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異例の女王ネズミやオスが出産する魚など、動物の驚きの繁殖法

  • 2022年9月21日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

異例の女王ネズミやオスが出産する魚など、動物の驚きの繁殖法

 動物のオスとメスは、種を存続させるために、それぞれ異なる性的役割を担っている。性的役割という言葉には、交尾における役割という意味だけでなく、つがいになり、子育てをする際に果たす具体的な役割という意味もある。

 自然界で多いのは、オスの求婚者をメスが選び、生まれてきた子はメスが育てるかたちだ。しかし、肉眼では見えない菌類から、ジャングルに暮らす大型哺乳類まで、動物たちの繁殖や子育てのしかたはさまざまだ。ここで紹介するように、陸海空の動物に見られるその多様性は、動物の繁殖についてだけでなく、地球の生命のすばらしさを浮き彫りにしている。

ハダカデバネズミ

 盲目で体毛のないハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)は地中にコロニーを作り、強大な力をもつ女王が数百匹の臣下を支配している。ハチやアリのコロニーと同様、ハダカデバネズミの女王は交尾と出産をする群れで唯一のメスだ。

 女王は繁殖相手となるオスの王を1匹または数匹従えており、子をもうける権利を与えている。コロニーのほかのメンバーは、頑丈な歯で巣穴を広げたり、女王の食事の世話をしたり、赤ちゃんの世話をしたりする。生物学者はこれを「極端な協同繁殖」と呼ぶ。

「ハダカデバネズミは哺乳類の協同繁殖において最も極端な例」とカナダ、トロント大学の行動神経科学者であるメリッサ・ホームズ氏は言う。「きわめて稀な例です」

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 ハダカデバネズミの女王は、コロニーのメンバーを押したり突いたりする「優位行動」によって、コロニー内の繁殖行動を抑圧し支配を続けている、と研究者たちは考えている。女王が死に、別のメスがオスと交尾をして子孫を残すようになった場合は、平和的に女王の座につくことができる。しかし、女王が生きているうちに下位のメスがクーデターを企てて女王を攻撃し、死闘を繰り広げる場合もある。ハダカデバネズミの寿命は30年以上と長いため、女王は倒されないかぎり数十年にわたってコロニーを支配することができる。

トピ

 アフリカの氾濫原やサバンナに生息するウシ科のトピ(Damaliscus korrigum)も、メスが繁殖の主導権を握っている。多くの動物ではメスと交尾するためにオスどうしが争うが、トピではメスどうしが激しく争い、交尾中のカップルを襲うメスさえいる。

 トピがメスどうしで争うのには理由がある。トピのメスが妊娠できる日は1年に1日しかないため、1日に4頭前後のオスと交尾して、妊娠の確率を高める必要があるのだ。オスの側も、自分とすでに交尾しているメスは拒絶し、新たなメスからの誘いなら受け入れるなど、独自の恋愛ドラマを繰り広げている。

クマノミ

 ハダカデバネズミと同様、クマノミの群れも1匹のメスが率いている。米オレゴンコースト水族館の上級水族館員であるサバンナ・ドッズ氏は、「このメスが絶大な権力をもっています」と言う。メスのそばを泳げるのは1匹のオスのみで、このオスだけが卵を受精させることを許されている。また、このオスはメスと一緒に卵が孵化するまで世話をする。

 しかし、メスが死ぬと「逆転」が起こる。死んだメスのつがいだったオスがメスに変化し、産卵するようになるのだ。

 すべてのクマノミはオスメス両方の生殖腺をもつが、生まれたときはすべてオスだ。群れの中で最も大きく成長したものがメスになって産卵を始め、次に大きなものとつがいになる。

シードラゴン

 クマノミの一歩先を行くのが、オーストラリアの沿岸で海藻にまぎれて漂うシードラゴンだ。シードラゴンは、オスが卵を守り、孵化させる。近縁のタツノオトシゴと同様、シードラゴンのメスは、オスの尾の下の育児嚢(いくじのう)に未受精卵を産みつける。このときメスは複雑なダンスをしてオスを誘惑しようとするが、オスがメスを気に入らなければ卵を拒絶する。

 オスがメスを気に入れば、卵を受け入れて受精させる。卵はオスの育児嚢の中で成長し、6週間後に孵化する。生まれてきた赤ちゃんは、海の危険や変化する潮流にひとりで立ち向かわなければならない。ドッズ氏によると、シードラゴンの赤ちゃんのうち生き残れるのは5%程度であるという。国際自然保護連合(IUCN)は、シードラゴンのうち数種は絶滅の危機に瀕していると考えている。

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エミュー

 オーストラリアの陸上では、大型の飛べない鳥であるエミュー(Dromaius novaehollandiae)のオスが育児に孤軍奮闘している。繁殖期が始まると、オスのエミューはゆっくりと首を振ってメスに求愛し、交尾する。やがてメスは産卵するが、オスと卵を残して別のオスのもとに行ってしまい、同じことを繰り返す。

 数個の大きな卵とともに巣に残されたオスは、卵を2カ月間も温め続けなければならない。この間、食事はとらず、体重は3分の1も減ってしまう。オスは孵化したひなを1年かけて育てあげ、厳しい自然環境の中で生きていく術を教える。

オオハナインコ

 生きものは一般的に「オスとメスを比べたとき、派手な方がオス」だ。ところが、ニューギニアやオーストラリア、その近隣の島々の熱帯林には、一般論を覆すカラフルなインコがいる。木のうろを巣穴にするオオハナインコ(Eclectus roratus)は、メスが鮮やかな赤と青の羽毛を宝石のように輝かせているのに対し、オスの羽毛はほとんど緑色で、樹冠に溶け込んでいる。

 オーストラリア国立大学の進化生物学者ロブ・ハインゾーン氏によれば、この大胆な色彩の逆転にはセックスアピールも関係しているが、メスの鮮やかな体色は縄張りを主張するためのものだろうという。

「木のうろが自分のものであることを強く主張しているのです。よく目立つ体色は『ここに近づかないで。攻撃するわよ』という信号なのです」と氏は言う。

 オオハナインコが巣にする木のうろは需要が高く、メスはほかのメスから全力で巣を守ろうとする。メスの鮮やかな体色は、その木が占有されていることを知らせているが、それでも貴重な巣穴をめぐって殺し合うメスもいる。24時間体制で巣穴を守るため、メスは配偶者であるオスに餌を運んでもらう。そして、配偶者が多ければ多いほど、より多くの餌をもらえることになる。

 オオハナインコのメスは一度に2個しか卵を産まないが、多くのオスと交尾をして、その全員に自分が父親かもしれないと思わせる。オスはオスで自分の子をさらに増やすべく、複数のメスと交尾する。オスはすべてのひなの世話をしようと、木から木へと果実を運び、メスがそれを食べて吐き出してひなに与える。ハダカデバネズミとエミューのやり方を足し合わせたようなオオハナインコの子育ては、協同的一妻多夫制と呼ばれる。

 メスの方が派手な鳥はほかにも数種類いるが、「オオハナインコほど大胆で目立つものはいません」とハインゾーン氏は言う。「世界広しといえど、樹冠から差し込む明るい日差しに照らされて輝く、オオハナインコのメスの羽毛ほど美しいものはないでしょう」

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