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日高本線バス転換でどうなる? 全国「鉄道廃止→バス化」その後

  • 2021年3月31日
  • 乗りものニュース

全線の5分の4にあたる116kmの区間が鉄道としての役目を終えるJR日高本線。その代替となるバス路線は、鉄道にない利便性向上策も様々打ち出されています。鉄道がバスになることで、どのような変化が起きるのか、各地の事例を振り返ります。

日高本線の大部分が廃止→バス転換で「特急」新設

 2015(平成27)年1月から災害で運休し、バスによる代行輸送が続いていた北海道のJR日高本線 鵡川〜様似間116km。2021年3月をもって鉄道が正式に廃止され、4月からは代替路線バスが走り始めます。

 これまで鉄道駅を中心に停車してきた代行バスは、道南バスおよびジェイアールバス北海道による既存のバス路線と一体化され再編されます。日高地方の海沿いをいく国道上に存在していた、運賃も停車場所も違う「代行バス」と「路線バス」の重複が解消され、停留所も徐々に両社で共通化していくようです。

 今回の路線再編で注目すべき点は、まず特急バス「とまも号」1往復の新設でしょう。日高本線の起点であるJR苫小牧駅から廃止区間、そして様似駅から鉄道の延伸が叶わなかった襟裳岬の玄関口・えりも町まで、日高自動車道を経由しつつ3時間50分で結びます。鉄道代行バスは駅への進入が遠回りなこともあり、鉄道と比べ3〜4割ほど時間がかかっていましたが、特急バスとは別に今回から導入される急行便(1日1〜2往復)であれば、鉄道にほぼ近い所要時間を達成しています。

 沿線最大の街である静内でバス路線が分割されるのは変わりませんが、利用促進のために静内・様似から襟裳岬への一部便乗り入れ開始や高校・病院への乗り入れ、停留所の新設など、様々な新機軸を打ち出しています。現状でも1時間に1本程度のバスが確保されている浦河〜様似間などを中心として、全体的に日高振興局管内の移動に重きを置いていることが伺えます。一方で振興局をまたぐ鵡川〜富川間(むかわ町は胆振総合振興局)は、下りの始発便が朝の9時以降になるほか、「駅前」とついたバス停の名称が変更されるなど、鉄道の面影は徐々に薄れることになりそうです。

 日高本線の場合は災害からの復旧が困難という事情もありましたが、運営が行き詰った鉄道を路線バスに転換するケースは、特に近年多く見られます。バス転換すると鉄道の時代より5〜7割は乗客が減少し、自家用車など他の移動手段に切り替える人が増えるともいわれますが、近年のバス転換では逆に乗客増に成功した例もあります。

バス転換で乗客倍増? 共通点は「停留所」「スピード」

 北海道のバス転換事例では、JR江差線 木古内〜江差間(2014)や、JR夕張線(石勝線 新夕張〜夕張間、2019)が、それぞれ鉄道より利用者数を伸ばしています。

 特に江差線の代替バスとして開業した函館バスの江差木古内線は、江差駅から1km以上離れていた市街地へ乗り入れを実現させたほか、沿線の高校や総合病院などへの往来需要に細かく合わせることで、開業翌年から利用者を倍増させました。また夕張線はもともと鉄道と道路がほぼ並行しており、夕鉄バスの路線と合わせた市内交通の再編で鉄道廃止区間の運転本数を1日5本から10本に倍増させ、乗客増加につなげています。

 これらバス路線の共通点は、停留所の大幅な増加や時刻設定のヒアリングなどを通じ、単なる「鉄道の代替」ではなく地元の利用者に思い切って振り向けたことにあるのではないでしょうか。他地域からの移動はハードルが上がったかもしれませんが、そもそも両地域とも大都市への移動手段として、別ルートの直通バス路線(函館バス函館江差線、夕鉄バス札幌急行線など)が鉄道の廃止前から定着しています。

