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水玉模様や「金髪」のシマウマ、種の将来への警告か

  • 2021年2月1日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 シマウマの特徴は黒と白のしま模様である、と誰もが言うだろう。しかし、大きな黒い斑点があったり、「金髪」に淡い色のしま模様が入っていたりと、珍しい色や模様を持つ個体もいる。2019年にはケニアのマサイマラ国立保護区で、研究者たちがこげ茶色の体に白い斑点のある水玉模様のシマウマの子どもを発見した。

 このような逸脱はたいてい、天然の色素であるメラニンの産生量を変化させる遺伝子の変異によって起こる。一般的に、哺乳類ではまれな現象だ。このため、生物学者のブレンダ・ラリソン氏は、ウガンダのムブロ湖付近に生息するサバンナシマウマのうち、推定5%もの個体がしま模様に異常を持つことに強い印象を受けた。

「奇妙な模様のシマウマを観察して、疑問に思いました。こんなにもたくさんいるのは、この群れで近親交配が起こっているからだろうか? と」。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校でシマウマのしま模様の進化を研究するラリソン氏はそう語る。

 ラリソン氏らは謎を解くために、ナミビアのエトーシャ国立公園や南アフリカのクルーガー国立公園を含むアフリカの9つの場所から、変わった毛の模様の7頭を含む、140頭のサバンナシマウマの遺伝子を解析した。ラリソン氏らのこの研究結果は、2020年11月に学術誌「Molecular Ecology」に発表された。

 それによると、孤立した小規模のシマウマの群れでは遺伝的な多様性が低いことがわかった。これは驚くことではない。しかし同時に、そうした孤立した群れでは異常な模様のシマウマが生まれやすいことも明らかになった。変異はやはり遺伝的多様性の低さによって生じていると示唆されたのだ。

 サバンナシマウマは、シマウマ3種の中でもっとも絶滅の危機から遠い。とは言え、その数は2002年以降で25%も減少した。現在はエチオピアから南アフリカにかけて約50万頭が生息している。フェンスや道路、開発によって生息地が分断されたことで、ムブロ湖の個体群のように、狭い土地に押し込められ、群れと群れの間を移動できなくなっているシマウマもいる。

 別の群れから個体が移動してくることで、群れには新しい遺伝子が持ち込まれる。このことは、種の長期的な存続にとって鍵となる。遺伝子の流動が不足すると近親交配が起こり、最終的には不妊や病気、その他の遺伝子疾患につながる可能性があるからだ。

次ページ:難しくなる保全

 分析された変わった模様の個体は7頭のみという今回の研究だが、この結果はサバンナシマウマの行く末について、目に見える警告なのかもしれない、とラリソン氏は言う。

「サバンナシマウマはそれほど絶滅の危機にさらされてはいませんが、こうした遺伝的な問題は、本当に大きな問題が起こる前に現れることが多いのです」と、同氏は語る。

遺伝的ギャップ

 変わった模様のシマウマは捕食者に対して目立ちやすくなる可能性がある。例えば、記録されている水玉模様のシマウマのほとんどは、成体ではなく未成熟個体のものだ。

 しかし、シマウマの群れのなかでは、しま模様だろうが斑点模様だろうが、誰もあまり気にしていないようだ、とラリソン氏は言う。2019年2月に学術誌「PLOS ONE」に発表された研究では、しま模様はサシバエを避けるのに有効らしいことがわかった。

 最も緊急の課題は、サバンナシマウマの遺伝的多様性だと言う。ラリソン氏らは高度なDNA分析技術を用い、近親交配の個体間だけでなく、離れた場所に生息するシマウマの群れの間の違いを綿密に分析した。

「人間の影響により、通常の状況下よりも群れが分化していっている可能性があることがわかりました。人口圧力(人口増加や過剰な食料消費などによって、人口を支える環境が保たれなくなること。人口移動や活動区域の拡大などをもたらす)のせいです」と、ラリソン氏は言う。同氏の研究はナショナル ジオグラフィック協会が支援している。

 言い換えれば、サバンナシマウマは、群れの中では遺伝的に近くなってきているが、群れ同士では、物理的な隔離状態を反映して、遺伝的に遠くなってきているということだ。いずれ新たな亜種が生まれる可能性もある。

難しくなる保全

 それは心配です、と話すのは、南アフリカ国立生物多様性研究所で野生生物の遺伝子を研究するデジレ・ダルトン氏だ。なぜなら、シマウマ保全の主な手段の一つは、人為的な移動だからだ。つまり、ある群れの個体を別の群れに移し、そこで繁殖させる。

 しかし、群れ同士が遺伝的にあまりにも違いすぎると、近親交配の逆のことが起こる。遺伝子が異質すぎて、異常が発生しやすくなるのだ。

次ページ:「待っていてはいけない」

 どのサバンナシマウマの群れが遺伝的に離れて亜種になりつつあるのかについては、相反する研究がある。サバンナシマウマの亜種をどのように定義するか、科学者たちはまだ合意に達していない。

 しかし、ダルトン氏は、亜種を定義することが種を管理する上で決定的に重要だという点では、ラリソン氏らに同意する。

「どの群れを混ぜても大丈夫なのか、どれを分けておくべきなのか、しっかりと把握しておかなければなりません」と同氏は言う。

「待っていてはいけない」

 今回の研究は、今のところ深刻な状況にあるようには見えない、他のアフリカの野生生物も注視すべきだ、と教えてくれている。そう話すのは、ケニアのナイロビにあるアフリカ野生生物財団で種の保全を担当するフィリップ・ムルティ副会長だ。

 例えば、やはりアフリカを象徴する種であるキリンだ。生息地の消失や密猟のために、キリンの個体数は過去30年間で30%減少していて、国際自然保護連合は現在、キリンは絶滅のおそれがある種に指定している。しかし、このことはいまだにほとんど知られていないため、「静かなる絶滅」と呼ばれている。

 ムルティ氏は、サバンナシマウマがキリンと同じ道を辿るのではないかと懸念している。

 だからこそ、シマウマの研究は非常に重要だ。ムルティ氏は語る。「ごく普通の種も、保全の問題を抱えている可能性があると強調することで、これが問題なんだ、待っていてはいけないんだ、と伝えることになります」

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