「広島にとびきりのオリジナルのバラがあるよ」と広島県のフローリストの方が
素敵なバラの生産者かつブリーダー(育種家)のところへ誘ってくださいました。
向かったのは、広島市内から車で30分。宮島で知られる風光明媚な廿日市市で、お父さんの代からバラづくりをしている
とくなが園芸の徳永和宏さんです。
とくなが園芸では現在オリジナル品種を30品種と、それ以外に30品種合わせて60種品種栽培しています。
徳永さんがかつて生み出したバラ、‘ルナピンク’、‘ウィステリアージュ’、‘ラソワ’、‘フェリーク’などは、全国の生産地で栽培され、流通しています。
東京農業大学を卒業して、花の輸入商社に勤めてから家業を継いだ徳永和宏さん。
独学でバラの育種を学んだそうです。
冷蔵庫にしまってあるバラのタネを拝見すると、番号で管理されています。
色々なバラの品種を交配させ、タネを取り、そしてタネから新しい花を育てます。
ですが、驚くことに一緒に収穫したタネでも咲かせる花の形や色などは千差万別で異なるのだそう。
その上、タネを蒔いてもしっかり成長するとも限らないそうで、育種には年月と忍耐が必要なのです。
バラの育種の難しさはさまざまですが、色や形などトレンドにも大きく左右されるそうです。
そのため、新しい品種が誕生しても、流通させるための生産をしていない品種も数多くあるそうです。
徳永さんはどのタイミングで切り花として流通できるか、生産のタイミングをじっくり見極めているのです。
徳永さんが試作のバラを栽培しているところを見せてくれました。
新しいバラを生み出すために、交配するバラからイメージすることはもちろん、生まれてくる新品種のイメージも考えています。
ただ、どのような花を作り出すにしてもこだわっていることがあります。
「花持ちにはやはり花弁がしっかりしていることが大切です。柔らかい花びらを持つものは輸送や日持ちを考慮するとやはり厳しいです」そして「軸がしっかりしているものを選びます」と言葉は続きます。
しっかりした茎を持ち、強い花びらのバラは栽培環境にもよるが、やはり日持ちがよく、消費者の手元に届いてからも美しく長く咲く。
その2点を注視しながら、育種をしているのです。
拝見した新作のバラもどれも花びらはしっかりと固く、茎もしっかりしています。
色や形が素晴らしいことはもちろんですが、花店で購入した方が存分に楽しめるようなしっかりとしたバラを作りたい!そんな徳永さんの熱い思いが伝わってきました。
徳永園芸と同じ広島県のフローリストドゥジエムの山村多賀也さんに、徳永さんのオリジナル品種で作品を作っていただきました。
バラ(ローズシノ、クラシカルピンク、グランデフリル)、ホワイトレース、リキュウバイ、ピスタチアリーフ
バラ(名称未定)、キンカン、シキミア、ポピー、ゲッケイジュ、ラナンキュラス、スイセン、ユーカリ・テトラゴナ、カモミール
バラ‘ ストロベリーポロン’ 、ビバーナム・スノーボール、キイチゴ、ユーカリ・テトラゴナ
ドゥジエムの山村さんは徳永さんのバラを長く仕入れています。徳永さんのバラは、日持ちがいいことはもちろん、店頭で魅力的な姿であり、お客様の心を惹きつけると山村さん。写真はドゥジエム古江店の店頭。この日は美しく開いた‘ローズシノ’はひときわ華やかです。
text & photo 月刊フローリスト 写真/タケダトオル
協力・制作/山村多賀也(ドゥジエム)
ドゥジエム古江店
広島市西区古江新町5-1 アバンセ古江店内