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ワクチン接種完了なら屋外でマスク不要、米が新指針

  • 2021年5月7日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 人々はこの1年、屋外こそ安らぎの場所と考えてきた。ソーシャルディスタンスの時代、屋外はロックダウン中に運動したり、十分な間隔を開けて椅子を置き、人と集まったりできる唯一の場所だった。そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が屋外で感染するリスクは低いという証拠が積み上がったことで、多くの人がマスクを外して警戒を緩めてよいと感じるようになった。

 ただし、「マスクなしでも安全」の解釈には人によって大きな幅がある。ある人は屋外のバーに行くのは全く問題ないと確信し、別の人は犬の散歩でも必ずマスクを着用する、といった具合だ。

 米疾病対策センター(CDC)は4月27日、ワクチン接種を終えた人々についてのガイドラインを新たに発表し、どのような屋外活動が安全かを明確にした。判定は? ワクチン接種を終えた人は相手がワクチン接種を受けたかどうかにかかわらず、屋外での小規模の集まりや食事でマスクを外しても大丈夫というものだ。

「ワクチン接種を受けた人は、ほとんどの場合、マスクなしで屋外活動しても安全です」と、CDCのロシェル・ワレンスキー所長は27日、ホワイトハウスでの記者会見で説明した。「ただし、満員のスタジアムやコンサートなどの混雑した環境、場所では、たとえ屋外でもマスクの着用を引き続き推奨します。人同士の物理的な距離を保つことが難しく、おそらくワクチン接種を受けていない人も大勢いるためです」

マスク着用義務の解除など緩和の動きが加速

 ワクチン接種を受けた人の自由が拡大したのはこれが初めてではない。CDCは3月、ワクチン接種を完了した人同士であれば、マスクなしで屋内に集まっても安全だと発表している。5月5日時点のデータによれば、米国人の約32%がワクチン接種を完了し、約45%が少なくとも1度はワクチン接種を受けている。

 しかし同時に、今回の発表はコロナウイルスの安全対策について公衆衛生上の合意がほとんど得られていないタイミングで行われたことも事実だ。屋内外でのマスク着用を広く義務化している州は半分ほどしかなく、着用義務を完全に解除する州も増えている。

「これは屋外での人の行動を今後どう調整していくかを示す意味で、よく考えられた次なるステップです」と、米テキサス大学オースティン校デルメディカルスクール(医学部)の副学部長として健康格差について研究するジュエル・ミューレン氏は話す。これまでのCDCのガイドラインでは、屋外での運動は認められていたが、ほかの人との距離が約1.8メートル以内に近づく場合はマスクを着用するよう補足されていた。

「マスクの着け方について慎重に考えようとしている人は大勢いますが、彼らはしばしば自分の判断を振り返っては後悔します。本当はもっと明確であってほしいと思っているのです」。自分と他者を守るために正しいことをしたいと思っている人々に、CDCの新しいガイドラインは自信を与えることができるとミューレン氏は述べている。

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未接種者のリスク認識が下がる恐れも

 しかし、パンデミック(世界的大流行)中の人々の行動を研究する専門家の一部は、このような善意の指標が裏目に出る可能性もあると懸念している。慎重に検討した上で選んだクリスマスディナーの招待客と異なり、広大な屋外では、誰がワクチン接種を受けているかを知ることは不可能なためだ。しかも、マスクの着用率が下がれば、ワクチン接種を受けていない人々までマスクはもういらないと解釈する恐れがある。

「CDCのガイドラインがワクチン接種を受けた人を対象に厳しくないものに変更されただけで、すべての人のリスクに対する認識が低下します」と、米クレムソン大学の心理学者ケイリー・バーン氏は説明する。バーン氏はコロナウイルスに関する制約を受け入れるかどうかを個人がどのように判断するかを研究している。

「ワクチン接種を受けていない人々はリスクを恐れず、即座に得られる満足を追求する傾向があり、ワクチン接種を受けている人と受けていない人を分けて考えません。『あの人は何か楽しいことをしている。あの人が大丈夫であれば自分も大丈夫』という発想です」

 この現象は「社会規範化」と呼ばれ、人の行動の多くを左右している、と米バージニア州ジェームズ・マディソン大学のコミュニケーション研究者で公衆衛生キャンペーンの研究に取り組むトビアス・レイノルズ・タイラス氏は説明する。

「マスク着用者が減少すれば、ワクチン接種を受けていない人が、自分もマスクを着用する必要はないと感じるかもしれません。マスク着用の社会的圧力は間違いなく低下するでしょう」

 その観点から見れば、今回のCDCの発表はパンデミックの最も悪い時期に行われたと、カナダ、バンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学の心理学者スティーブン・テイラー氏は指摘する。多くの人が新型コロナ関連の制約にうんざりしており、政府の新たなガイドライン、特にワクチン接種を受けた人と受けていない人を区別したような細かな違いを受け入れない可能性があるためだ。テイラー氏はパンデミックにおける人々のリスクに対する認識を研究している。

「懸念されるのは、ガイドラインを変えれば変えるほど、人々を混乱させてしまうことです。ただでさえ人々はパンデミック疲れに陥っており、彼らをさらに苦しめる恐れがあります」とテイラー氏は話す。「物事が複雑になるほど、人々は従わなくなります。物事をできる限り単純化して変更しないのが理想です」

 しかし、混乱の可能性こそあるものの、この新しいガイドラインは間違いなく、パンデミックが到来してからずっと我慢してきた人々、夏の日差しを浴びることが精神的な励みになる人々に、喉から手が出るほどほしかった新たな保証を与えるだろう。

「ワクチン接種を受けた人々にとっては前向きなメッセージです」とバーン氏は断言する。「そして、彼らはこれから、今までできなかったことを安心してできるようになります」

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