1350年に完成した「富春山居図」は、伝統的な中国山水画のお手本だ。富春江と川沿いの山並みを、流れるように目で旅するこの絵巻物は、広げると実に6メートル以上になる。
この作品を描いたのは、「元末四大家」と称される画家の一人、黄公望だ。浙江省桐廬(とうろ)県にある富春江沿いに3年間、独りで暮らしてこの傑作を仕上げた。以来、上海の南西240キロにあるこの静謐な土地は、中国の芸術家や作家たちのインスピレーションの源であり続けてきた。
2021年、桐廬県は再び芸術の世界でスポットライトを浴びることになるだろう。2020年に予定されていた「桐廬アートトリエンナーレ」が、新型コロナウイルスの影響による延期を経て、2021年春に開催される予定だ。草原や川沿いにモダンアートが展示されるこの芸術祭は、地方ツーリズム活性化につながることも期待されている。芸術祭のキュレーターでありディレクターでもある北川フラム氏は、日本の越後妻有アートトリエンナーレを創始した人物だ。同氏によると、「桐廬」という言葉そのものが、この芸術祭の精神を体現していると言う。
「この季節は富春江の霧と山にかかる雲が混ざり合います。それはまさに私が若い頃に見た、中国の山水画のような世界です」
関連記事:
テクノロジーと伝統が同居する都市 貴州省、中国
麺大国・中国 驚きの麺料理バリエーション
世界遺産、中国の要塞住宅「福建土楼」
※「いつか訪れたい旅先25 2021年版 再び旅立つ日を信じて」ほか、旅の記事は「旅・文化の記事一覧」でまとめてご覧いただけます。