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サメとビーチをシェアするには、「サメ予報」の実現へ進む研究

  • 2024年6月19日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

サメとビーチをシェアするには、「サメ予報」の実現へ進む研究

 米国北東部の海岸で近年、ホホジロザメの目撃件数が増えている。餌となるハイイロアザラシに引き寄せられて、この海域に集まってくるためだ。ハイイロアザラシは、1972年に米国の海洋哺乳類保護法によって狩りが禁止されて以来、東海岸で数が回復している。

 米フロリダ自然史博物館が運営するデータベース「インターナショナル・シャーク・アタック・ファイル」のデータによると、サメの獲物が回復したことに加え、ビーチに遊びに行く観光客が増えたこともあって、1970年以降、サメにかまれる事故が世界的に少しずつ増えてきたという。しかしごく最近では、その件数が減少傾向にあるようにも見える。

 2018年には、サメに脅威を与えていないにもかかわらずかまれた件数が世界的に66件報告されていたが、2020年には57件に減っていた。そのうち10件は死亡事故だった。サメによる死亡事故の平均は年に4件だが、2020年だけ特に多かったのはおそらく例外だろうと、専門家は考えている。

 サメに遭遇する確率は極めて低い。遭遇したとしても、サメが人間をアザラシなどの獲物と勘違いしない限り、かまれることはめったにない。サメの餌場となる場所で泳いでいると、リスクが高くなる。

 オーストラリア、シドニー大学で一般の人々のサメに対する認識を研究する社会科学者のクリストファー・ペピン・ネフ氏によると、海岸近くで人間とアザラシ、ホホジロザメが密集して泳いでいるような場所は、世界でも米国マサチューセッツ州のケープコッドと南アフリカのケープタウンだけだという。

 ちなみに、人がサメにかまれると大きなニュースになるが、大半の場合、脅威を与えていないのに人間をかむサメは、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメの3種だけだ。

怖いイメージを払拭

 以前は無慈悲な殺人者というイメージが強かったが、最近の研究のおかげで、サメは長い場合で400年も生き、友好関係を築くこともできる動物であることが知られるようになっている。また、海の生態系を保つために重要な役割を果たしていることもわかっている。

 サメの研究者や教育者は、サメの行動について人々に知ってもらうために努力している。これに対する反応は、おおむね良好なようだ。一部の研究者は「サメに襲われる」という言い方ではなく、「サメにかまれる」、もしくは「サメと遭遇する」などと表現を変えた方がいいのではとさえ提案している。

 サメに遭遇しても、必ずしもけがを負うわけではない。海底にすむ小さなサメを誤って踏んでしまうなど、3分の1のケースは無傷で済んでいる。

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 ケープコッドにある博物館「大西洋サメセンター」では、2016年の開館以来、年間の来館者数が毎年約3000人ずつ増えているという(コロナ禍が始まった2020年を除く)。博物館を運営する大西洋ホホジロザメ保護協会の教育担当者であるマリアン・ロング氏は、「最もよく聞かれるのが、『サメを見るにはどこのビーチに行くべきですか』という質問です」という。

 サメのことをもっとよく知ってもらい、人々の好奇心をかき立てることこそ、リスクを伝え、人間とサメが安全に海を共有するために必要なことだと、専門家は言う。

ドローンの役割

 お気に入りのビーチに、その日、特にサメが出やすいかどうかを予報で知ることができたらどうだろう。それは意外と不可能ではないかもしれない。

 ナショナル ジオグラフィックのテレビ番組「ざわつく!ビーチのサメ群団」では、ドローンの活用がサメ研究に革命的な変化をもたらし、海岸近くにやってくるサメの動きを追跡するのに役立っていることを紹介している。ドローンの画像とともに、海水温や捕食者の存在、サメが若いか、または妊娠しているかなどの要素を分析することで、サメがいつ、なぜ人間のすぐそばまでやってくるのかをより明確に理解できるようになる。

 米カリフォルニア州立大学ロングビーチ校サメ研究室の室長を務めるクリス・ロウ氏の研究を追いながら、番組はカリフォルニア州南部の海岸沿いで、季節的に急増するホホジロザメの目撃情報を調査した。サンタバーバラ沖で撮影されたドローンの映像は、人間に気づかれずにすぐそばまで接近し、サーフボードの下を悠々と泳ぐサメの姿をとらえている。

 浅瀬にいるこれらのサメのほとんどは赤ちゃんザメだ。浅瀬の方がシャチやおとなのホホジロザメなどの捕食者に狙われる危険が少ないからだという説がある。

 一方、そこから少し南下したサンディエゴ沖によくやってくる数十匹のカリフォルニアドチザメの多くは、妊娠しているという。卵を温めるニワトリのように、妊娠したサメは温かい海水に引き寄せられるのだろう。

 調査結果は科学的に説得力があり、実用化も可能だ。サメが集まりやすい海の状態がわかれば、ビーチに行く際にいつもより注意すべき点を、より正確に人々に知らせることができる。既に海水浴客は、離岸流の発生や嵐の接近などの注意報には慣れている。サメに関する予報があってもいいのではないだろうか。

「サメを引き寄せる法則が何なのかを理解すれば、どこにサメが現れるかを事前に予測することもできるでしょう」と、番組プロデューサーのジェニー・ハモンド氏は言う。

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