サイト内
ウェブ

初の有人商業宇宙船、いよいよ打ち上げへ、米スペースX

  • 2020年5月27日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 米国の民間企業スペースXによって、有人宇宙飛行の新時代が始まろうとしている。今週、米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士2人が、同社のカプセル型宇宙船「クルードラゴン」に搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)を目指す。

 5月27日に予定されていた打ち上げは天候不順のため、米東部時間5月30日午後3時22分(日本時間5月31日午前4時22分)に延期された。

 今回は「デモ2」と呼ばれる試験飛行の位置づけだ。米国の発射台から有人宇宙船が打ち上げられるのは9年ぶりだ。さらに、民間の宇宙開発企業が設計したロケットと宇宙船を用いて人類が宇宙空間へ行くのは、史上初めてのこととなる。

「スペースX社はNASAにとって長年にわたる素晴らしいパートナーであり、これまでにもISSへの物資補給などを担ってくれました。そして間もなく、宇宙飛行士の輸送も任務に加わります」。NASAのジム・ブライデンスタイン長官は記者たちとの電話会見でそう話した。「とても心躍る時代です」

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)が続いているため、NASAは今回の打ち上げを、現場ではなく自宅から見物するよう呼びかけている。NASAの宇宙飛行士ダグラス・ハーリー氏とロバート・ベンケン氏が臨むこの歴史的ミッションは、NASAおよびスペースX社によってライブ中継され、日本時間の5月31日午前4時から米ABCニュースとナショナル ジオグラフィックがYouTubeで生配信する。

 もちろん、天候や整備などの問題で発射が延期される可能性はある。次の打ち上げ予定日5月30日が再び延期された場合、さらに予備日として、米東部時間の5月31日および6月1日が設定されている。

次ページ:スペースシャトルのベテラン2人が再びISSへ

スペースシャトルのベテラン2人が再びISSへ

 今回のデモ2ミッションは、米フロリダ州にあるケネディ宇宙センターの第39A発射施設から打ち上げられる。ここは、人類初の月面着陸を成功させたアポロ11号の打ち上げや、スペースシャトルの最終飛行「STS-135」といったミッションでも利用された。しかし今回のミッションでは、NASAをはじめとする宇宙機関が宇宙へのフライトを民間企業から購入するという点で、今までにない方法で人類を軌道上に送り出すことになる。

 現在53歳のハーリー氏と49歳のベンケン氏は、新しいタイプの宇宙船に乗り込む最初の人間になる。両氏は2015年にNASAの「商業乗員輸送計画」のメンバーに選抜された。元々、ハーリー氏は米海兵隊、ベンケン氏は米空軍のテストパイロットだった。2人とも宇宙飛行士を妻に持ち、2000年に「宇宙飛行士グループ18」のメンバーとしてNASAに入局した同期でもある。

「最新型の宇宙船に乗るなんて、おそらくテストパイロット学校に通う全ての学生の夢でしょう。私は幸運にも、良き友人とともにその機会を得ることができました」。ベンケン氏は、ハーリー氏と同席した記者会見でそう話した。

 2人はかつて、ISSのパーツである生命維持装置や科学実験室、修理用双腕ロボット「デクスター」などを軌道に運ぶミッションで活躍した。しかし、最新型の船体による有人飛行は米国史上、まだ5回目のことだ。「マーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画、そしてスペースシャトル計画がそうでした。そして今度は、スペースX社の『ファルコン9』ロケットと『クルードラゴン』カプセルでそれをやるのです」とブライデンスタイン長官は述べた。

 記者たちとの電話会見で2人の宇宙飛行士は、スペースX社と協力してクルードラゴンの内装を洗練させたと話した。クルードラゴンには、スペースシャトルのコックピットを埋め尽くしていたようなジョイスティックやボタン、ノブなどはなく、タッチスクリーン型のコントロールパネルが採用されている。

 ベンケン氏はスペースシャトル搭乗を2回、船外活動を6回こなしたベテランで、クルードラゴンとISSのランデブー(接近)、ドッキング(結合)、アンドッキング(分離)を担当する。ハーリー氏は、スペースシャトルの最終ミッションだった2011年7月のSTS-135を含めてパイロットを2回務めた経験があり、デモ2ミッションでは船長を務める。

「私は9年前、スペースシャトル計画の終わりにここ(ケネディ宇宙センター)に降り立った4人の宇宙飛行士の1人でした」。20日、宇宙センターに到着したハーリー氏はそう話した。「米国での宇宙船打ち上げが再開するにあたって、ここにいることができるというのは、本当に謙虚な気持ちになります」

次ページ:米国による自力の有人飛行、ついに再開

米国による自力の有人飛行、ついに再開

 スペースシャトル時代を終わらせたNASAは、引き続きISSに宇宙飛行士を送り届けるべく、民間の宇宙開発企業と提携した。また、米国製の商業宇宙船が用意できるまでは、ロシアの宇宙船「ソユーズ」の座席を購入し、飛行士をISSまで運んでもらうことにした。

 2014年、NASAは低軌道用の宇宙船の設計、組み立て、打ち上げのために、ボーイング社と42億ドル(約4500億円)、スペースX社と26億ドル(約2800億円)の契約を結んだ。

「今回の打ち上げは、低軌道飛行を商業化するうえでの大きな一歩です。今後不可欠となる低軌道飛行経済を形成するうえでもそうですし、そこではNASAも多くの顧客の一つです」とNASAのISSプログラムマネージャー、カーク・シャイアマン氏は話す。「より多くの米国人が、ひいてはより多くの人類が、宇宙の実験室に行くための次なる一歩なのです」

 スペースX社のクルードラゴンにとって、今回の打ち上げは2回目の試験飛行だ。2019年3月に実施された1回目の軌道試験飛行では、無人のカプセルがISSとわずかな時間ドッキングして、地球に帰還し大西洋に降りた。今回は、ベンケン氏とハーリー氏が別のクルードラゴンに乗り込み、ISSに向かって飛行する。

 両氏はISSに到着後、1カ月〜110日間滞在し、科学的研究にあたっている3人の飛行士の活動を手伝うことになる。ISSで両氏を待っているのは、NASAの宇宙飛行士クリス・キャシディ氏、ロシアのアナトーリ・イヴァニシン氏とイヴァン・ヴァグナー氏だ。クルードラゴンがベンケン氏とハーリー氏を乗せて地球に戻るときには、パラシュートで米フロリダ州ケープカナベラル近くの大西洋上に着水することになる。

「心臓がここまで上ってきています」と、打ち上げに先立つ記者会見で自分の喉を指しながら、スペースX社のグウィン・ショットウェル社長兼最高執行責任者(COO)は言った。「ボブとダグがISSから無事に戻ってくるまではこのままでしょう」

 船長を務めるハーリー氏は、自ら建設に関わったISSを再訪することを何より楽しみにしている。特に、観測用のガラスパネル製ドーム「キューポラ」が楽しみだという。そこからは、大きくて美しい地球の姿を眺めることができる。

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
(C) 2020 日経ナショナル ジオグラフィック社