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6つの子育てスタイル、子どもにベストなのは? 専門家に聞いた

  • 2025年1月20日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

6つの子育てスタイル、子どもにベストなのは? 専門家に聞いた

 科学者たちは長年、親の子育てスタイルは子どもにどのような影響を及ぼすかという問題について議論してきた。1960年代には心理学者のダイアナ・バウムリンドが、研究に基づいて人々の子育てスタイルを3つに分類した。

 1つめは、厳格なルールと、高い期待と、ときに厳しいしつけを伴う「独裁的子育て」、2つめは、親密で養育的な関係を特徴とし、高い基準を満たすように子どもを導く「民主的子育て」、3つめは、子どもが自分で状況に対処できるように温かく見守り、ルールをほとんど定めず、期待もかけない「消極的子育て」だ。その後、4つめのスタイルとして「無関心子育て」が追加された。

 だがバウムリンドによる分類の問題点は、人々にとってこれらの用語がわかりにくい点だと、米フィラデルフィア小児病院の「親とティーンエイジャーのコミュニケーションセンター」の創設者でプログラムディレクターを務める医師のケネス・ギンズバーグ氏は言う。「親たちが何をし、何を言うべきかを知る手助けとなるには、新しい名称が必要です」

 こうして、新しい比喩による名前の付いた子育てスタイルが生まれた。

 従来の分類とは違い、新しい子育てスタイルには裏付けとなる研究が少なく、人によって異なる意味を持つこともある。以下では、6つの新しい子育てスタイルと、それが子どもたちに及ぼしうる影響について、専門家の意見を紹介する。

叱らない子育て

 子どもを尊重して温かく寄り添う「叱らない子育て」は、近年人気のスタイルだ。その特徴は、子どもと親の間に強い絆を育むことを重視する点にある。

「叱らない子育ては、子どもの視点から物事を見る子育てスタイルです」と、米アップシャー・ブレン心理学グループの共同創設者で、臨床心理士の資格を持つサラ・ブレン氏は言う。境界線の設定やしつけの方法によっては、民主的子育てや消極的子育てに似たところもある。

 米マカレスター・カレッジの心理学客員助教で発達心理学者のアニー・ペザラ氏は、「子どもたちは、温かさと規律があればうまくやっていけます」と言うが、親にとっては、叱らない子育てを続けるのは難しい。

 ペザラ氏が2024年7月31日付けで学術誌「PLoS One」に発表した論文は、「叱らない親」を自認する人の3分の1が、自分の子育て能力に疑問を抱き、燃え尽き感をもっていることを明らかにした。この子育てスタイルが他のスタイルよりも子どもに良い影響を与えるかどうかは、まだ十分に研究されていない。

除雪機式子育て

「除雪機式子育て」(芝刈り機式子育て、ブルドーザー式子育てとも呼ばれる)を実践する親は、子どもの行く手から障害を取り除こうとすることが多い。子どもに苦労や苦痛を味わわせたくないという親心による行動だが、人生には困難が付きものなので、その望みは現実的でない。

「子どもたちが逆境や葛藤を乗り越えられるように、親のサポートと導きの下で、打たれ強さを育みたいものです」とブレン氏は言う。

 除雪機式子育ては、主に恐怖心に基づく子育てスタイルであり、逆効果になる可能性がある。研究によると、子どもが世の中で直面するおそれのある脅威に対して親が不安を抱いていると、その不安が子どもに伝わり、子ども自身の不安感や、不確実性への弱さの原因になるおそれがあるという。

次ページ:ヘリコプター式子育て、パンダ式(放し飼い式)子育て

ヘリコプター式子育て

「ヘリコプター・ペアレント」という言葉は、頭上でホバリングするヘリコプターのように常に子どもを監視している親をさすが、子どもの身に何かあればすぐに手を差しのべようとする支配的で過保護な親という意味もある。

 除雪機式子育てと同様、「このような過干渉は、子どもが困難を乗り越える方法を学んだり、打たれ強さを身につけたりするのを助けるものではありません」と、南カリフォルニア在住の教育心理学者であるミシェル・ボーバ氏は言う。その結果、「子どもたちは依頼心が強くなり、自主性を奪われます」

 さらに2021年5月に学術誌「Nordic Studies on Alcohol and Drugs」に発表された研究により、母親がヘリコプター・ペアレントであることとティーンエイジャーの娘の飲酒量の多さの間に関連があることが明らかになっている(相関関係が示されただけで、因果関係が証明されたわけではない)。

 また、2024年1月9日付けで精神医学の学術誌「Frontiers in Psychiatry」に発表された研究では、ヘリコプター・ペアレントと大学生のうつ病や身体的な自己評価の低さとの関連が明らかにされている。

