日本付近に長雨をもたらす原因は停滞前線の1種である梅雨前線です。また、秋にも同じように秋雨前線が停滞し、長雨が続くことがあります。同じ停滞前線である梅雨前線と秋雨前線、その違いや特徴を解説します。
前線の発生には気団が大きく関係しています。気団とは、広い範囲で気温や密度などの性質が同じ空気のことで、大陸や海上の動きの遅い高気圧の下にできやすくなります。
前線は気団の動きとその構造によって種類が分かれ、停滞前線は暖気と寒気の勢力が同程度で前線の位置がほとんど動かないものを言います。日本では季節の変わり目によくみられ、春から夏に変わる時期に出来る梅雨前線が有名です。
梅雨前線の形成に影響するのが、夏の太平洋高気圧に伴う暖湿な小笠原気団や大陸からの移動性高気圧、オホーツク海高気圧に伴って現れる冷涼なオホーツク海気団です。性質の違う気団がぶつかり合う所では上昇流ができて雲が発生します。帯状に連なった雲の正体が梅雨前線です。
梅雨時期の雨の降り方は、一般的に「シトシト」と弱い雨が続く場合と、「ザーザー」と降り方が強まる場合の2種類に分けることができます。
梅雨前線の北側は、「シトシト」と雨が降ることが多いのに対し、梅雨前線の南側では局所的に「ザーザー」と降り方が強まることが多いです。
西日本は、「ザーザー」雨が多く、梅雨末期は太平洋高気圧の縁をまわって暖かく湿った空気が次々と流入するため、集中豪雨のような大雨になりやすくなります。一方、北日本・東日本は、はじめは「シトシト」とした雨が多く、梅雨前線の北上に伴い「ザーザー」とした雨へと変わっていきます。
梅雨前線は夏の太平洋高気圧が勢力を強めるとともに、日本付近を北上していきます。平年では7月上旬頃に沖縄・奄美の梅雨が明け、7月中旬〜下旬に関東以西が梅雨明け、最後に北陸や東北が梅雨明けを迎えます。北海道は他の地域ほど雨の時期が明瞭でないため、梅雨はありません。
一方で、秋雨前線は太平洋高気圧が南へ後退し、北からの乾いた空気を持つ高気圧が勢力を広げていく時に発生します。梅雨の時期は南西の季節風と太平洋高気圧の縁を回る暖湿気が入る西日本で大雨になりやすいのに対し、秋雨の時期は北東からの冷涼な空気が入る東日本や北日本で雨量が多くなる特徴があります。
梅雨末期は太平洋高気圧の勢力が強まるため、非常に暖かく湿った空気が流れ込みやすくなります。湿舌とも呼ばれ、前線の活動を活発化させて大雨をもたらします。
また、台風の接近が多い秋も、台風から熱帯由来の暖かく湿った空気が前線に向かって流れ込むため、前線の活動が活発になります。前線+台風は大雨をもたらす危険な気圧配置です。
梅雨末期の大雨は、毎年のように発生しています。球磨川などの大河川で氾濫が相次いだ「令和2年7月豪雨」や、広範囲で被害が出た「平成30年7月豪雨」は、いずれも梅雨末期に発生した事例です。今年も大雨に備えハザードマップを確認したり、非常用品を用意したりしておくなど、早めの備えを心掛けてください。