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燃料タンクで敵の弾を防ぐ…? 戦車や装甲車でそれが有効である納得の理由!

  • 2021年4月15日
  • 乗りものニュース

どのような兵器であれ「燃料タンク」といえば弱点のひとつといえそうですが、一部の戦車や装甲車では、これを防弾に活用しているといいます。冗談のようなお話ですが、フタを開けてみれば、そこには納得の理由がありました。

燃料タンクの中身は「液体」 これが理由!

「燃料タンク」といえば、戦車の弱点に思えるかもしれません。なるべく敵の弾が当たらないような場所に配置して、ガッチリと守っていそうなイメージです。ところが逆に、燃料タンクを防弾に使おうという突拍子もないアイデアがありました。しかもこのトンデモアイデアは採用され、2021年現在のいまでも使われているのです。

 実際に採用している例が、イスラエルの主力戦車「メルカバ」やソ連/ロシアの歩兵戦闘車「BMP-1」です。ともに現在も配備されており、実戦に使われている車両です。

 メルカバ戦車は、最も敵弾が当たりやすい所である車体前面装甲のすぐ後ろに燃料タンクが配置されています。エンジンも前方に配置するという珍しい設計の戦車ですが、このエンジンの前に燃料タンクが置かれているのです。

 BMP-1は戦車ではなく、歩兵を乗せ、戦車や歩兵の戦闘を支援する歩兵戦闘車に分類される装甲車で、その後部兵員室ドアに燃料タンクが付いています。

 弱点であるはずの燃料タンクを、わざわざ敵弾に当たりやすい防弾に使おうというとんでもないアイデアは、どのようにして生まれたのでしょうか。

 戦車の装甲板と、それを貫こうという対戦車火器とのシーソーゲームは、戦車誕生以来繰り返されてきており、そして戦車の防御方法には様々なアイデアが生まれました。その研究のなかで、防弾には異なる素材を組み合わせた装甲が有効であることがわかっています。これを「複合装甲」といい、主流は鋼鈑とセラミック素材などを組み合わせたもので、このほか装甲板を二重にしてあいだに空間を設けたり、液体にも複合装甲の材料としての効果が認められたりしています。

 イスラエルの「メルカバ」戦車の開発者によれば、対HEAT弾(成形炸薬弾。モンロー/ノイマン効果という爆発反応を応用して装甲貫通力を高めた対戦車砲弾)の防御において、70mmの燃料層は10mm厚の鋼板に相当するとされています。メルカバには前後長最大305mmの燃料タンクが前部装甲の背後に配置されているため、具体的にその車体前面構造は、装甲厚107.5mm防弾鋼鈑+357mmの空間+43.5mm相当の燃料層となっています。こうした複層にすることで、単純に防弾鋼鈑を厚くするよりも軽量化することができます。

同じ燃料でもこんなに違うガソリンと軽油

 燃料タンクを防弾に使えるのは軽油燃料だけです。ガソリンと軽油は同じ燃料ですが、物理的性質はまったく違います。

 ガソリンは揮発性が高く(-40度以上で気化する)、通常の気象条件であればちょっとした火気ですぐに爆発的に引火します。一方、軽油は直接マッチを近づけてもすぐには引火しませんし、着火しても爆発的な燃焼にはなりません。つまりガソリンタンクに被弾して燃料が漏れ、引火すれば爆発炎上して致命傷になるのに対して、軽油タンクであれば燃料漏れを起こしても着火するとは限らず、燃焼しても爆発的な炎上とはならないため、致命傷になる可能性はガソリンより低いということなのです。

 そのようなわけで、現代の戦車は全て軽油を燃料とするディーゼルエンジンを使用しています。日本やソ連は戦前からディーゼルエンジンを使用していましたが、ほかの国の戦車は第2次世界大戦末までガソリンエンジンが主流でした。ガソリンの入った燃料タンクは紛れもなく戦車の弱点で、防弾に使うことなどあり得ません。

 一方、軽油の燃料タンクは爆発の危険性はありませんが、防弾に使う必然性もないように思われます。ところが、先にも紹介したように、液体が防弾に一定の効果があることは知られており、そして狭い戦車にわざわざ水タンクを設けるような余裕はありません。必ず積まなければならない液体と言えば燃料、というわけで、燃料タンクを防御に使うというのは、防御力補完と燃料積載量を増やす一石二鳥の妙案でした。それだけ戦車の設計というのはギリギリに「詰めた」ものなのです。

湿式弾薬庫 ただし湿らせるのは「燃料」

 ギリギリに「詰めた」設計と言えば、ソ連の戦車「T-55」も燃料タンクについてトンデモない使い方をしています。主砲弾の弾薬庫と燃料タンクを一体化し、燃料が砲弾を包み込むような構造になっているのです。二重に危険物をまとめるという、狂気の沙汰にも見えます。しかもこの弾薬燃料庫も車体前面に配置されています。

 しかし、これも軽油の引火しにくい性質を応用したもので、車内に火災が発生しても砲弾の誘爆を防ごうという「湿式弾薬庫」となっているのです。誘爆防止、弾薬庫と燃料タンクの容量確保という一石三鳥のようなアイデアでした。

 ちなみに戦車の燃料タンクは、1か所だけでなくいくつかに分割されているので、ひとつの燃料タンクに被弾しても燃料がなくなって行動不能になるということはありません。BMP-1の後部ドア燃料タンクの容量は122リットルと全搭載量の4分の1です。長距離行動しないときには満タンにせず、軽油の代わりに水や砂を入れていることもあるようで、これでも防御効果は期待できます。そして、やはり乗員にしてみれば、燃料よりは安心感があるようです。

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