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約20年ぶりの東急新駅「新綱島」周辺を歩く 激変する街に残る「温泉」と「桃」の記憶

  • 2021年5月5日
  • 乗りものニュース

2022年度下期の開業が予定されている東急の新線、新横浜線。途中には新綱島駅が新規に設置されます。同駅は東横線の綱島駅から徒歩1分ほど。工事が進み、近々変貌するであろう綱島エリアを散策しました。

綱島→新横浜 新線を使うと早ければ所要時間は半分に?

 横浜市港北区の綱島駅までは、東急東横線の急行列車で渋谷駅からおよそ20分。2019年度のデータによれば、乗降客数は東横線内で7位にランクインし、特急が終日停車しない駅としては堂々の1位です。今回はそんな綱島駅、および2022年度下期に開業予定の東急新横浜線 新綱島駅周辺を見て回りました。

 綱島駅の東口を出れば、商店街の向こうに複数台のクレーン車が見え、新綱島駅の位置は前知識がなくとも容易に把握できます。さっそくそちらへ歩みを進めていくわけですが、綱島駅北口高架下のバスターミナルへと向かうと、ひっきりなしに出入りする路線バスに行く手を阻まれます。バス路線を眺めれば、新横浜駅行きの系統が日中1時間に1、2本運行され、所要時間はおよそ20分。ちなみに現行の鉄道路線で向かうならば、菊名駅(横浜市港北区)でのJR横浜線乗り換えを挟んで10〜15分前後。これが新綱島駅開業により大幅に短縮されます。

 交通量多めの狭い商店街を東へ進めば、南北に走る綱島街道、そして絶賛工事中の新綱島駅予定地に到着。所要時間は1分ちょっとでしょうか。綱島駅〜新綱島駅間は想像以上に近く、東横線の走行音がはっきりと聞こえてきます。

 綱島を少し前に散策した人なら、かつてここに黄色い外観が目立つ日帰り温泉施設が所在していたのを覚えているかもしれません。綱島駅は開業当初の1926(大正15)年から1944(昭和19)年まで「綱島温泉駅」を名乗り、「東京の奥座敷」と言われるような温泉街でした。

 1914(大正3)年に地元の加藤順三さんが井戸を掘った際に出てきた水が飲用にできず、風呂用の水として使ったところ持病のリウマチが治ったこと、技師が井戸水からラジウムを抽出したことなどが契機となり、大正中期には温泉旅館が立ち並ぶほどに。東急の前身、東京横浜電鉄も「旅客誘致および土地開発の一助」として1927(昭和2)年に綱島温泉浴場を開場しました。

 当時、往復乗車券所有者は入浴無料だったそうで、今なら「綱島温泉フリーきっぷ」のようなお得なきっぷがあったかもしれません。

かつての温泉街 今、その名残はどこにある?

 綱島温泉は東京に近いこと、交通の便が良いことなどから、箱根に次ぐ集客を誇ったものの、東海道新幹線の開通により伊豆・箱根が身近になったために衰退し始めます。綱島温泉浴場は、さまざまな変遷を経た末に「綱島ラジウム温泉東京園」となりました。あの黄色い外観の温泉のことで、2015(平成27)年に休業しました。なお、新綱島駅建設地北側には「きよ水」と書かれた看板の残る日本家屋、綱島街道沿いのビジネス旅館「まつしろ」などに温泉街の名残を見出せます。

 新綱島駅のホームは地下となりますが、その上部では、低層部に区民文化センターも入居予定のタワーマンション建設が進んでいます。バス乗降場も設けられ、新たな交通拠点となりそうです。また、周囲を散策しているとあちこちに中規模な駐輪場が見られますが、再開発にあたっては1000台収容できる地下駐車場も計画されています。このほか掲出されている建築計画には「老人ホーム」という文言も見られました。綱島駅東口から新綱島駅にかけては道が狭く、そのうえ綱島街道が横切っていますが、一帯には再開発ビルを回遊する歩行者デッキの整備計画も立ち上がっています。

 鶴見川の手前、高層マンションと新横浜線の新横浜トンネル(新綱島〜新横浜)工事現場の間に差し掛かったとき、周辺の景色とはおよそ馴染まない桃園に遭遇しました。綱島は明治時代より桃、それもこの地で生まれた「日月桃(じつげつとう)」の産地でした。大正時代から戦前にかけては品評会で上位入賞の常連で、三越や銀座千疋屋など一流店で販売されていたとのことです。

変わりゆく街にあって変わらないもの

 日月桃は1938(昭和13)年の水害で壊滅的な被害を受け、戦争を境に米栽培に切り替わったことで一度途絶えてしまいますが、1998(平成10)年に茨城県つくば市の農林水産試験場に木が2本だけ残されていることが判明。日月桃の品種開発に関わった地元・池谷家で今も栽培され、桃の収穫期間には直売所で販売されています。

 桃園から南進し、鶴見川にかかる大綱橋を渡ると、そのたもとに「ラヂウム霊泉湧出記念碑」がひっそりとたたずんでいました。石碑を眺めていたところ、すぐそばにいた不動産営業マンから分譲住宅を案内されました。いわく「新綱島駅が開業するので、人気のエリアなんです」と。新駅にかける不動産業界の期待の高さを垣間見ました。

 せっかくなので綱島駅の反対側(西側)へと向かいます。2020年3月、駅に開業した商業施設「エトモ綱島」の横を通過していくと、狭くて交通量が多い東口側に対して、西口側は遊歩しやすい「パデュ通り」が続き、イトーヨーカドーを中心にマンションが立ち並んでいました。低層の1、2階に商業施設が入っているのが特徴です。この辺りもかつての温泉街に位置します。

 最後に個人的に気になる場所へ立ち寄ってみました。渋谷方面から東横線で綱島に向かうとき、左手に見える丘陵です。綱島街道沿いに急で薄暗い階段を見つけたため、こわごわ登ってみると、たどり着いたのは簡素な神社「綱島鎮守神明社」でした。綱島に人が住み始めた頃の創建とされ、境内からは日吉方面、その奥に武蔵小杉のタワーマンション群が見渡せました。変貌すさまじい街にあって、きっと変わらないままでいるだろう場所に出くわすことができ、思わず安堵を覚えました。

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