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生涯健脚でマイ防災力アップを 大経大教授「いざというときの自信に」

  • 2017年11月15日
  • THE PAGE

 5時間、20キロ歩けますか?──。大阪経済大学(大阪市東淀川区)が市民が歩く力を養うことで災害に強いまちづくりをめざす防災プロジェクト「OSAKA5GO!WALK」を12月に開催する。市民参加型ウォーキングは健康や観光促進と連動するケースが多い中、5時間歩ける健脚を養成して予期せぬ災害発生に備えるという新しい視点を導入。プロジェクトを企画した同大学人間科学部の若吉浩二教授は「生涯健脚でマイ防災力アップを」と話している。

帰宅困難時も5時間歩ければ自宅へ帰れる

 大経大は今年1月、地元東淀川区と「災害に強いまちづくりに関する連携協定」を締結。プロジェクトは協定の一環として企画され、市民が参加するウォークやシンポジウムなどで構成。ウォークは災害時避難所でもある大学キャンパスをスタートおよびゴール地点として、区内の防災施設や名所を辿りながら歩く。

 体力などに応じて、5キロ、10キロ、20キロの3コースを設定。イベントタイトルの「5GO!」には、時速4キロで5時間、つまり20キロを歩く、歩き通すというメッセージが込められている。20キロにはどんな意味があるのだろうか。若吉教授は次のように話す。

 「巨大地震などの発生時、外出先で帰宅困難に陥った場合でも、20キロ歩けば自宅へ到達できるか、あるいは自宅へ帰るための交通機関などを利用できる可能性が高まる。20キロ歩くことが被災直後の危機から脱出するひとつの目安になります」

 20キロ歩くと、大阪市中心部から郊外へ避難できるわけだ。自宅が被災し、電気、ガス、水道などが止まった場合でも、20キロ歩いて離れたまちへ移動できれば、生きたライフラインに助けられてひと息付けるチャンスが広がる。

力を出し切らず話せる程度のマイペースで

 それにしても20キロ、一般市民にはけっこうな距離だ。10キロぐらいならともかく、最近20キロを歩き通した人は、交通網が充実した都市部ではあまりいないはず。はたして歩けるだろうか。

 「大丈夫、20キロは周りの人たちと会話を交わしながら歩ける距離です。あわてない、力を出し切らない。ゆったりゆっくり体を1歩ずつ前へ進めるつもりで歩いてください」(若吉教授)

 疲れたら休めばいいが、長く休んでしまうと、再び歩き出すのがつらくなりがち。歩けば自然と脚が前へ出てくる。無理なく歩ける時速4キロの平均ペースで、歩き続けることを意識すればいいようだ。

 「皆さんが心配されるのは、20キロ歩いた経験がないから。一度でも20キロを歩き通した手ごたえををつかむと、いざというときの自信につながります。防災ウォークをいい機会にしてもらえれば」(若吉教授)

 どこにどんな施設があるのか。普段から何気なく歩いているまちを、防災という視点から見直すことにもなる。歩きやすい服装やウォーキングシューズなどを、防災グッズとともに日ごろから準備しておきたい。

生涯健脚シニアが増えれば地域の防災力高まる

 若吉教授はスポーツ科学専攻。東日本大震災の被災地でボランティア活動に打ち込んだ。沿岸部で津波に見舞われた住民たちが、「あの家のおばあさんは、自力で歩けたので高台へ避難して助かった」などと振り返る貴重な証言に耳を傾けた。歩く力が生死を分かつこともある。被災者が直面した現実を、スポーツ科学者として重く受け止めた。

 都市型大学である大経大の一員として、スポーツ科学を地域貢献にどのように生かすか。存在意義を問う設問を自らに課し、考案したのが防災ウォークだった。これまで市民の参加を募るウォークイベントは健康や観光をテーマにすることが多かったが、若吉教授はスポーツ科学を軸に、防災、ウォーク、地域貢献を結びつけた。

 「健やかに生きる本来の長寿とは、いくつになっても自分の脚で歩いて移動できること。健脚が長寿の源泉。予期せぬ災害発生に対し、もとより支え合いの精神は大切ですが、自力で安全な場所へ避難できる人が増えれば、それだけ地域の防災力が高まる。市民1人ひとりが生涯健脚でマイ防災力をアップできる環境醸成をサポートしていきたい」(若吉教授)

 大阪経済の下支えするのは、各地域でがんばる中小企業。若吉教授は「来年は中小企業の防災担当者と連携し、より実践的な防災ウォークの展開を」と長期的視点で臨む。

プロセスから学ぶ成果こそスポーツのだいご味

 若き日の若吉さんは水球の選手で、ロス五輪にも出場。国際大会では泳力を生かした速攻で、強豪チームを苦しめた。厳しい競技生活で得たのは「しつこさ」だという。スポーツは勝者にスポットが当たりがちだが、若吉さんの視点はやや違う。

 「勝者になれるのはごく一部。ほとんどの選手は負けるわけですが、練習や試合を通じて多くのことを体験できる。勝敗の行方という結果ではなく、プロセスから学べる成果こそがスポーツのだいご味です」

 座右の銘は「知行合一」。スポーツ科学者として研究と実践の融合を目指す。これからは生涯健脚によるマイ防災力向上の推進という新たなライフワークにも、粘り強く取り組んでいくことになりそうだ。

 防災ウォークは12月2日開催で3コースで合計1000人の参加者を募っている。参加費500円(未就学児は無料)。応募締め切りは今月17日まで。詳しくは大経大の公式サイトで。
(文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)

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