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【動画】NASA探査機、小惑星ベンヌの岩石を採取

  • 2020年11月2日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 NASAの探査機オシリス・レックス(OSIRIS-REx)は、地球から3億km以上離れた場所で、小惑星ベンヌの岩石サンプルを採取し、回収カプセルに格納することに成功した。

 オシリス・レックスが小惑星ベンヌへのタッチダウンを成功させたのは10月20日。数日後には、採取した岩石サンプルの一部がサンプル採取装置「TAGSAM(Touch-And-Go Sample Acquisition Mechanism)」からこぼれ出していると発表された。サンプル採取装置のフラップ(蓋)が閉まらなくなるほど大きい石を吸い込んで、隙間からサンプルが漏れる状態になっていたのだ。

 担当チームは、サンプル採取装置にかかる負担を最小限にするために、予定していたいくつかの操作やテストを中止。さらに装置内のサンプルを保護するため、装置を回収カプセル内に格納する作業を前倒しで行い、10月28日に完了した。

 格納に成功したことで、太陽系が誕生した頃の岩石や塵などが2023年に地球に届けられることが確実になった。探査機が小惑星からのサンプル採取に成功したのは世界で3例目、NASAとしては初めてである。

 オシリス・レックスが採取した原始太陽系の砂や石は、太陽系の惑星や、もしかすると地球上の生命が誕生した経緯を明らかにする可能性がある。科学者たちは、生まれたばかりの太陽系の成分を調べることで、地球とその上にあるすべてのものを生み出した45億年のプロセスを解明したいと考えている。

 オシリス・レックスの主任研究員である米アリゾナ大学月惑星研究所のダンテ・ローレッタ氏は、作業を前倒しすることに伴うリスクを認めたうえで、サンプルを速やかに格納するのが最も堅実なやり方だったと強調した。

「サンプルを回収カプセルに入れて封をしてしまえば、何が入っているにせよ、すべて地球に戻ってきます」と、氏は10月27日に語った。

 小惑星ベンヌがオシリス・レックスに与えた試練は、石が詰まることだけではない。ベンヌの重力は非常に弱いうえに、岩に覆われた表面の足場は悪い。技術者たちは探査機を小惑星の表面に降ろすために、ミッションの途中でバックアップの自動航行ソフトに切り替えるなど、複雑な制御を強いられた。

次ページ:オシリス・レックス、ついにサンプルを採取

 2016年に打ち上げられたオシリス・レックスは、2018年12月31日から今回のタッチダウンの直前まで、ベンヌのまわりを周回して、表面の地図を作ったり鉱物組成を調べたりしていた。

 10月20日、探査機はついに小惑星表面に急降下し、ビルほどの大きさの巨石を避けながら、クレーター内の目標地点にタッチダウンした。目標地点は「ナイチンゲール」という愛称で呼ばれていて、その広さは車2台分の駐車スペースほどしかない。ちなみにベンヌのランドマークの多くは鳥にちなんだ愛称がつけられていて、「ベンヌ」自体も、エジプト神話のサギの姿をした神の名前にちなんだ名前である。

 サンプル採取装置は長さ3m強のバネのついたアームの先端に、ロボット掃除機をつけたような形をしている。ベンヌの表面にそのヘッド部分を押しつけてから高圧の窒素ガスを噴射し、この風でベンヌの表土を吹き飛ばし、その際、深さ50cmほどのくぼみができた。

 吹き飛ばされた表土の破片がガスと一緒にサンプル採取装置の中に入ると、フラップが閉じられて密閉されるはずだった。しかし、直径2cm以上の大きな石がいくつかあったことから、フラップの一部が閉じなくなってしまった。

 10月22日、オシリス・レックスのミッション支援を行う、米ロッキード・マーティン・スペースの担当者は、数十グラム程度のサンプルがフラップの隙間から漂い出ていったと見られる画像を、探査機から受け取った。

「食卓の塩入れを振ったような状態です」とローレッタ氏は言う。

 幸い、今回の漏れ出しはミッションを危うくするようなものではなさそうだ。10月27日の時点で、サンプル採取装置のヘッド部分の画像から判断する限り、少なくとも400グラム、もしかするとそれ以上の物質を確保できているだろうとローレッタ氏は言う。採取装置のレプリカを使って地球上で行った実験では、10月20日の出来事に最も近いシナリオでも、少なくとも1200グラムの破片が閉じ込められていた。「サンプル採取装置のヘッドは満杯に近い状態になっていた可能性が高いと思われます」

 オシリス・レックスは2021年3月に地球への帰途につき、2023年9月に、地球のすぐ近くを通過しながら、貴重なサンプルを含むカプセルを米国ユタ州の砂漠に落とす。研究者たちはそのとき初めて、探査機がどのくらいの量のサンプルを採取できたのかを知ることになる。地球にサンプルを投げ落としたオシリス・レックスをどうするかはまだ決まっていないが、その後何年も太陽系の探査を続けられるだけの良好な状態にあるはずだ。

 ローレッタ氏は10月21日の記者会見で、「あとはサンプルを無事に地球に持ち帰るだけです。そうすれば、NASAとの約束を果たせたことになります」と語った。「サンプルが地球に届いたら、私たちの研究室に運び込み、太陽系の形成と地球に生命が存在できる理由をめぐる、根本的な疑問に答えを出したいですね」

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