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エネルギー小国日本の選択(18完) ── 廃炉、処分地、未来のエネルギー

  • 2017年12月26日
  • THE PAGE

 地下約500メートルに向かって螺旋状に延びる坑道。開削された先に放射性廃棄物が処分されていく。

 北欧、フィンランドのオルキルオト原発の使用済み核燃料を処理するための施設、通称「オンカロ」だ。地元の言葉で「洞穴」を意味する。「100,000年後の安全」という映画にもなり、日本では東日本大震災の年に公開された。「放射性廃棄物が生物に無害になるまでに最低10万年を要する」というのがタイトルの背景にある。

 「地下500メートルに作られる放射性廃棄物の永久処分場」(作品中の表現)が2020年代に操業を始め、「核のごみ」で一杯になる100年後、そして無害で安全な基準に達する10万年後の「未来」の安全性について問い掛ける。

 10万年。途方も無い年月である。10万年後に人類がこの施設の意味合いをきちんと理解できるかどうか分からない、という見方さえある。現代において、10万年前の古代人の残した記録の解読は容易でないのと同様の論理だ。10万年後、あるいはもっと近い数千年後の未来の人類は、有害物質の詰まった「パンドラの箱」を知らず知らずに開けてしまわないか。当面100年先まで安全はどう確保されるのか。映画は示唆に富んでいる。

 こうした処分地の決定は北欧が先進的で、スウェーデンも決めた。フィンランドが使用済み核燃料を再利用せずに地中に埋める「直接処分」方式であるのに対し、日本は「再処理」方式を採っている。使用済み燃料を分離してウランとプルトニウムを回収してリサイクルする方法だ。軽水炉サイクルで約8000年、高速炉サイクルでしても300年かかると言われている。

 日本の核燃料サイクル事業はいまだ賛否両論が渦巻く。政策実現に向け、期待されたのが福井県の高速増殖炉「もんじゅ」だった。ただ、以前取り上げたように、施設でトラブルが相次ぎ、1兆円の巨費に見合う成果が出ないまま、運転総日数は1年と経たずに廃炉が決まった。政府はあくまでサイクル政策の推進を目指すが、社会の反発も根強く、行き詰まりが見られる。青森県六ケ所村で建設中の再処理工場も、度重なるトラブルで完成時期が遅れに遅れている。事業の先行きは見通せないのが実情だ。

 そうした中で、日本は処分地の選定も難航している。長く検討が続いているが結論が出ていない。2017年7月には、各地点の地層条件などから適しているか否か、日本全国を塗り分けた「科学的特性マップ」を政府が公表した。今後進展するかが焦点となる。

 放射性廃棄物を含め、エネルギーを、現代に生きる我々は未来にどう伝えるべきか。子々孫々何を遺すべきか。選択の連続である。

廃炉に向けて

 2017年9月、東京電力ホールディングスと政府が福島第1原発廃炉に向けた工程表となる「中長期ロードマップ」を改定した。1、2号機のプールに残存する使用済み核燃料を取り出し始める時期を、2020年度とした従来計画から2023年度目処へと先送りするなど、工程の遅れが目立った。2011年12月のロードマップ策定以降、改定は4回目だ。廃炉作業は今後も難航が予想される。

 技術の継承や人材の確保は深刻な課題だ。事故を受け、原子力を学ぼうとする大学生らは減少傾向が見られる。熟練技術者は高齢化も進み、退職を控える。そうした中、汚染水が建屋内に入り込むのを防ぐ凍土遮水壁の計画、工事など作業は複雑さを極めている。

 原発専業の日本原子力発電を、廃炉関連の専門会社にしてはどうかという議論もある。原電は日本で初めて商業原発を手掛け、国内初の廃炉も原電の発電所だ。原子力分野の草分け的存在で、廃炉を含むノウハウに定評がある。一方、震災後に全原発が止まり経営状況が厳しく、再建が危ぶまれている。

エネルギー情勢の変化

 この連載では、エネルギー業界、企業を取り巻く環境や社会意識の変化を見てきた。発端は、今まさに議論されている日本のエネルギー政策、基本計画の将来像を見据えるため、過去を振り返ることにあった。

 政策を協議する経済産業省は「エネルギー選択の大きな流れ」とした資料で、戦後の日本のエネルギー源が石炭から石油へと変わり、その後の石油危機で資源価格や電気代が高騰し、教訓から脱石油資源、そして温暖化対策のために省エネを進め、現在に至ると説明した。その流れの中で、原発が果たしてきた役割も強調している。

