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ハチが減っている、目撃される種数が世界で25%減

  • 2021年1月28日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 ハチは私たちの食を支えてくれている。ミツバチやマルハナバチといった、花に集まるハナバチ類は、世界におよそ2万種が知られており、あらゆる食用作物と果物の85%の授粉を担っている。

 しかし、この重要な昆虫に異変が起こっているようだ。1月22日付けで学術誌「One Earth」に発表された論文によると、野生下で目撃されたハナバチの種数は、過去数十年で世界的に減少していることが明らかになった。2006年から2015年の間に報告された種数は、1990年代以前に比べて約25%も減っているという。市民による報告の総数が増えているにもかかわらずだ。

 コハナバチ科の仲間は、アルファルファやヒマワリ、サクランボなどの重要な作物の授粉を行っている。論文によると、この金属的な光沢を持つハチの観察報告は、1990年代以降17%減少した。希少なケアシハナバチ科のハチは、41%もの激減だ(世界のハナバチは7つの科に分類できる)。

 あまり知られていないことだが、このような野生のハチは、飼育されているミツバチの役割を補っている。

「飼育下のミツバチが多くの作物の授粉を担っているとしても、1つの種に強く依存することは大変危険です」と、アルゼンチンの生物多様性・環境研究所の生物学者で、今回の研究のリーダーであるエドアルド・ザッタラ氏は警告する。

 例えば、米国では病気が大発生した2006年にミツバチの約半数を失った。もし飼育されているミツバチしかいなかったとしたら、「作物収穫量の減少は莫大なものとなっていたでしょう」とザッタラ氏は言う。

 この研究では、地球規模生物多様性情報機構(GBIF)という、誰でも自由にアクセスできるウェブサイトの観察記録を利用した。ここには博物館、大学および一般市民から提供された、1700年代からのハチの観察記録が含まれている。

 ハチの多様性に関する研究の多くは、特定の地域や種に重点を置いている。このことが、今回の広範な分析に取り組む理由となった。

「世界中のハナバチを対象とする長期的で、正確かつ精密なサンプリング調査はありません」とザッタラ氏は言う。「私たちは今回のようなデータを利用することで、よりグローバルな答えを得られないかと考えました」

 ただし、とザッタラ氏は注意を促す。研究の土台となった記録は、特定の種が絶滅したことを判断するための、十分な情報を提供するものではない。「私たちが言えるのは、野生のハチが繁栄してはいないということです」

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ハチにとっての脅威

 今回の分析により、オーストラリアを除くすべての大陸で目撃される種数が減少していることが示された。オーストラリア大陸については、データが不足気味だとザッタラ氏は述べている。南極大陸には、そもそもハチが生息していない。

 20世紀後半に、世界的な農業の発展に伴ってハチの生息地が消失し、農薬の普及によりハチの食料となる植物が減った。温暖化によって元の生息域に暮らせなくなった種や、絶滅した種もある。

 減少の原因はそれだけではない。特定の農作物の授粉のために外来種のハチが導入されることがあるが、そのときに病原体も持ち込まれ、「昆虫におけるパンデミックを引き起こす」可能性があるという。

 ザッタラ氏は、チリとアルゼンチンに導入された欧州原産のマルハナバチ2種によって、パタゴニア原産のマルハナバチが打撃を受けた例を挙げる。この在来種は、食物をめぐる競争の激化と新たな病気へのかかりやすさから、絶滅が危ぶまれるまでに追い込まれた。

膨大なハチのデータの処理

 1年に10万件に達することもある膨大なハチの目撃データを整理するため、ザッタラ氏とアルゼンチン、コマウエ国立大学の生物学者マルセロ・アイゼン氏は、まず情報を年ごとに分けた。次にその年に報告されたすべての種を数えた。

 ザッタラ氏は、大切なのは1年間に目撃されたハチの個体数ではなく、種ごとの目撃の回数だと述べている。そうすることで、国ごとの不整合を減らせる。例えば北米では、アフリカなどに比べて多くのデータが収集されるため、目撃数そのものを合計すると、結果に非対称性が生じる可能性がある。

「よく見られる種については大体いつでも報告されているでしょうが、見つけるのが難しい種の場合は、1年間姿が見られないこともあるでしょう」とザッタラ氏は説明する。

 ただし、情報には間違いや偏見が入り込む余地がある。例えば、特定のハチを探している人は、ほかの種を目撃しても無視するかもしれないと、米プロビデンスカレッジの生態学者、レイチェル・ボノアン氏は指摘する。花粉媒介昆虫の専門家であるボノアン氏は、今回の研究には参加していない。

 たとえそうであっても、「この論文の執筆者らは、含まれ得る偏見をうまく処理しています」とボノアン氏は述べている。

 ザッタラ氏も、2万種ものハチの情報を扱っていれば、ミスやエラーが起こることもあると認めている。

市民科学者の活躍

 ハナバチ減少の全体像が示されたことで、科学者による研究や、市民の貢献が進むことをザッタラ氏は望んでいる。

 実際、新型コロナウイルスが世界的に大流行する中、米国では市民の科学ウェブサイトに掲載される活動の数が増えている。とりわけ、昆虫を追跡したものは多い。ザッタラ氏は「多くの目で変化を監視することは、大変役に立ちます」と歓迎する。

「確実に、人びとが昆虫を気にかける時代になりました。素晴らしいことです」とボノアン氏も言う。

「人を惹きつける魅力を備えた、非常に有益なこの昆虫を大切にしようと声を上げることは、環境やほかの花粉媒介昆虫にとっても良い結果をもたらすかもしれません」

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