パンダ式(放し飼い式)子育て

 ヘリコプター式子育てや除雪機式子育ての対極にある「パンダ式子育て」(放し飼い式子育てとも呼ばれる)は、子どもの自立と自由を重視する。

 このスタイルの長所は、子どもの自立心と自信を育むのに良いことだ。「子どもは子どもであることを許され、行きたいところに行き、好きなことができます」とブレン氏は言う。

 心配なのは、子どもがまだ対処できないような部分でも自由を与えられすぎてしまうことだ。だからこそ、一人ひとりの能力に基づくべきであり、彼らが安全に過ごせるよう、指導や「足場」が必要だとボーバ氏は言う。

「今の子どもは、私たちが子どもだった頃とは違う子ども時代を送っていることを念頭に置く必要があります。彼らの時代は、より速いペースで、より恐怖心によって動いています。そして彼らはデジタルネイティブなのです」

 とはいえ、子どもの自立的な移動、つまり「大人の監視なしに近所や街中を移動する自由」を励ますことは、より良い体の健康と心理的な幸福につながる可能性があることを示唆する研究もある。

次ページ:タイガー式子育て、灯台式子育て、そして効果的な子育てとは

タイガー式子育て

 2011年に米国の法学者で弁護士のエイミー・チュア氏の回顧録『タイガー・マザー』(朝日出版社)が出版されてから、「タイガー式子育て」は広く知られるようになった。これは厳格で要求の多い子育てスタイルで、子どもに高い期待と基準を課し、感情的なサポートは少ない。

「タイガー式子育ては、子どもを内から突き動かすものではなく、親が子どもに与える目標によって子どもを行動させようとするもので、子どもを追い詰めてしまいがちです」とボーバ氏は言う。

 最近ではあまり話題に上らなくなったが、タイガー式子育ては今でも行われており、他の多くの子育てスタイルよりも広く研究されている。

 研究により、タイガー式子育ては子どものストレス反応の高さ(コルチゾール値を測定することで分かる)と関連していることが明らかになっている。さらに、タイガー式子育てをされた子どもは不安症になりやすいほか、うつ症状や親からの疎外感も強くなりやすいという。

灯台式子育て

 最新の子育てスタイルの1つである「灯台式子育て」は、ギンズバーグ氏による造語で、「タイガー式子育て」ほど厳格でも支配的でもなく「パンダ式子育て」ほど放任でもない、中間的なスタイルだ。

 灯台式子育てでは、親は岸辺から導きと一貫した支援を行い、子どもが沖合まで出ることを許すという考え方をする。「灯台が船に近づいていくことがないように、親は自分のいる場所にとどまります」とボーバ氏は言う。ギンズバーグ氏は、「親が子どもに介入するのは、子どもを真の危険から守るためであり、子どもを支配するためではありません」と言う。

「名称は新しいですが、これはバランスの良い民主的子育てから学んだことをどのようにして実践するかということなのです」とギンズバーグ氏は言う。「親が愛情ある導き手となり、適切な境界線を定めることができれば、子どもたちは最善の道を歩み、親子の絆は強固になるでしょう」

 実際、民主的子育ては、子どもやティーンエイジャーの学業成績や自己効力感の高さ、自信の強さや感情の自己制御のうまさと関連していることが研究により明らかになっている。「成功し、精神的に安定した人物に育てたいなら、民主的子育てスタイルが良いでしょう」とボーバ氏は言う。

効果的な子育てとは

 比喩や呼称はさておき、効果的な子育てにはいくつかの重要な特徴がある。まずは子どもとの間に安心感のある愛着関係を築くことだとブレン氏は言う。「自分がいることで子どもが安心し、見守られていると感じ、慰められているだろうかと考えることが大切です」

 ボーバ氏は、愛着関係を築くためには、感情の同調、温かさ、一貫性、忍耐が重要だと言う。研究によると、親子の間で感情的に健全な関係を築くことは、子どもの神経生物学的な機能や発達に有益であるかもしれないという。

 親が子どもの視点から世界を見つつ、子どもが自分を一個人であると感じ、自分の感情に安心感を持てるように手助けすることも重要だ。これらは無条件に愛されているという証になる。

 ギンズバーグ氏は、子育てには一貫性が重要だが、柔軟性も大切だと言う。「変化するのは、導きのレベルです。目標は、頼り合い、成長する能力を育むことです」

 バランスの良い子育ては、親と子の間に強い絆を育む。ギンズバーグ氏は言う。「愛情をもって子どもを導くことで、子どもは生涯、あなたを大切に思うようになります」

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