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七十二候「寒蝉鳴(ひぐらしなく)」。カナカナカナと聞こえるのはなぜでしょう?

  • 2018年8月13日
  • tenki.jp

「寒蝉(かんせん、ひぐらし)」が鳴く頃です。夏の旅行先などで、カナカナカナ…という澄んだ声を耳にされたことがありますか? じつはヒグラシ、6月くらいからずっと鳴いているセミなのです。それを「秋告げ虫」扱いとはいったい⁉︎ そもそもセミの大合唱といえば、暑い夏をさらに暑苦しく感じさせるもの。ところが、ヒグラシだけは違っていたのです。木々をわたる、高く涼やかなその声…日本人は、そこに「カナカナ」という音を聞き、せつなくなり、「寒さ」を感じてしまったのですね。夏の終わりとセミの声、どんな関係があるのでしょうか?

大声で歌っているオスは、本気で婚活中!! 種によって鳴き方が違う理由とは

ミ〜ンミンミン! ジョワジョワ! シャーッ! ツクツクオ〜シ!…ちっちゃくて居場所もわからないのに、建物の中にいる人間をも悩ます大音量の歌声‼︎ ガキ大将ジャイアンもびっくりの破壊力です。こんなに暑いなか、大声で何を歌っているのかというと…プロポーズの言葉なのでした。歌うのは、オスだけ。おなかから声を出しています。セミは、35℃以上の猛暑日になると鳴かなくなるといわれています。今年は歌えない日も多く、すでに8月半ば。心なしか、その声にも焦りが感じられるような…?
セミはその種類によって、鳴き声もさまざま(関連リンクで聴き比べできます)。セミの歌は、その種独特の強弱・高低のリズムをもっていますよね。これは、おなかを動かすことによって、共鳴室の空気量や形・容積が変わり、さらに筋肉や関節、腹弁の作用なども加わって、音がつくられているからなのだそうです。まさに体が楽器、その種固有の体形や動きの変化が、歌の違いにあらわれていたのですね!
木にとまって鳴いているオスは、メスが飛んでくるのに気づくと、遠くのメスを呼んでいたときとは鳴き方を変えるのだそうです。人間にわかる変化だけでなく、セミ同士にしかわからない恋の駆け引きも展開されていそうです。歌うオスと聴き惚れている(たぶん)メスのツーショットが見られることも! 少々うるさいかもしれませんが、本気の婚活を温かい目で見守ってあげたいですね。

たいてい姿は、見えません
たいてい姿は、見えません


秋の季語にもなっている「寒蝉(ヒグラシ)」。梅雨から歌っていたなんて!?

ヒグラシ(カナカナゼミ)は、アブラゼミよりずっと小柄で、透明な羽を持ち、どことなく上品な顔をした美しいセミです。日本のほぼ全域に住んでいますが、「カナカナカナ…」と聞こえても、高いところにいてめったに姿は現さず、捕獲は困難。オスは共鳴室の空洞でおなかが透けて見えます。なぜかよくセミヤドリガに寄生されて白っぽくなっていたりもします。
セミの種類によっては、鳴いているオスのそばで別のオスが「ジュ!ジュ!」などと妨害音を出して邪魔することも(ここで鳴く順番を待ってるんだから早くして‼︎ ということのようです)。けれど、ヒグラシはみんなで一緒に歌うタイプ。しかも、合唱しつつも個体によって鳴き声に高低の違いがあるともいわれています。音楽的に繊細なセミなのかもしれませんね。
セミは、その種類によって鳴く時期や時間帯も違います。秋の季語になっているヒグラシですが、じつは秋どころか、梅雨くらいからずっと鳴いているのでした。ヒグラシは暗く木が茂った山の中で、朝早くまだ暗いうちか、夕暮れに歌います。日中でも、雨が降りそうに暗くなり、気温が下がると「カナカナカナ」と涼しい声で鳴きはじめるのです。こまかく鈴を振るような澄んだ響きは、まるで秋の虫が翅を擦り合わせて出しているかのよう…そんな「夏の終わり」を感じさせる声が、「寒蝉」と呼ばれる理由になっているようです。

夏の終わりに咲くヒマワリ
夏の終わりに咲くヒマワリ

「ケケケ」でも「キキキ」でもなく「カナカナカナ」と聞こえるのはなぜ?

「夏休みの夕方にヒグラシの声を聞くと、なんだか不安な気持ちになった」。そんな思い出をもつ方も多いのではないでしょうか。暮れていく光のなかで波のように揺らぐ、ヒグラシの声。もうすぐ今日一日とお別れです。冷たい風が吹いて、闇に包まれます。今まで楽しかったけど、疲れちゃった。夏休み、終わらなければいいのに…実際に新学期が始まれば忘れてしまう「終わる予感」が、終わること以上に子どもを寂しくさせるのかもしれません。あかちゃんも夕暮れになると、わけもなく泣きます。小さな心で、太陽が隠れる恐怖と「お別れする」不安や寂しさを味わっているのでしょうか。「さむし」とは「さびし」という意味につながるといいます。真夏には心地よいはずの暗さや寒さにも、人は生物的な危機を感じてしまうようです。
鳴き声の音源だけでは「カナカナとは聞こえん…むしろケケケゼミ?」という印象しかもてなかった人も、実際に鳴いている風景のなかでは「カナカナ、なるほどね」と感じやすくなるようです(関連リンクの動画でもお試しください)。セミは、実際には1ヵ月くらい地上で生きるともいわれていますが、飼育が難しく、人の世界ではあまりに短命。昔から日本人は、セミに儚さや哀しさを重ねてきました。空想を広げれば…ヒグラシの、もの哀しく金属的で涼やかな、切ない音色に「奏・哀・金・哉・・・」などとイメージを浮かべ、日本特有の表音文字(仮名文字)で読みの「カナ」と表現したとしても、不思議ではありません(あくまで空想です、念のため)。しかも、古文の「かな」は詠嘆。やがて夏は過ぎていくのだなあ〜と、日本人をしみじみさせる鳴き声ですものね!
もしもヒグラシが夕暮れに鳴くセミではなかったら、同じ音色で歌っていたとしても、「寒蝉」「カナカナゼミ」とは呼ばれていなかったことでしょう(「ケケケゼミ」または「キキキゼミ」だったかも!?)。お祭り・花火・セミの声…夏休みの風景と音のなかに小さい秋をみつけて味わうのも、大人ならではの楽しみかたかもしれません。

寒いときゅうに心細くなり
寒いときゅうに心細くなり

<参考文献・サイト>
『セミの自然誌』中尾舜一(中公新書)
『子供の科学のWEBサイト「コカねっと!」』

夏の音、憶えているかな
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