 エネルギー基本計画の基準年となる2030年は「実現重視」を掲げ、温暖化対策の国際的枠組みのパリ協定が目指す2050年に向けては「あらゆる可能性を追求」としている。将来像は2018年春夏頃に方向性が出る。

 この1年だけでもエネルギーの情勢は、国内外でめまぐるしく変わった。原発を見れば、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)が再稼働し、事故を起こした東京電力として初めて柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が原子力規制委員会による審査に事実上合格した。他方で12月13日、広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを決定した。「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地に適さない」と判断し、業界には「まさか」と衝撃が走った。

 エネルギー業界は競争が進んだ。2016年春の電力小売り全面自由化に続き、2017年春にはガスも自由化した。かつて協力関係にあった電力、ガス同士が敵対し、業種や地域を越えて提携する構図も目立った。石油元売り業界はガソリンなど石油需要の先細りを見据え、経営合理化を急ぐ。欧州や中国、インドでは電気自動車(EV)の本格普及の兆しがあり、対照的に日本の出遅れ感も色濃い。

 政府が現実を踏まえて検討したいとする2030年のエネルギーは、原発の扱いをどうするかといったテーマの比重が自ずと大きくなる。ただ、その更に20年先、「あらゆる可能性を追求する」という2050年に向けては、採算性は別として、将来性のあるエネルギーに関する議論もあり得る。発電方法1つ取っても、例えば、海の波を利用した波力発電や大規模太陽光発電所「メガソーラー」の上を行く「ギガソーラー」、もっと言えば、宇宙空間で行った太陽光発電の電気を地球上に届けるといった「宇宙太陽光発電」などだ。

 有識者らによる今の議論は、世界中で再生可能エネルギーが普及している現状の追認や背景分析、あるいはデンマークのオーステッド社(エルステッド社とも)がかつての石油事業から再生エネルギーに軸足を移した成功例などの紹介が多い。そうした検証は勿論重要だが、2018年前半にも方向性が出ると期限が見えているだけに、より広範なテーマの取り扱いと議論の加速が期待される。

将来は予測困難

 「一番よく分かったのは、このお二人を以てしても、エネルギーの将来像を確実に予測することは困難である、そこを明確におっしゃっているということであります」。

 9月29日、世耕弘成経産相は第2回エネルギー情勢懇談会の総括でこう率直に述べた。「お二人」とは、エネルギー業界の世界的権威として招かれたイギリス王立国際問題研究所のポール・スティーブンス(Paul Stevens)氏と、アメリカ戦略国際問題研究所のアダム・シミンスキー(Adam Sieminski)氏だ。

 世耕氏は「地政学、マーケット(市場)の問題、技術の問題、そして自動車産業の動向にまで我々は目を配りながら考えていかなければいけない。変数がまさにどんどん増えてきている」とも述べた。予測困難であっても、様々な検討を重ねることでより計画が精緻になり、練り直されることが重要だろう。

 最後に、その第2回懇談会で印象的だった発言を記したい。当たり前のようにも聞こえるが、多くを知る権威の言葉だけに、重みがある。(以下、いずれも英語から日本語に通訳した議事録に基づく)

スティーブンス氏:「エネルギーというのは人間の根幹にかかわる重要な問題ですから、全てのステークホルダー(利害関係者)が懇談会に関わることが重要だと思うんです、専門家だけでなくて。勿論強い既得権益がある人もいるけれども、普通の一般の方々も加わるべきだと」

シミンスキー氏:「スティーブンス先生がおっしゃった通り(中略)。やっぱりこういった問題についての国際協力が絶対的に必要だと思っています。そして各国を超えて対話をし合うということが重要だと思っている」

 エネルギー基本計画の見直しに向けた議論は続く。2018年に目処がついた後も、再生可能エネルギーやEVへ向かう世界的な潮流の強まり、国内外の原発を取り巻く環境変化や温暖化対策の状況、新興国の台頭など様々な要因を踏まえ、エネルギー資源をめぐる動向は常に流動的であると言っていい。

 見直しに向けたこれまでの議論の議事録や会議の動画は、インターネットで見られる。

・エネルギー基本計画に関する総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/)
・エネルギー情勢懇談会(http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/#ene_situation)

 一人一人が関心を持ち、望ましいエネルギーの未来を熟議する機運が高まることを願う。

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