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謎の高速電波バースト、発生源は「マグネター」

  • 2020年11月7日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 2020年4月28日、わずか1000分の1秒という一瞬の間に、強力な電波バーストが地球に押し寄せた。天文学者たちは、電波望遠鏡がとらえたこの奇妙な信号をたどり、発生源となる天体を突き止めた。宇宙の謎の一つが、ついに解き明かされるかもしれない。

 11月4日付けで学術誌「ネイチャー」に掲載された3編の論文によると、この信号の正体が「高速電波バースト」であることが国際研究チームによって特定された。高速電波バーストは、持続時間が数ミリ秒以内の非常に激しい電波フラッシュである。同じようなバーストは以前から検出されているが、いずれも銀河系外からのものだった。研究者たちは長年、高速電波バーストが発生するしくみに関心を寄せており、恒星の爆発という説から宇宙人の仕業とする説まで、さまざまな憶測が飛び交っていた。

 そして今、高速電波バーストの発生源の少なくとも一つが、「マグネター」と呼ばれる恒星に似た奇妙な天体である可能性が高いことがわかった。マグネターは大きな恒星が爆発したあとに残る若い中性子星の一種で、非常に強力な磁場をもつ。

 今回の論文の一つを執筆した米カリフォルニア工科大学の大学院生クリストファー・ボチェネク氏は11月2日の記者会見で、「初めてデータを見たとき、興奮のあまり固まってしまいました」と語った。

 今回の信号は、発生源となる天体が特定された最初の高速電波バーストとなった。「この発見により、ついに高速電波バーストの起源に迫れるようになりました」と、南アフリカ、ケープタウン大学の天体物理学者アマンダ・ウェルトマン氏は言う。なお、同氏は今回の研究に関与していない。

暗闇の中のバーストを探す

 高速電波バーストという現象は2007年に発見された。一瞬の出来事のため研究が難しく、当初は、電子レンジなどの地球上の発生源からの信号を誤認しているのではないかと疑う科学者さえいた。

 2013年までにさらに4つのバーストが発見されたことで、これが宇宙から来ていることは確実になったが、謎は深まる一方だった。その3年後、天文学者たちは、高速電波バーストを繰り返し発生している天体を発見し、それが地球から26億光年以上離れた銀河にあることを特定できたと発表した。天文学者たちは現在までに、100個以上の高速電波バーストを発見しており、そのうちの約20個が繰り返しバーストを発する「反復型」である。

 バーストの持続時間は非常に短く、発生源はあまりにも遠方にあるため、天体物理学者たちは、この強烈な電波バーストの発生源の特定に苦労してきた。しかし4月27日、まず米NASAの2基の宇宙望遠鏡が、天の川にあるSGR 1935+2154というマグネターから発せられるX線とガンマ線を検出。翌日、地上の電波望遠鏡が同じ天体からの電波信号を検知した。

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 マグネターと同じ領域からくる電波バーストを最初に検出したのは、金属の巨大なハーフパイプのようなアンテナからなるカナダのCHIME望遠鏡だった。CHIMEのスタッフはすぐに世界中の天文学者にアラートを送り、この天体に望遠鏡を向けるように促した。

 この信号は、米国の電波望遠鏡STARE2でもとらえられた。STARE2の設計者で、今回の分析を主導したボチェネク氏によると、この電波バーストは非常に強烈で、理論的には4G携帯電話の受信器でも拾えたはずだという。

 X線バーストと電波バーストが同じ小さな領域でとらえられたことが、高速電波バーストとマグネターを強く結びつけた。この謎の信号と特定の天体が結び付けられたのは今回が初めてだ。

謎のバーストを解読する

 マグネターからの信号は、銀河系内で記録された電波バーストの中では最もエネルギーが高かったが、銀河系外からくる典型的な電波バーストに比べるとずっと弱く、約1000分の1のエネルギーしかなかった。

 研究者は、弱い電波バーストは強い電波バーストよりも頻繁に発生すると予想しているが、遠すぎるものは検出できないと言う。新しい研究を考え合わせると、はるか彼方からくる電波バーストの少なくとも一部もマグネターから来ていることが強く示唆される。

 カナダ、マギル大学の博士課程研究員であるCHIMEのダニエル・ミチリ氏は記者会見で、「すべての高速電波バーストがマグネターから来ていると結論づけることはできないと思いますが、マグネターが高速電波バーストの発生源であるとする私たちのモデルはかなり有望です」と語った。ウェルトマン氏は、「最も明るい電波バーストの発生源はマグネター以外の天体かもしれません」と補足している。

 今回のデータは、マグネターが高速電波バーストを発生させる仕組みについても大きなヒントを与えてくれる。米ネバダ大学ラスベガス校の天体物理学者ビン・チャン氏は、「ネイチャー」に掲載されたレビューの中で、二つの説得力あるシナリオを概説した。一つは、マグネターの表面から放出された粒子のフレアが周囲の破片と超高速で衝突して、高度に磁化された高温の渦が発生し、X線と電波の両方を放出するというもの。もう一つは、マグネターの非常に強力な磁力線が絡み合って切断され、その過程で膨大なエネルギーが放出されることで高速電波バーストが生じるというものだ。

 しかしチャン氏らは、高速電波バーストの背後にある条件がレアであることにも気づいた。4月28日のバーストの数時間前、彼らのチームは、中国の500メートル球面電波望遠鏡(FAST)でマグネターを観測していた。この観測中にマグネターから29回のX線フラッシュが出ていたにもかかわらず、FASTはマグネターからの高速電波バーストを一つも観測できなかった。マグネターがまれにしか高速電波バーストを放出しないなら理にかなっていると、チャン氏は記者会見で指摘した。

 世界の望遠鏡を結ぶネットワークは、銀河系の内外からくる強烈な電波をもっと多くとらえるようになるだろう。そして、電波バーストが定期的に観測できるようになれば、科学者たちはこれらを利用して「宇宙のかんしゃく」の原因を説明する多くの理論を取捨選択できるようになる。「それこそが、質の良い誠実な科学の美しいところです!」とウェルトマン氏は言う。

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