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車に踏まれても平気な昆虫ほか、頑丈なよろいをもつ動物5選

  • 2020年12月1日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

『ブラックパンサー』や『アベンジャーズ』シリーズなどの映画を見て、登場人物が着るビブラニウムスーツに息をのんだ人もいるだろう。あれは最もクールな防護服だ。

 ただし、動物たちがもつタフなよろいにはかなわない。そうした動物たちの殻、外骨格、うろこなど、実在の“防護服”はどれほど強いのだろうか。

 科学者らが防護服を作る上で実際に「バイオインスピレーション」を得た動物を紹介しよう。

アルマジロ

 銃弾を跳ね返したという話もあるが、アルマジロは防弾仕様の生物ではない。

 アルマジロの甲羅は、皮骨と呼ばれる、皮膚の中で作られる無数の板状の骨でできている。ゆるやかに結合した皮骨が、毛髪や爪、角などを作るたんぱく質であるケラチンの層に覆われた構造により、体の柔軟性が保たれている。国際自然保護連合(IUCN)アリクイ・ナマケモノ・アルマジロ専門家グループのマリエラ・スペリナ委員長は、メールでそう説明してくれた。

「アルマジロの装甲は、捕食者から身を隠すときに潜り込む低い木のとげから体を守っています」とスペリナ氏は言う。しかし、イヌや猛禽類のような捕食者の手にかかれば、このよろいは簡単に破壊されてしまう。アルマジロのよろいは、防弾チョッキというよりは硬いスーツケース程度のものだ。

 それでも、カナダのマギル大学の研究者らは、アルマジロの装甲の秘密を発見した。1枚のガラス板と、同じ厚さの板を小さな六角形に細かく分割して並べたものとを、柔らかな土台の上に置いて針で刺して比べた場合、細かく分割したときのほうが最大で70%も穴が開きにくかった。つまり、無数の小さな皮骨が結合する構造は、アルマジロの装甲の強化に一役買っているというわけだ。

アワビ

 この腹足綱(ふくそくこう)の軟体動物は、「レンガとモルタル造りの構造物」のような貝殻を身にまとっていると、米カリフォルニア大学サンディエゴ校ジェイコブズ工学部のマーク・マイヤーズ氏は言う。マイヤーズ氏は20年前から、米陸軍の防護服開発のために動物をモデルとする研究を行っている。

 アワビの貝殻は、炭酸カルシウムの板が無数に重なり合ってできている。その1枚の厚さは人間の髪の太さの200分の1ほど。本来、炭酸カルシウムは砕けやすいが、アワビの貝殻ではこれがレンガのように積み重なることで、並外れた強度を獲得している。板をつなぎとめている接着剤が、“モルタル”に当たるたんぱく質だ。しかも、たんぱく質のおかげで板同士が横滑りし、受けた衝撃を吸収するため、貝殻は割れにくい。

 マイヤーズ氏らのチームは、アワビの貝殻の構造がどのように機能しているのかをさらに解明することで、より防弾性の高い防護服を軍や警察向けに開発できると期待している。

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ピラルクー

「ピラルクーは、戦艦にも匹敵する魚です」と、マイヤーズ氏はこの巨大な淡水魚を評する。生息地であるアマゾン川流域にはピラニアもいるが、ピラルクー(アラパイマとも呼ばれる)がピラニアの強力な歯を恐れることはない。

 成長すると3メートルにもなるピラルクーのよろいは、しなやかなうろこが互い違いに重なったものだ。それぞれのうろこは主にコラーゲンの層でできており、外側が鉱物の層に覆われていることを、マイヤーズ氏らのチームが発見した。

 うろこの強さを確かめるため、チームはピラニアの歯を工業用の穴開け器に取り付け、筋肉の代わりであるゴムにピラルクーのうろこを固定して「食いつかせ」た。歯はうろこを1層までは貫けたが、ピラルクーのよろいは平均で3層になっている。

 この強さと柔軟さを兼ね備えたうろこも、防護服の改良に取り組む技術者にインスピレーションを与えている。硬い外側の鉱物層は捕食者の歯がうろこを貫通することを防ぎ、弾力のあるコラーゲン層は衝撃を吸収し、亀裂ができづらい。また、鉱物の層の表面が平らではなく、波のようなでこぼこがあるおかげで、曲げやすさと割れにくさが両立している。

コブゴミムシダマシ

 米国南西部とメキシコに生息するコブゴミムシダマシ(Phloeodes diabolicus)は非常に硬く、車に踏まれても死なないほど頑丈だ。標本を留めるピンも刺せず、その硬いよろいを貫通させるにはドリルかハンマーがいるという。危険にさらされると、脚や触角をよろいにある特殊な溝に引き込むため、捕食者は、この強固な要塞の外でフラストレーションを募らせることになる。

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 コブゴミムシダマシの強固なよろいは、キチンという多糖類でできた厚い外骨格だ。圧縮に強いこの外骨格には、水分を集め、運び、貯める機能もあり、脱水状態を防ぐのにも役立つ。

 コブゴミムシダマシの頑丈な外骨格と柔軟な脚は、英航空・防衛企業BAEシステムズが、爆発による損傷に強い軍用車両のサスペンションシステムを開発する際のヒントになった。また、よろいの接合部に、ジグソーパズルのピースが組み合わさったような形状と構造が2対見つかり、10月21日付けの学術誌「ネイチャー」に発表された。航空宇宙産業などへの応用が期待できるという。

センザンコウ

「センザンコウは、ケラチンでできた大きなうろこで覆われています」とスペリナ氏は説明する。センザンコウはアジアとアフリカに生息し、本物のうろこをもつ唯一の哺乳類であり、「うろこのあるアリクイ」の愛称で呼ばれている。うろこのせいで動きにくそうに見えるかもしれないが、実際はそうではない。

 センザンコウの英語名「パンゴリン」は、マレー語で「転がるもの」という意味だが、これにはもっともな理由がある。センザンコウは危険を感じると丸くなり、うろこを装甲のように使うからだ。

 ケラチンでできたうろこは軽いが、ケラチンの結合方式のおかげで非常に割れにくい。またうろこが割れた場合も、その下にある守るべき軟組織から逸れる方向に亀裂が走るようになっている。2017年にセンザンコウのうろこの構造に関する論文を発表した米ノースウェスタン大学の研究者らは、この構造を理解することで、亀裂が逸れて体側に達しない防護服の開発に道が開けるのではないかと述べている。

「ライオンでさえセンザンコウを仕留めることはできません」とマイヤーズ氏は言う。簡単な獲物ではなさそうだ。

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