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【阪神大震災23年 歩いた先に(5)】新たな目標「地域の人と協力 神戸の街全体を守る」 7歳で被災した消防士

  • 2018年1月13日
  • 産経新聞

 震災で黒焦げとなった住宅を目にしたことが、消防士を目指すきっかけになった。神戸市消防局職員、尾曲伸乃祐(おまがり・しんのすけ)さん(30)は小学1年のとき、阪神大震災で被災。当時の記憶として残るのは近所の老夫婦宅が震災に伴う火災で焼けてしまったことだ。いつも和やかにあいさつしてくれた夫婦だった。「僕がこの街を守る」と幼心に誓った。(石川真大)

 被災したのは神戸市須磨区の自宅。タンスが倒れ、食器やガラスが散乱するなど半壊状態となった。両親と姉の4人で外に飛び出すと、真冬の午前6時前なのに異様に明るいことに驚いた。原因は、自宅そばに住んでいた老夫婦宅から激しく上がる炎だった。数百メートル離れた須磨消防署から多くの消防隊員が駆けつけ、消火活動を始めようとした。

 「放水始め!」「(水が)出ないぞ!」

 隊員らのこの言葉を今でも鮮明に覚えている。激しい揺れの影響で水道管が破裂し、放水用の水が出なかったのだ。各地から次々に救援要請が寄せられる中、予想外のアクシデントに現場は切迫した雰囲気に包まれた。

 直後に親族の車で避難した。夕方戻ってみると、老夫婦宅は全焼して黒焦げに。夫婦は帰らぬ人となっていた。「学校に行くとき、いつも笑顔で『行ってらっしゃい』と声を掛けてくれる優しい夫婦だった」だけに、7歳ながらも大きなショックを受けた。と同時に「現場にいても僕は何もできなかった。次は僕がこの街を守る」と決心していた。将来の夢を消防士に定めた瞬間だった。

 平成24年に神戸市消防局に採用された。消防学校で半年を過ごした後、配属されたのが須磨消防署。管内には自宅があるだけでなく、あの老夫婦宅の跡地も駐車場となって残る。「何もできなかった当時の悔しさを忘れず、懸命に働いた」と話す。

 しかし、消防士を続ける中、ある思いが芽生え始めた。「阪神大震災や東日本大震災のような大災害が起きれば、自分一人で全員を助けることはできない」。消防だけでできることにも限界がある。考えた末の答えが「市民との協力」だった。

 28年に市消防局の地域防災支援係に異動。以来、地域ごとに防災訓練だけでなく、要援護者の見守りといった福祉活動も行う神戸市の自主防災組織「防災福祉コミュニティ」に助言や支援を行う業務を担う。

 あの日、消防士になるという夢を果たした少年は今、新たな目標に向かって歩き始めた。「子供の頃は須磨の街を守りたいと思っていたが、今は違う。地域の人々と一緒に防災活動に取り組み、神戸の街全体を守りたいんです」

 =おわり

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