植物を植えただけではお庭や外構は完成しません。植物のある景観を作ることこそが、ガーデン設計の肝。そんな景観づくりに欠かせない「石」の使い方を一部のぞいてみましょう。石を使いこなせば、植物の魅力をもっともっと引き出せるはず!
オブジェ的な大きなゴロタ石。スコットランド産の「ケルティックボルダー」。
石を敷く
古くから、庭によく使われてきた石材。庭石の使い方は、「敷く」「積む」が基本で、素材は自然石が原則です。
自然石では、古くから日本庭園で庭石として使われている、安山岩・花崗岩・粘板岩といった国産のほかに、最近では、白やベージュなど淡い色合いの石英岩や石灰岩の輸入石も増えてきました。高級感が感じられる素材で、石英岩では「クォーツサイト」、石灰岩では「クラウディー・ペイビング」などが有名です。
乱形の石は、乱貼りなどのデザインにも適しています。また、角のとれたゴロタ石や、ピンコロとよばれる小さな立方体の石も、床面や縁どりの素材として重宝です。
一方、人工の石では、コンクリートを再利用した擬石もあります。平板のものは、アプローチ床面、飛石などによく利用されます。
ゴロタ石を敷き、立水栓の足元は白玉石をあしらって。
設計施工=ガーデン工房ふりーふ
最近よく見られるサークルストーンの模様。
中心部は「クォーツサイト」の乱貼り。縁はインド砂岩サークル。
アイアンウッドの乱立ての足元に、黒い玉石、砂利敷きを組み合わせて。
木材を思わせるインド産粘板岩と厚小端寸法のインド砂岩。
玉石とコケのバランスが絶妙。
設計・施工=ガーデン工房ふりーふ
方形のインド砂岩を園路に敷き(写真左側)、手前はゴロタ石を敷き詰めて。
アプローチ階段にフォレストペイビングを整然と敷いた例。
排水マスをもデザインの中に取り込んでいます。
設計・施工=ガーデン工房ふりーふ
大谷石のアプローチ。
すき間は英虞湾石を敷いています。
山吹色の和美石(わびいし)を、土留めを兼ねてロックガーデン風に積んだ例。
豪快な鳥海石の土留め。
甲州鞍馬石の縁石。
スギコケが生えて、趣のある景色に。白い砂は白州砂利。
英虞湾石のアプローチ階段。
石のすき間にセダムが生えているのがかわいい。
設計・施工=ガーデン工房ふりーふ
甲州鞍馬石の石垣。
鉄サビ色は緑にもよく似合います。
石材用語
・英虞湾石(あごわんせき)
真珠の産地で知られる三重県英虞湾周辺で産出される砂岩。
・安山岩(あんざんがん)
火山岩の一種で、溶岩が固まって変質したもの。
・大谷石(おおやいし)
栃木県宇都宮市大谷から産出される石。軟質なため、加工が容易。門柱・石積みなどによく使用される。
・花崗岩(かこうがん)
石英・長石・雲母などを主成分とする火成岩。一般的には御影石の名称で知られている。
・擬石(ぎせき)
自然の岩石に似せてつくったコンクリート製の石。自然石の細粒を混ぜることもある。
・クォーツサイト
ブラジル産の石英岩。明るい色調をもつ自然石で、色はローズ、ホワイト、イエローなど。
・化粧砂利(けしょうじゃり)
自然石を原料とする砂利。豊富な素材とカラーバリエーションで、庭・アプローチ・玄関まわりなどさまざまなシーンを彩る。
・甲州鞍馬石(こうしゅうくらまいし)
山梨県から産出される鉄サビ色の石。鞍馬石に似ているため、新鞍馬とも呼ばれる。
・小端積み(こばづみ)
レンガ積みや石積みの方法で、小端(側面)を立てるようにして積むこと。花壇やポーチの縁どりなどに使われる。
・ゴロタ石
径10~15cm程度の角のとれた石。山石や偏平な川石・海石なども、現在ではゴロタとよぶ。
・サークルストーン
石を円形状に敷いたもの。
・玉石(たまいし)
川の下流や海で、水や波に洗われて、球形に近くなった石。
・鳥海石(ちょうかいせき)
山形県・秋田県にまたがる鳥海山から採石される安山岩。庭石としてはもちろん、コケが生えやすいため、最近では自然生態保護(ビオトープ)の護岸工事や池などに使用される。
・ピンコロ石
小舗石ともいう。自然石を約9cmの立方体に手割りしたもの。
・御影石(みかげいし)
花崗岩の別称。本当の御影石は、神戸市東灘区の御影町から産出する良質の花崗岩の名称。
「小端積み」の積み方
石を積む場所の下の部分を整えます。土を固くし、砕石をまくか、5~10cmの厚みにコンクリートを打ちます。
↓
コーナー部分は、少し大きめの石を選んで、しっかり固定します。
↓
石同士のくっつき部分が、上下の石でそろわないように、互いちがいになるように積みます。
↓
天板の部分に石を立てて並べれば、イギリスのコッツウォールズ地方で見られる石積み風に。
↓
天板を平らにする場合は、水平に合わせて仕上げます。
石で景色をつくる
石は、組み合わせることにより、心地良い景色をつくってくれます。和風庭園につきものの蹲踞(つくばい)。中心になるものを手水鉢(ちょうずばち)といい、まわりの石を役石(やくせき)とよび、湯桶石(ゆおけせき)・手燭石(てしょくせき)・前石(ぜんせき)・飛石と、それぞれ役割があります。
また、京都のお寺でよく見られる枯山水は、日本人なら誰でも、心癒される景色です。
和風庭園の典型的な蹲踞。
このように、石をランダムに立てることを「乱立て」ともいいます。
石はインド砂岩石「ソリッド」。
設計・施工=ガーデン工房ふりーふ
水の流れる石臼を中心に石組み。
敷石や枕木を使って和洋折衷の庭に。
設計・施工=ガーデン工房ふりーふ
京都のお寺でよく見かける枯山水。
縁どりは甲州鞍馬石。
庭のリフォームやエクステリアについてもっと知りたい方におすすめ!
「エクステリア&ガーデン2024年秋号No.81」では、今回紹介した以外にもたくさんの庭のリフォームやエクステリアについてわかりやすく丁寧に紹介しております。