような旧来兵器を使う交戦はなくても平和ではなく、宇宙、サイバー、宣伝戦が常時、行われています。

 しかし旧来の兵器が時代遅れで不要になったということはありません。兵器にはそれぞれの役割があり、組合せがより多次元複層になっただけです。「戦車はディナージャケットの様なものである。いつも必要なものではない。しかし必要な時に他のものでは対応できない」――2019年にオーストラリアの調達担当官が戦車について出したレポートは、的を射ていると思います。

 戦車生産を放棄してしまったイギリスでは、早まったことをしたという反省は聞かれません。むしろMGCSへ関心を示して、将来的にこのプロジェクトに絡もうと画策しています。冷徹に国防と資本の論理のバランスを取っています。

 MGCSには現用戦車より大口径の、130mmから140mmの砲を搭載することも検討されており、2035年に生産開始、2040年に完全作戦能力獲得を目指しています。どのような形になるのかは分かりません。しかし技術革新のスピードは速く、兵器は常に時代遅れというのが通例で、時間のかかる戦車開発は未来を予測するギャンブルのようなものだとさえいわれます。

 2035年ごろには、本当に戦車は不要になっているかもしれません。しかし、それが平和な時代を意味しているのかは別問題です。

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright © 2021 mediavague Co., ltd.