2月は世界各地がカーニバル(謝肉祭)に浮かれ騒ぐ。規模の大きいものではリオデジャネイロのサンバパレード(2月28日〜3月8日)、ベネチアの仮面舞踏会(2月14日〜3月4日)、ハンガリーの地方の町で何百年と続く仮面の祭りブショーヤーラーシュ(2月27日〜3月4日)などがある。一方で、月の半ばにはバレンタインデーがあり、ロマンティックな雰囲気が盛りあがる(そして物価も上がる)。
スキーシーズンも真っ盛りで、アルプス山脈は混雑する。ジョージアやポーランド、ルーマニア、モンテネグロ、アルバニアなどの東欧の山々であれば、人混みを避けられるだろう。これに対して、温暖な地域としては、東南アジア(インドネシアは雨が多いので避けよう)、カリブ海地域と中米が挙げられる。野生生物の観察や日光浴、晴れた日のハイキングなどが楽しめる。
南半球に向かうにもいい時期だ。オーストラリアやニュージーランドは、地域によってはまだまだ暑いが、夏の盛りが過ぎつつある。都市を抜け出して、浜辺でパーティーをして、クイーンズランド州でウミガメの産卵を見てみよう。
傘を持ってボリビアに出かけよう。巨大な鏡となった世界最大の塩原を見るには、雨の多い季節がベストだ。ウユニ塩原が冠水すると、真っ白な多角形模様のキルトのような表面が湖面のように変わる。塩原の端にあるのは、世界で最初の塩でできたホテル、パラシオ・デ・サルや、ルナ・サラダだ。ほぼ全体が地元で採れた塩で建てられており、アンデスの織物がアクセントになっている。
雨の多い12月から3月は、基本的には観光客が減って物価も下がるローシーズンだ。だが、雨が降ることでコロイコ川は水かさが増し、ラフティングやチュービング、カヤックが楽しめる水の遊び場となる。また、雨によって、たくさんの鳥たちもやってくる。ボリビアのアルティプラノ南西部にある真っ赤な塩湖、ラグナ・コロラダでは、プランクトンによる赤い色をした水面に群がる、ピンクのフラミンゴの姿が見られる。
2回ある雨期の中間となる2月は、セレンゲティのサバンナにおけるローシーズンかもしれないが、草原中を大移動する動物たちの出産時期でもある。数週間の間に50万頭近くものヌーが産まれるのだ。
子どもが産まれることで、その捕食動物も活発に草原を動き回るため、腹を空かせたチーターやハイエナ、ライオンを観察できるチャンスも増える。セレンゲティ南部のンドゥトゥ地区やンゴロンゴロ保全地域の西部が要注目だ。ンゴロンゴロ保全地域は活動を停止した火山地帯であり、世界で動物の密度が最高レベルの地域のひとつだ。
横に広がるサバンナを十分に堪能したら、キリマンジャロで縦に移動をしよう。トレッキングの季節は1〜3月と6〜10月で、北半球の夏季よりも2月は人が少ない。また、2月は比較的乾燥しており、空気が冷えて山の頂上に雪が見える可能性が高い。トレッキングの後は、ザンジバルの温かい海に入り、澄んだ水の中でダイビングやシュノーケリングをして、手つかずの水族館のような体験をしよう。
古くからあるこの地域の景色には、河川による深い谷から、そそりたつ花崗岩の岩山、絨毯のようにひろがる湿地帯、黄金色の低木地帯まであり、野生のポニーが行き来している。ダートムーアの湿地帯には人里離れたパブ、ウォーレン・ハウス・インもあり、イングランドでもっとも長い間燃えているとされる、1845年から灯る火を見ることができる。
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2月のダートムーア国立公園は、霧が凍りついた地表にまとわりつき、独特の空気感が漂う。『ロード・オブ・ザ・リング』の世界のようなウィストマンズ・ウッドは、苦労して1時間歩く価値がある。これはイングランド最古のオーク類の森で、葉の落ちた冬には、くねくねとした幹に苔がぶらさがっているさまがよく見える。
2月はもっとも早い春の知らせが見られる時期でもある。凍った地面からスノードロップが頭をのぞかせるのだ。白い花を咲かせるこの多年草は、ダートムーアの西端にある16世紀の司祭館、ザ・ガーデン・ハウスの庭を一面に覆う。300を超える品種に圧倒されたあとは、居心地のいいカフェでアフタヌーンティーを楽しもう。
冬のブダペストは、オペラにアイススケート、心のこもった食事、雪が舞う中のバロック様式の建物と、見所がいっぱいだ。なかでも大浴場は大きな魅力だろう。湯気の立つ温泉は、2月の寒さを和らげてくれる。金色のセーチェニ温泉、中世からあるルダシュ温泉、露天風呂もあるアール・ヌーボー様式のゲッレールト温泉などに浸かってみよう。
ヨーロッパで一番有名な謝肉祭のイベントはベネチアの仮面舞踏会かもしれないが、「ファルシャング」と呼ばれるハンガリーの謝肉祭もそれに匹敵する。色とりどりの仮面や贅沢な舞踏会、クリームやアプリコットジャムをなかに詰めたドーナッツのような時節の食べ物が見られる。謝肉祭期間中の祝祭日「脂の木曜日」にブダペストに来るなら、空腹にしておこう。多くのレストランが半額で食事を提供している。
南部の町モハーチでは、独特なファルシャングがおこなわれる。約1週間続く祭りは「ブショーヤーラーシュ」と呼ばれ、ユネスコの無形文化遺産に登録されている。
ブショーヤーラーシュでは男性がヒツジの毛織物を身に着け、悪魔のような角の付いた仮面を被り、手こぎボートでドナウ川を渡ってやってきて、行進の見物人を追いかける。仮面を作るワークショップや食べ物を売る露店もある。冬を送って春を迎える象徴として、燃えさかるかがり火に棺が投げ込まれるのを見届けよう。
10月から12月の雨期を終えたタイの2月は乾燥し、昼は暖かく晴れ、夜は涼しくなる。タオ島でダイビングやシュノーケリングをしたり、パガン島(通称:パンガン島)で蛍光色の衣装や発光塗料のペイントで盛り上がるフルムーン・パーティーに参加したり、またはシンプルにビーチを楽しんだり。2月は、タイランド湾の島々を訪れるのに最適な時期だ。
または北部のチェンマイに向かって、花祭り(2月7日〜9日)に参加するのもいいだろう。フラワーフェスティバルは40年以上続いており、この時期に咲くシラギクやダマスクローズが主役となる。生花を使って精巧に飾られた、仏教の神々などを模した背の高いフラワーアレンジメントの乗った花山車が町中を練り歩くパレードは必見だ。