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リバーサーフィンが米中西部で大ブレイク、波はいつもそこにある

  • 2024年6月22日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

リバーサーフィンが米中西部で大ブレイク、波はいつもそこにある

 ハンナ・レイ・Jさんの生活は常に川と共にあった。子どもの頃は、アイオワ州マンチェスターにある実家の農場にほど近い川で、釣りやカヤックを楽しんだものだ。ある日のこと、ハンナさんはアイオワ州シーダーフォールズにある川の真ん中でサーフボードに乗っている人を見かけた。

「すごく楽しそうで、やってみたい、と思いました」とハンナさんは言う。この偶然の出会いをきっかけに、米国の川でサーフィンをすることがその後の人生の楽しみとなった。そんな人はハンナさんだけではない。リバーサーフィンは、米国中西部のアウトドア・レクリエーションの次のトレンドとして急上昇中だ。

 ネブラスカ州ノーフォークでは最近、都市型の急流公園がオープンした。アイオワ州シーダーフォールズでも、河川レクリエーション拡大プロジェクトの一環としてサーフィン・エリアが計画されている。オハイオ州ウェストキャロルトンでは、マイアミ川沿いの新たな急流河川公園を軸に大規模な開発が進められているし、オクラホマ州タルサでも同様のプロジェクトが進行中だ。

 こうした施設が新たにできれば、川遊びを楽しみたい人々が大勢やってきて、お金を落としてくれるかもしれない。それは内陸の小さな街の多くにとっては経済発展の助けになる。人気の急速な高まりを見て、リバーサーフィンは「サーフィンの未来だ」と言う専門家もいるほどだ。

 コロラド州に拠点を置く会社バッドフィッシュによると、同社のサーフボードの売り上げは、コロナ禍以降、急激に増えたという。

「今年は過去最高の年です」と共同経営者のマイク・ハービー氏は言う。「私がこれまで関わってきた河川のアクティビティで、これほどの盛り上がりは見たことがありません」。同社では、リバーサーフィンが行われる地域に暮らし、環境作りをしてくれる人々に敬意を表して、自社のサーフボード製品の1つに「ウェーブ・ファーマー」と名付けたほどだ。

 高まるリバーサーフィン人気と、それが地域社会に与える影響を詳しく見ていこう。

マイナーなスポーツからメインストリームに

 さかのぼること1970年代、リバーサーフィンというニッチなスポーツは、ドイツのミュンヘンを流れるアイスバッハ川で始まった。もともとは密かに楽しまれていた遊びだったが、海のない地域でサーフィンの代わりになるアクティビティを求める人々の中で人気を獲得していった。

 海のサーフィンでは「セット」と呼ばれる数本続く大きめのうねりを待つが、川では波が途切れないので波待ちをする必要がない。繰り返し練習でき、スキルを磨くことができる。

 川の波は、岩や構造物などの障害物の上を水が流れるときに安定して形成され、リバーサーフィンでは冒頭の写真のように、流れに向かって波を滑り降りるように乗る。波と同じ方向に進む海のサーフィンとは対照的だ。

次ページ:ゴミや水位の変動など、課題も乗りこなせ

 リバーサーフィンで使うボードは海のサーフボードよりも短く、幅が広いのが一般的で、体積を大きくして淡水でも浮きやすくしているものが多い。

 この数十年で、波を発生させる河川の技術やサーフボードの設計技術が進化し、マイナーな遊びだったリバーサーフィンは、メジャーなスポーツへと変化を遂げた。

 ローラ・ハンター氏は、リバーサーフィンへのこうした関心の高まりが、さらに広がるよう期待している。ハンター氏は、オクラホマ州北東部のアーカンソー州境近くに3300万ドル(50億円強)をかけて新たに建設された急流公園WOKA(Waters of Oklahoma and Arkansas)の関係者だ。イリノイ川沿いに先月オープンしたこの公園には、落差があってさまざまなアクティビティが楽しめるポイントが8つあり、反響に驚いていると語る。

「現在までに公園を訪れた車は4000台を超えていて、想定以上です」とハンター氏は言う。「本当に信じられません」

 サーフボードやカヤック、救命胴衣、その他必要な用具は現地でレンタルが可能だ。WOKAのウェブサイトではウェブカメラのライブ映像を観ることができ、事前に波の高さや水の状況を確認できる。

 さらに嬉しいのは、地域社会に受け入れられていることだ、とハンター氏は続ける。

「急流(アクティビティ)をサポートする企業が、すでにこのエリアに進出しています」と氏は言う。そのひとつがエディライン・カヤックス社だ。同社はワシントン州にある本社を、WOKAから5キロメートルほどのアーカンソー州シロアム・スプリングスに移転中だ。地元のアウトドア用品店、オザーク・マウンテン・トレーディング・カンパニーでは、自社のウェブサイトに「WOKAコーナー」を新たに設けた。

 住民がさらに一歩進んだ行動に出た街もある。オハイオ州デイトンでは、コロナ禍中に遠出ができなかった地元のサーファーたちが、サーフィン愛をビジネスへ発展させ、成功を収めた。ミネソタ州オースティンやサウスダコタ州スーフォールズといった地域では近い将来、街を流れる河川に急流公園の建設をもくろんでいる。

ゴミや水位の変動など、課題も乗りこなせ

 リバーサーフィンは中西部の地域社会に社会的、経済的な恩恵をもたらすかもしれないが、一方で課題もある。ゴミ、雨水による急激な増水、折れた木の枝などは、いずれも快適なリバーサーフィンの妨げになったり、サーファーに危険をもたらしたりする恐れがある。

 波の高さを左右する河川の水量は日々変化する。2023年の夏、中西部では広い範囲で干ばつに見舞われた。水位の低下は一部の急流公園では大きな問題で、対処が必要だった。また、急流で行うアクティビティはどれもそうだが、さまざまなリスクがつきまとう。

 だからといって、そこにためらいはない。水位の変化に合わせて波を調整する新技術も実用化されつつある。それに、急流公園が目指すのはサーファーの集客だけではない。それ以外の人にも来てもらえる公園だ。

 オクラホマ州のWOKAでは、全長約360メートルのコースに、先に述べたように落差のあるポイントが8つ用意されていて、カヤックやチュービング(ゴムの浮き輪を使った川下り)を楽しみたい人や、川岸からアクティビティを眺めて楽しみたい人のニーズにも応えている。

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