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中部空港に滑走路もう1本→発着数1.2倍…なぜ2倍にならない? 管制官からみるカラクリ

  • 2021年6月8日
  • 乗りものニュース

中部空港に新滑走路を建設する候補地を含む海域の埋め立てを承認され、滑走路が2本になると報じられました。ただし発着数は「1.2倍」。なぜ滑走路2本で単順に2倍にならないのでしょうか。航空管制のルールから、それを紐ときます。

滑走路2本に増えるのに1.2倍?

 中部空港に新滑走路が建設される見込みです。愛知県が中部空港の新滑走路建設候補地を含む海域の埋め立てを承認したと、2021年5月26日付の読売新聞オンラインなどが報じました。

 これにより中部国際空港の発着能力が現在の”1.2倍“に増えると見込まれています。 新たに滑走路が2本に増えれば、2倍の処理能力となりそうなものですが、同記事によれば「航空機の発着能力を現在の年間15万回から1.2倍の18万回に増やすもの」とあります。なぜ倍増ではなく1.2倍にしかならないのでしょうか。航空管制のルールから紐解いてみます。

 これを解くカギは滑走路のレイアウトにあります。航空管制官はレーダーを用いて、上空を飛行する航空機間に一定間隔を保っています。レーダーに映るターゲットの点と点に、一定の高度差がないとき、航空機どうしを3マイル(5.5km)以内に近づけてはいけない、というのが大原則のルールです。

 ただ、このルールは特定の条件下で6マイル(約11.1km)に拡大することもあれば、2マイル(約3.7km)に短縮されることもあります。また、羽田空港や成田空港などで行われている同時平行進入、同時平行出発と呼ばれる飛行方式の適用中は、2機の飛行機が真横に並んで飛行しても問題ありません。

2本の滑走路の距離、どれくらいあればよいのか

 同時平行進入、同時平行出発が使用できるかどうかの条件には、2本の滑走路における中心線間の距離が関わっています。

 2本の滑走路で同時に離着陸を行う滑走路レイアウトで、クリアしなければならない最初のカベは、2本の滑走路の中心線間の距離が700フィート(210m)以上あることです。この距離よりも短い場合は、滑走路が2本あっても、1本とみなす運用となる規定があります。そのことから、国際基準では平行滑走路の最小間隔は700フィートとされており、それに準じて2本目の滑走路が作られることが一般的です。

 しかし、700フィートの距離が確保されても、無条件で同時に離着陸が行えるわけではありません。というのも、滑走路中心線間の距離が2500フィート(760m)未満の場合、「後方乱気流間隔」というルールが適用されるのです。

 航空機は後方に乱気流を発生させながら、前に進む性質を持ちます。そのため後続の航空機がその影響を受けないように、同一方向を飛行する航空機間に最低120秒の間隔を設けるというのが、後方乱気流間隔です。これは、2本の滑走路中心線間の距離が2500フィート未満の場合、別々の滑走路から離陸する出発機どうしにも設定しなければならないため、このような滑走路配置では処理機数があまり増やせないのです。

滑走路2本化のベストレイアウト でもなかなかそうはいかない…

 逆に、2500フィート以上離れた配置になると、一定の高度差なく3マイル(約5.5km)以内に近づけてはいけないことに変わりはありませんが、異なる滑走路からの出発機どうしのあいだに120秒の間隔を取る必要はなくなります。なお、2500フィート以上離れた滑走路のレイアウトだと到着機にもメリットがあり、平行進入方式という特別な条件を適用することができようになります。

 これは、平行滑走路に同方向から着陸する場合に、異なる滑走路に向かって直進する到着機間に保つ距離を3マイルから2マイル(約3.7km)に縮めることができるもの。最大限に上手に処理したとき、到着機は2マイル置きにジグザグとした形で誘導されます。つまり、滑走路2本を2500フィート離すことができれば、2倍とまでいかないまでも、それなりに処理能力の向上が期待できるのです。

 そして、滑走路中心線間の距離が、4300フィート(約1310m)以上離れた場合には、レーダーの3マイルの原則や、平行進入方式の2マイルの制限すら不要になります。これが、羽田空港、成田空港などで実施されている完全な同時着陸、同時離陸が実施できる条件です。つまり、滑走路2本で、1本体制のときと比べて倍近い機数をさばけるようになるような、ベストな滑走路レイアウトということです。

 であれば、せっかく作る滑走路を最大限に活用するため、どこの空港も2本目の滑走路は、1本目より4300フィート以上離して作りたいところですが、そうもいかない事情があります。

 ターミナルビルを挟むように滑走路を設置できる用地があれば、自然とそれくらいは離れるものですが、用地があったとしても、すでに誰かが所有している土地取得の交渉や手続きの難しさはありますし、便数が倍になることを見越して一気に拡大するような大博打はなかなか打てません。そういった経済面の理由からも、既に作られたターミナルビルを拡張して、滑走路間の距離は短くても2本にすれば少ない土地で済むし、便数も微増させられるという手段を選択しているということになります。中部空港も、処理能力拡大と、埋立に掛かる莫大な費用の狭間にいるのでしょう。

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