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米国内で初めてオオスズメバチの巣を発見、働きバチを追跡

  • 2020年10月28日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 米国内で初めて、使用中のオオスズメバチの巣が発見された。オオスズメバチは米国にとって侵略的外来種(在来生態系に大きな影響を及ぼし得る外来生物)であり、ちまたでは「殺人スズメバチ」と呼ばれて恐れられている。

 巣は10月22日、西海岸のワシントン州の町ブレインで見つかった。木の空洞の中に作られており、24日にワシントン州農業局(WSDA)の昆虫学者らによって駆除された。

 今回の発見は、この世界最大のスズメバチが米国に定着するのを防ぐうえで、重要な節目になると科学者らは言う。

「(巣が)見つかったと発表できるのを大変うれしく思います」とWSDAの昆虫学者スベン・スピシガー氏は23日の記者会見で語った。自分たちの追跡技術が樹木の密生する同地域でうまく機能するかどうか、実際に巣を見つけるまで確信を持てなかったと氏は言う。

 WSDAは23日、公式ツイッターに「噂は本当でした。昨日夕方、当局の昆虫学者が国内で初めてオオスズメバチの巣を見つけ出しました」と投稿した。

 オオスズメバチは2019年の秋にワシントン州で初めて目撃され、国内に動揺が広がった。食欲旺盛な捕食者であるオオスズメバチは、特にミツバチにとって非常に危険であるうえ、ワシントン州だけでなく米国西海岸全域にまで拡散する可能性があるとWSDAの昆虫学者クリス・ルーニー氏は警鐘を鳴らす。

 オオスズメバチの分布拡大を防ぐには、働きバチを1匹ずつ殺すのではらちが明かないとルーニー氏は言う。そこでWSDAの科学者らは、協力者とともにワシントン州北西部の各所に数千個のわなを仕掛けた。ハチを生きたまま捕らえ、追跡装置を付けて巣を見つけようというのだ。

 今回の発見につながったのは、2020年10月21日と22日にビン入りのエサにつられてわなにかかった合計4匹の働きバチだった。そのうちの3匹のメスの働きバチに無線追跡装置を装着したところ、1匹から巣の位置が特定された。オオスズメバチは通常は地中に巣を作るが、この巣は私有地に立つ木の空洞の中にあった。

次ページ:未発見の巣はいくつあるのか?

 科学者らを巣に導いてくれたハチは、わなから解放された当初、1時間ほど飛び回ると葉の上でじっとしてしまった。そこでこのハチにぶどうゼリーを与えたところ「元気を取り戻したようです」とスピシガー氏は振り返る。その後、このハチを数百メートル追跡して森に入り、羽音のする場所を探すと巣が見つかった。

 2020年の晩春に3匹の女王バチが見つかったことで、オオスズメバチが越冬して生き延びていたことに科学者らは初めて気がついた。同地域では夏以降も数匹のスズメバチが捕獲されている。これらの発見により、2019年秋に巣が作られ、そこから複数の女王バチが生まれ、新たな巣を作っているらしいことがわかっていた。

未発見の巣はいくつあるのか?

 他にもまだ見つかっていない巣があるのはほぼ間違いないとスピシガー氏は言う。同じ町の別の場所でもオオスズメバチが目撃されているが、今回発見された巣からは遠く、7月に生きたままのオオスズメバチが初めて捕獲されたバーチベイの町に近い。そのため今回とは別の巣の存在が示唆される。

 氏によれば、科学者らはわなの改良と監視を続けている。他にも生きた働きバチが見つかれば、追跡装置を装着して巣の特定を目指すという。

 今回の巣からすでに女王バチが生まれ、拡散している可能性は低いが、ゼロではないため、早急に駆除しなければならなかったと氏は話す。「巣があることがわかったからには、直ちに取り除くべきです」

 働きバチは冬の間に死んでしまうが、新しく生まれた女王バチが拡散して来年の春に新しいコロニーを形成する可能性があるため、科学者らはそれを防ごうとしている。オオスズメバチの巣には約800匹もの働きバチがすみ、200〜300匹の女王バチが生まれることもある。

パニックは禁物

 いわゆる「殺人スズメバチ」のニュースは全米を駆け巡っているが、このハチ自体はまだワシントン州北西部にしかいないと科学者らは強調する。オオスズメバチが定着して拡散すれば、ミツバチや在来種のハチに深刻な危険をもたらすが、まだ慌てる必要はないとルーニー氏も呼びかける。

 5月に同州でオオスズメバチの死骸が発見されたというニュースが流れてから、このハチの目撃談や、スズメバチに効く殺虫剤の検索回数が急増した。だがこのような過度の反応は気がかりだと氏は話す。花粉を媒介する無害な昆虫が、巻き添えになって殺されかねないからだ。

「通常、一般の人が心配する必要はありません」とスピシガー氏は言う。巣に近づかない限り、まず襲われることはないからだ。

 やるべきことは山積みだが、オオスズメバチがワシントン州に長期定着するのを防ぐ機会はまだあるとスピシガー氏は確信する。「根絶は可能だと、用心しつつも楽観的に構えるべきです」

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