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頭の4分の3がとさか、奇妙な翼竜のほぼ完全な化石を発見

  • 2021年8月27日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 2013年、大量の石灰岩の板が、ブラジルから密輸されようとしていた。ブラジル北東部の有名なアラリペ盆地の採石場から切り出されたもので、ただの石灰岩ではない。そこには太古の生物の遺骸や痕跡が残されていた。

 これらの化石は世界中の博物館や個人コレクターにひそかに販売され、密輸者たちは大金を手にする予定だった。ところが、強制捜査が行われ、押収した3000近くの標本はブラジル、サンパウロ大学に送られた。

 その中に、翼を持つ奇妙な爬虫類の標本があった。体高1メートル超で、鳥のくちばしに似たあごと非常に大きな頭部を持つ。8月25日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表された論文によると、これは、トゥパンダクティルス・ナビガンス(Tupandactylus navigans)のほぼ完全な骨格だという。約1億1000万年前の白亜紀初期に存在した翼竜だ。

 ブラジル、ABC連邦大学の古生物学者で論文著者の一人、ファビアナ・ロドリゲス・コスタ氏は「ブラジル国内でも国外でも極めて美しく保存された翼竜をいくつも見てきましたが、これほど多くの関節がつながっていて、軟組織まで保存されている標本は希少です」と話す。「宝くじに当たるようなものです」

 トゥパンダクティルス・ナビガンスは2003年、ドイツと英国の科学者によって、2つの頭骨を用いて初めて記載された。しかし、軟組織と首、翼、脚の骨を含む体の残りの部分を調査できたのは今回が初めてだ。この翼竜の頭部にある巨大なとさかは飛行能力にどのような影響を与えたかという議論が続いており、今回の発見が解決の糸口になる可能性もある。

「唯一無二の化石です」とコスタ氏は言う。

空を支配した古代の爬虫類

 翼竜は恐竜と同じ主竜類で、両者はすぐ近くで暮らしていた。恐竜は陸で繁栄し、翼竜は空を支配した。2億年以上前の三畳紀後期から6600万年前の白亜紀末まで共存していたが、小惑星の衝突に端を発する地球規模の災害によってどちらもほぼ絶滅した。

 恐竜の一部の子孫は鳥類として存続している一方、翼竜には生きた子孫がいない。化石は先史時代の空を飛んでいた翼竜の姿や生活を垣間見る唯一の手段だが、翼竜の化石は極めて希少だ。繊細な骨は保存されにくく、骨格の断片しか残されていないことが多い。

 古生物学者たちは主に、かつて水中にあった堆積物から翼竜の遺物を回収している。湖や海の底に沈んだ死骸は短期間で柔らかい泥に埋まり、低酸素状態に置かれて腐敗が進みにくくなるからだ。

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 アラリペ盆地はかつて塩水のラグーンだったが、現在は陸地となって緑に覆われている。その石灰岩の層には保存状態の良い化石が数多く含まれており、「本を開くように石を開くと、ページの中に化石が入っています」と、論文著者の一人であるブラジル、パンパ連邦大学サンガブリエル校の古生物学者フェリペ・リマ・ピニェイロ氏は語る。

 110種以上が知られている翼竜のうち、27種がこの地域で発見されている。タペヤラ科は最も多様で豊富なグループの一つであり、中でもトゥパンダクティルス属の種はすべて、特大サイズの派手なとさかを持つ。

 ABC連邦大学サントアンドレ校の大学院で古生物学の研究を行うロドリゴ・バーガス・ペガス氏は第三者の立場で、「ほぼ完全なこの化石は非常に重要な発見です」と評価する。「ブラジルの古生物学にとって大きなニュースです」

巨大なとさかの謎

 2014年、トゥパンダクティルス・ナビガンスの標本がサンパウロ大学にやって来たとき、その骨格はベージュの石灰岩の板6枚に埋め込まれていた。今回の論文の筆頭著者である大学院生のビクター・ベッカリ氏が最初に気付いたのは、翼竜のとさかが頭骨の4分の3近くを占めていることだった。「体の大きさに対してあまりに巨大です」

 2003年にトゥパンダクティルス・ナビガンスを記載した科学者たちは、頭骨のとさかが帆に似ていることから、飛行を助ける推進システムではないかと考えた。そのため、首が短くて頸椎がしっかり固定されている生き物を想像した。

 全身の骨格を手に入れたベッカリ氏らは、この生き物が飛行に適しているかどうかを調べることができた。研究チームはCTスキャナーで古代の骨にX線を照射し、骨格の3次元モデルを作成した。

 その結果、トゥパンダクティルス・ナビガンスは長い首、長い脚、そして、比較的短い翼を持っていたことがわかった。これは飛行より歩行が得意だったことを示唆している。大げさなとさかはおそらく、求愛行動に使う装飾であり、飛行はむしろ短距離に制限され、捕食者から逃げるくらいしかできなかったと推測される。

 しかし、このとさかにはもう一つの謎があり、研究チームはさらなる手掛かりを探し求めている。タペヤラ科の仲間であるトゥパンダクティルス・インペラトル(Tupandactylus imperator)との関係だ。トゥパンダクティルス・インペラトルは4つの頭骨が発見されており、トゥパンダクティルス・ナビガンスよりさらに大きなとさかを持つが、頭の形がよく似ているため、両者は別の種ではなく、同じ種のオスとメスではないかとも考えられている。

「これは直感ですが」とピニェイロ氏は前置きし、「インペラトルの完全な骨格が見つかれば助けになるでしょう」と述べた。アラリペ盆地の石灰岩からタペヤラ科の骨がさらに見つかり、謎に包まれたこの翼竜の生態が明らかになるかもしれない。

 警察による強制捜査のおかげで、科学者だけでなく一般市民もトゥパンダクティルス・ナビガンスを見ることができるようになった。その驚くべき骨格は2017年からサンパウロの地球科学博物館に展示されている。

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