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パンデミック続く2020年末 米国では6人に1人が飢餓の懸念

  • 2020年11月30日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 2020年11月半ばのある朝、米テキサス州に拠点を置くノース・テキサス・フードバンクのトリシャ・カニングハム会長は早い時間から、ダラス南部の大きなイベント広場にやってきた。4列の車列が、会場入り口からダラス中心部の超高層ビル群のほうまで、数キロにわたって延びている。前の晩からやってきて、車で夜を明かした人たちもいる。サンクスギビング(11月末の感謝祭)をしのぐための食料配布を待っているのだ。

 米国最大の食料支援団体である「フィーディング・アメリカ」によれば、20年末までに5000万以上の人々が食料不足に陥るおそれがある。これは、米国人の6人に1人、子どもの4人に1人に当たる。2019年に比べて50パーセント近くの増加だ。米ノースウェスタン大学が6月に行った調査によれば、食料不足は全米で倍増し、子どものいる世帯では3倍に拡大している。

「失業した」が大半に

 フィーディング・アメリカのフードバンクや食料庫のネットワークは、10月に5億4800万食分の食料を配布した。これは、パンデミック前の平均の月間配布量の52パーセント増しだ。11月はホリデーシーズンが近づくので、さらに増えるかもしれない。

 ダラスのイベント広場のゲートが開くと、ボランティアの人々が車列を誘導し、7キロ近い生鮮食品が入った箱、保存食品、冷凍の七面鳥、パンなどを配布した。いつもなら、ノース・テキサス・フードバンクの祝日向けの無料配布を受けるのは500人ほどだ。ところが、今年はこの日だけで8500人に、220トンを超える食料が配布された。

 パンデミック前は、フードバンクにやってくる人々の大半が、職にはついているものの生活のやりくりに多少の援助を必要とする人々だった。それが今では、カニングハム氏に「失業した」と告げる人が大半だというのだ。彼女は、今回の食料配布を受けた人の3分の1が、今まで食料援助を受けたことがない人たちだと考えている。

「ここに来る人たちは、今まで経験したことのない食料不足に直面しています」と彼女は話す。

 パンデミック前、ノース・テキサス・フードバンクが食料を配布している13の郡における食料不足は、2008年の景気後退以降で最も低い水準に抑えられていた。ところが、現在の食料配布数は約3分の1近く増加している。需要に答えるため、毎月、新たに90台の貨物トラックを追加して食料を搬入している。全米各地の都市、市町村、農村部でも同様の状況で、人種の多様性が高い地域では特に著しい。

次ページ:目に見える格差の広がり

アフリカ系、先住民、ヒスパニック系に影響大

「食料不足もパンデミックも、人種と民族の格差を物語っています」。こう話すのは、フィーディング・アメリカの調査部門担当責任者、エミリー・エンゲルハルト氏だ。「食料不足で一番不利な状況にあった人々と場所が、現在、最も深刻な打撃を受けています」

 一番困窮しているのは、アフリカ系かアメリカ先住民が過半数を占める地域だ。食料不足が最も深刻と推定される25の郡のうち、白人が過半数を占めているのはケンタッキー州の4つの郡だけだ。

 ダラスの車列の光景は、世界大恐慌の際、パンの配給を求めて延びた長蛇の列を連想させる。あの国家的危機が、ソーシャル・セキュリティ(米国の社会保障制度)、失業保険、住宅支援制度など、連邦政府によるセーフティネットを生んだ。世界大恐慌は「厳格な個人主義から、危機に対処するためのもっと協力的な方法へと、社会の姿勢が大幅に転換するきっかけとなりました」と、スタンフォード大学の歴史学教授、デビッド・ケネディ氏は言う。

 だが、あれから1世紀近く過ぎても、数千万人の米国人が食料不足に陥ってしまう大きなひずみは存在する。フードバンクは、米国民に食料配布が続けられるように、連邦政府が新たな刺激策を打ち出すことを期待している。

 パンデミック前のノース・テキサス・フードバンクは、2025年までに9200万食の配布を目標としていた。だが、今年6月までに、この目標を超える配布がすでに行われた。カニングハム氏は、経済回復の見通しに基づいて、今後2年間は現在の規模の食料配布が続くものと予測している。最近、このフードバンクでは初めて食料が底をついた。

「フードバンクは、格差を補うための補助的な機能として作られました」とカニングハム氏。だが、今では数百万の米国人の生存に不可欠な存在となっている。カニングハム氏は続けた。「現在、私たちのコミュニティーには、多くの格差が生まれているのです」

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