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富士山にかかる雲は情報の宝庫!それぞれの雲が示唆する天気とは

  • 2022年6月14日
  • tenki.jp

山梨県の気象キャスターになってから、富士山を見ることが日課となっています。これにはもちろん私の山岳趣味もありますが、実は富士山にかかる雲を見ることでいろいろな気象情報をつかむことができるという実用的な理由があります。富士山の雲から読み取れる情報を、これまで撮りためた写真とともに紹介します。

笠雲が出たら雨が降るは本当か?

富士山に笠雲がかかると天気が下り坂になることは全国的によく知られています。ところが、実際に何年かにわたって観察してみると、笠雲ができたからといって必ずしも雨が降るわけではないことがわかってきます。上の写真の笠雲が出たのは、山梨では晴天の割合が非常に高い年末のころ。この日も雨が降ることはありませんでした。笠雲は案外気まぐれな指標のようです。

ところで、ひとくちに笠雲といっても、「笠」の形はバリエーションに富んでいます。同じ形の笠雲には二度と出会えないと言ってもいいかもしれません。普通イメージする笠雲は1階建てですが、中には2階建て、はたまた3階以上の多層建てが出現することがあります。また、完全な形の笠になりきれず、片側にだけひさしが伸びているようなときもあり、このような雲は前掛雲と呼ばれています。

上の2つの前掛雲はいずれも同じ場所(職場)から撮影しているので、ひさしのついている向きが変わっていることがわかります。これは何を意味するのでしょうか。嬉しいことに富士北麓の河口湖にはウィンドプロファイラという上空の空気の流れを測る機械が設置されており、富士山に変わった雲が浮いているのを見つけたときは、どのような環境でその雲が生まれたのかをある程度知ることができます。

ウィンドプロファイラを使って上空3000m付近の風を調べてみると、10月26日は南西風、12月9日は北西風が吹いていました。前掛雲のついている方角から風が吹いてきているようです。このことから、上空を吹く風がやや湿っていたために、富士山にぶつかったところで前掛雲を発生させたと考えられます。

笠雲のもとは湿った空気です。湿った風が富士山にぶつかることで笠雲が生まれ、湿った空気の勢いが強まることで、笠は大きく、多層建てになっていく傾向があります。「笠雲が出たら雨が降る」という観天望気はこうした理由からですが、実際には降らないケースも多々あるため、天気が下り坂に向かうと思われるときに笠雲が多く発生するというのが正確なのではないかと思います。

雨の季節を感じさせるつるし雲

富士山にできる雲のうち、笠雲に次いで注目度が高いのはつるし雲でしょうか。全国的な知名度は笠雲に劣るかもしれませんが、ひとたび現れたときの存在感はかなりのものです。つるし雲は甲府盆地から見ると富士山とはずいぶん離れた場所に浮かんでいるので富士山と関係なさそうにも感じますが、じつはほとんどの場合笠雲とセットで発生します。湿った空気が富士山にぶつかってまず笠雲を発生させたあと、風下で再度バウンドして円盤状の特徴的な雲を作ります。つるし雲ができるには笠雲以上に空気が湿っている必要があるため、空気の乾燥している冬季より、春から秋の水蒸気が多い季節に見られることが多いと感じます。夏山シーズン中の富士山も、つるし雲の観察適地です。

目を離したすきに刻々と姿を変えていく様は風を可視化したように感じますが、これは比喩ではなく、雲によって本当に風が目に見える形に着色されているとも言えます。このようなつるし雲を富士山から間近に見るのなら、吉田口登山道、あるいは須走口登山道がいいと思います。これは富士山周辺では南西風が卓越しているため、つるし雲は山中湖村・忍野村付近に発生することが多いと考えられるためです。

富士山の雲は実に多様

上の写真のような形の雲は、強風時の富士山によくみられます。強風時、山の風下側では相対的に上昇気流が生まれやすく、そこに発生した雲が強風に流され、さながら旗のようにたなびいているものです。こうした雲が発生しているときには、富士山の中腹以上では立っていられないくらいの風が吹き荒れているものと思われます。

ここまで富士山にかかる典型的な雲の特徴を紹介しましたが、複数の要素が組み合わさった形の雲も見られ、それぞれの雲とは一期一会といってもよさそうです。種類だけでなく、発生する時刻、光の当たり方によっても印象はがらりと変わり、一生かけても見飽きることはないのだと思います。

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