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カタールはどんな国? 男性が女性の3倍もいるのはなぜ?

  • 2022年11月23日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

カタールはどんな国? 男性が女性の3倍もいるのはなぜ?

 中東の小さな国カタールに大量の人々が押し寄せている。目的はただひとつ、FIFAワールドカップだ。

 2010年に開催国に選ばれて以来、カタールは多くの物議を醸している。外国人労働者に対する非人道的な労働環境によって、数千人が死亡したと伝えられるほか、同性愛が死刑に処されることすらある国でLGBTQの観客の安全が確保されるのかという疑念も巻き起こっている。

 しかし、中東初のワールドカップ開催国は、2022年11月20日から12月18日までの大会期間中、世界に最善の姿を見せようとしている。

 この記事では、試合を見る前にカタールについて知っておきたいことを5つ紹介する。

1. 猛烈な暑さ

 カタールは地球上で最も暑い場所のひとつだ。夏の平均気温は35℃、最高気温は50℃に達する。

 この酷暑のため、カタール大会は、多くの国でサッカーが最も盛り上がる夏ではなく11月に行われる。外気温は24℃ほどまでしか上がらないと予想されるが、さらに念を入れて、ほとんどのスタジアムに省エネ冷却システムが設置された。フィールドの温度は快適な20℃に保たれる。

 気候変動や、耕地や森林、降雨の不足といった複合的な要因で、カタールでは近年気温が急上昇している。そのため、この国ではスポーツ会場やレストランの中庭といった屋外スペースにまでエアコンが導入されるようになった。たとえば首都ドーハに新設されたエアコンつきの陸上競技用トラックでは、選手を日差しから遮るソーラーパネルつきの設備に涼しい風が吹いている。

2. 小さな国

 カタールは、ペルシャ湾とバーレーン湾に囲まれた半島に位置し、面積は約1万1500平方キロメートル。秋田県と同じくらいだ。

 国土の小ささもあって、今大会のスタジアムはすべて首都の中心から約34キロメートルの範囲内にある。この10年間、カタールはワールドカップの観客(と市民)の移動を容易にするため、インフラ整備に多額の投資を行った。また新しい地下鉄網の整備、国有のバスやタクシーの車両改良、新しい幹線道路の建設など、長期的な交通システム整備計画も進められている。

3. 多様性

 カタールにはさまざまな民族的、言語的、文化的背景をもつ人びとが暮らしている。公用語はアラビア語だが、英語も普通に使われるほか、マラヤーラム語、ウルドゥー語、ヒンディー語、ペルシア語その他の南アジアや東南アジアの言葉も話されている。

 宗教もイスラム教だけではない。仏教、ヒンドゥー教、エジプトのコプト教、バハイ教の信者など、宗教的少数派に属する人も相当数いる。

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 このような多様性を生み出しているのは、カタールの労働人口の94%を占める外国人労働者だ。推定ではカタールの住民10人のうち7人がインド、パキスタン、ネパール、イランなどからの移民である。その大多数が商売や単純労働に従事している。

 ワールドカップの招致活動を通じて盛んに多様性を宣伝したカタールだが、人権問題には厳しい批判が向けられている。ワールドカップスタジアムの建設労働者のほとんどが移民であり、差別、虐待、賃金不払などの被害にあっていると、労働者の人権保護団体が報告している。英ガーディアン紙の調査によれば、カタールがトーナメントの開催国に選ばれて以来、6500人の移民労働者が死亡したという。

4. 男性中心の世界

 カタールでは、女性に対する男性の比率が世界一高く、男性の数が女性のほぼ3倍に上る。1970年代以降、男性の数が急増した理由のひとつは、ほとんどが男性である移民労働者への依存である。

 このような男女比の不均衡、カタールの法律、保守的な慣習などが、女性に対する差別や暴力を当たり前とする環境を作り出していると人権団体は指摘する。女性は男性の許可を得なければ結婚も海外旅行をすることもできない。ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は2021年の報告書で、このような女性を男性の従属下に置く制度は、現地法にも国際法にも違反していると訴える。

 しかし、カタール人女性にとっては抑圧だけが現実ではない。女性たちは教育の分野で歩を進め、市民権を推進し、ついにこの国の政治プロセスに参加しようとしている。今大会ではワールドカップ史上初めて女性が審判を務める。

5. 古代からの経済繁栄

 今日、カタールは世界で最も裕福な国のひとつとして知られる。2021年の推計GDPは1796億ドル(約25兆円)だ。その豊かさは、新築あるいは改築されたスタジアムによって十分に示されるだろう。中には大会後は解体されたり、別の形で再利用されるものもある。各建造物のために50億から100億ドルが投じられ、2022年ワールドカップにかかる費用の総額は2200億ドル(約31兆円)にもなるという。過去最も費用のかかったワールドカップである2014年ブラジル大会の150億ドル(約2兆円)が微々たる額に見えてくる。

 オイルマネーで潤うカタールだが、古代にもこの国の経済が活況を呈したことがあった。

 カタールには7000〜8000年前から人間が定住しており、海上交易の要衝として古代から大きな役割を果たしていた。陶磁器から真珠まであらゆるものが、この地に繁栄をもたらした。1970年代にカタール半島にある3000〜4000年前の遺跡の発掘を行った考古学者らが、貝やカタツムリの殻が堆積した跡を発見した。当時ヨーロッパから中東、アジアで珍重された、紫色の染料が作られていた証拠だ。

 カタールのワールドカップは、こうした豊かな通商と文化の融合という歴史的背景の中で行われる。

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