 また両地域とも廃止前からバス路線のあり方について議論を重ね、JR北海道から得た江差線9億、夕張線7.5億という転換交付金を、今後のバス路線の運営や乗客減少時の余剰金としてストックしています。特に「攻めの廃線」として早くから路線バス整備に重点を置いた夕張市では、停留所の新設やターミナルの整備だけでなく、古参車が多かった夕鉄バスの車両更新、あまりにも遠かった新夕張駅の乗り継ぎ整備などを矢継ぎ早に進めることができました。

「鉄道がなくなった街」のその後

 本州に目を向けると、2007(平成19)年に廃止となった茨城県の鹿島鉄道の代替バスは、周辺道路の渋滞による遅延が頻発したことで、一時は鉄道時代に1日1000人ほどあった利用者数が3割ほど減少しました。しかしその後、線路跡をバス専用道に改修し「かしてつBRT」として整備することで所要時間を短縮させ、何とか1日900人程度まで持ち直しました。

 同じ茨城県内では2005(平成17)年に廃止された日立電鉄跡地の専用道を運行する「ひたちBRT」(日立電鉄バス)も徐々に実績を伸ばし、自動運転などの実証実験が頻繁に行われるなどしています。

 一方、2003(平成15)年に廃止されたJR可部線(広島県)の末端部、可部〜三段峡間は、紅葉の名所である三段峡への観光客が数年でほぼ半減したこともあり、廃止前から鉄道と並行していた広電バス三段峡線の乗客数も、5年ほどで鉄道廃止前の水準以下に。現在では各自治体や広島県からのバス路線の補助も増額された一方で、徐々に減便が進んでいます。

 また鉄道の並行道路に海岸線特有の険しい地形の区間が多かった、のと鉄道能登線(石川県、2005年廃止)代替バスのように、所要時間の増加によって、沿線から区域外への通学が難しくなるといった問題も起きがちです。

 2018年に実施されたJR三江線(島根県〜広島県)の全線廃止にあたっては、全長108.1kmの各地域で14路線のバスが設定されたものの、なかには1日の利用実績が平均0.1人程度と低迷し、早々に廃止となった区間もあります。運賃も区間ごとになり、数時間バスを待たないと島根・広島県境を越えられないなど、クルマを使わない他地域からの移動はかなり難易度が上がったといえます。ただ鉄道の時代も、運転本数の少なさから通学需要をまかなえなかった場合が多く、沿線の各市町は早い段階で自前のコミュニティバス整備を進めていました。

日高本線の廃止転換に見え隠れする「思惑」 鉄道かバスかの二元論でいいのか

 日高本線の廃止区間を受け継ぐ路線バスは、運行開始2か月前になっても、JR北海道から受け取る25億円強の拠出金をめぐる使用方針で議論が続いていました。バス路線の再編にも、それが影を落としているのか、自治体が作成した広域時刻表で静内〜浦河間は運行する2社で別々に時刻表を掲載していたり、新設の特急「とまも号」と既存の都市間バスが同時刻に同じ停留所を通過していたりと、調整の余地はまだまだあるといえそうです。

 また鉄道廃止区間から苫小牧へのバス乗り入れが強化されることで、日高本線の残存区間である苫小牧〜鵡川間との競争も懸念されます。

 鉄道とバスとでは、運行距離や運行に必要な人員・コストなども、考え方が大きく異なります。地域の交通手段を鉄道からバスへ、という流れのなかでも、近江鉄道(滋賀県)のように「バス転換より鉄道維持の方が低コスト」との結論から、上下分離(施設の管理と運行の主体を分離)で存続、というケースも出ています。思えば、日高本線の代行バスも現地だけで必要人員やバスの台数を賄えず、旅館を借り切って札幌から運転手を呼ぶなど苦心を重ねて維持されてきました。

 交通のあり方は、まず利用する人々があってのもの。これからも各地域で検討されるであろう「鉄道からバスへ」の議論は、「鉄道かバスか」という2択の検討に時間を費やすよりも、まず「地域にどう合わせるか」をしっかりヒアリングすることから始めてもよいかもしれません。

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