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雪の中のチーターを撮影、アフリカで2例目

  • 2020年9月14日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 雪の中のチーターをとらえた珍しい写真が撮影された。場所は南アフリカ共和国でも特に寒いロッゲ・クルーフ自然保護区、撮影したのは動物写真家のカーステン・フロスト氏だ。

 8月の雪の中、フロスト氏は発信器付きの首輪をしたメスのチーターを2日にわたり追跡していた。吹き付ける雪の中で目を凝らしていると、チーターの顔がちらりと見えた。体にも雪がかかり、一面真っ白の景色に溶け込んでいた。

「妙に現実離れした感覚がありました」と、フロスト氏はナショナル ジオグラフィックに対してメールで語った。「これはわずかな人しか経験したことのない瞬間であり、私にとって決して忘れられない自然の中での瞬間になると思いました」

 同氏が撮影したのは、モナと名付けられたメスと2頭のオス。アフリカのチーターが雪の中で撮影されたのは今回がおそらく史上2例目だろうと、非営利団体「Endangered Wildlife Trust」でチーターの再導入を管理するビンセント・ファン・デル・メルベ氏は語る。氏によると、最初の例は2014年に同氏のチームが南アフリカ、カムデブー山動物保護区で撮影したものと言う。

 どちらの写真においても、写ったチーターは私営の動物保護区に再導入された個体だ。再導入とは、元々その地域に生息していた(が失われてしまった)動物を、ふたたび人為的に導入すること。減少する種を保護しつつ、観光資源にもできることから、動物保護戦略の鍵になると考えられている。チーターは、野生では約7000頭を残すのみで、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは危急種(vulnerable)に指定されている。

 チーターは東アフリカのサバンナに固有のものだと決めてかかるなど、「我々は、カテゴリー分けをしがちです」とファン・デル・メルベ氏は話す。野生動物を移住させる同氏の活動の一部は、ナショナル ジオグラフィック協会の資金提供を受けている。今回の写真は「チーターには想像以上に高い適応力がある」ことを示していると、同氏は言う。

 チーターは、アフリカに入植した人々によって、1960年代までに個体数の95%が命を落としたとされる。だがそれ以前は、標高3000メートルの山地から沿岸の森林、夜間は気温が氷点下に下がる砂漠(カラハリ砂漠など)に至るまで、アフリカ大陸の大部分に生息していた。

 この数十年で、ファン・デル・メルベ氏のような自然保護活動家は、約60頭のチーターを様々な動物保護区に移住させてきた。ロッゲ・クルーフ自然保護区(広さ184平方キロ)にオス2頭とメス2頭が放されたのは、2018年のことだ。

次ページ:「こんな光景は見たことがありません」

 南アフリカは、チーターの数が増えている数少ない国の1つだ。そこで、2017年、ファン・デル・メルベ氏らのチームは、南アフリカのチーターを約2600キロ離れた国マラウイに移住させた。マラウイでは、チーターは1980年代に絶滅している。

「我々の目標は、数が増えた分のチーターをアフリカの他の地域に再導入することです」と同氏は話す。

「こんな光景は見たことがありません」

 ロッゲ・クルーフ自然保護区は2017年に設立された。ここは5頭の成体のチーターとその子孫が生息するのに十分な広さがあり、チーターの大好物であるスプリングボックが豊富にいると、ファン・デル・メルベ氏は言う。

 しかし、マイナス15℃まで下がることもあるこの地域の気温にチーターが耐えられるかどうか、当初は心配していた。「飢えた場合には、人を襲うかもしれません」と同氏は話す。

 そこで、ファン・デル・メルベ氏は英国植民地時代の古い記録を掘り起こし、かつてハンターが同地域でチーターを撃ったことがあるのを確認した。それはつまり、ロッゲ・クルーフがかつてはチーターの自然な生息域の一部だったということであり、現代のチーターも雪に適応する能力を生まれつき持っている可能性が高いことを示唆していると同氏は言う。

 これまでのところ、ファン・デル・メルベ氏の挑戦は、うまくいっている。4頭のチーターはすべて生き残っており、1頭のメスはこの7月(南半球では真冬)に3頭の子を産んだ。

 フロスト氏の写真を見て、「美しい。こんな光景は見たことがありません」と話すのは、野生生物保護協会(WCS)の大型ネコ科動物保護プロジェクト「Big Cats Program」のエグゼクティブ・ディレクターを務めるルーク・ハンター氏だ。

 同氏は、歴史的にはチーターがロッゲ・クルーフに生息していたことに同意しつつも、寒くて乾燥した環境は「素晴らしい」生息地ではなかったと言う。

次ページ:アフリカのアイスキャット

 この地域は、気候や地形がイラン高原中央部に似ていると、同氏は指摘する。イラン高原中央部には現在、野生下の最後の亜種であるアジアチーターが約50頭生息している。アジアチーターは、かつては中央アジア全域に広く分布し、東はインドにも生息していた。

 定期的に雪を経験するイランのアジアチーターは、冬には厚い毛皮が生えてくるとハンター氏は述べる。北半球にある動物園のアフリカチーターも同じだ。

「雪の中のチーターを撮ったという事実は、印象的で素晴らしいことですが、それほど意外なことではありません」とハンター氏は話す。

 チーターは、豪雪にはうまく対処できない可能性が高いと、同氏は注意を促す。体温調節が苦手な子どもはなおさらだ。ロッゲ・クルーフのように数センチ積もるくらいが限界ではないかと同氏は言う。

アフリカのアイスキャット

 このような素晴らしい光景を自分の目で見たい人は、ロッゲ・クルーフを訪れることが可能だ。ほとんどのアフリカの自然保護区と同様、ここも新型コロナ禍の観光への影響で苦しんでいる、とファン・デル・メルベ氏は言う。

 ロッゲ・クルーフは、ライオンやヒョウなど、人の脅威となる捕食者がいない数少ない自然保護区の1つだ。このため、チーターの邪魔をしないよう配慮した距離からではあるが、観光客は歩いて彼らを見ることができる。

 ロッゲ・クルーフ自然保護区で最年長のメスであるモナは特に、周りに人がいてもリラックスしている。「人間など気にもしていないだけですが」とファン・デル・メルベ氏は笑う。

 写真家のフロスト氏は、このチーターたちを「アフリカのアイスキャット」と呼んで夢中になっていて、野生生物のドキュメンタリーのために撮影しに戻りたいと考えている。

 フロスト氏は語る。「チーターは、冬の雪に耐えてきました。それがほとんど記録に残っていないという事実は、自然が多くの秘密を抱えているということを示しているのです」

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