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最古の「現生鳥類」の化石を発見、6670万年前

  • 2020年3月24日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 今から20年前、アマチュア化石ハンターのマールテン・ファン・ディンター氏は、ベルギーとオランダの国境付近で、トランプのカード一組ほどの大きさの岩石を採集した。そして現在、どこにでもありそうなこの小さな石に、恐竜と同じ時代を生きた鳥の、小さいけれどほぼ完全な頭蓋骨が含まれていることが明らかになった。いわゆる鳥である「現生鳥類」のグループに属する化石としては最古のものだ。

 3月18日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された論文で、この鳥は「アステリオルニス・マーストリヒテンシス(Asteriornis maastrichtensis)」と命名された。頭蓋骨と脚の骨の分析から、カモとニワトリの特徴を併せ持っていたことが判明し、それらの共通祖先との関連が示唆される。

 分析にあたった国際研究チームの科学者たちは、親しみを込めてこの鳥を「ワンダーチキン」と呼んでいる。この鳥が生きていたのは今から6670万年前のことで、それから70万年後には地球に隕石が衝突し、すべての非鳥類型恐竜を絶滅させることになる。

「非常に興味深く、すばらしい発見です。鳥類の進化の過程のほとんど知られていない部分に新しい知見をもたらすものです」と、ドイツのフランクフルトにあるゼンケンベルク研究所の鳥類学者で鳥類進化の専門家であるゲラルト・マイヤー氏は評価する。なお、同氏は今回の研究には参加していない。

 アステリオルニスは脚の長い鳥で、おそらく飛ぶことができ、白亜紀末期のヨーロッパの海岸に生息していた可能性がある。当時は暖かく浅い海に島々が点在し、今日のバハマ諸島のような気候だった。

次ページ:頭蓋骨の3D画像、驚きの保存状態

ティラノサウルスと同じ時代を生きた鳥

「恐竜時代に生息していた鳥について、保存状態の良い頭蓋骨が見つかったのは初めてです」と、今回の論文の筆頭著者である英ケンブリッジ大学の古生物学者ダニエル・フィールド氏は語る。「アステリオルニスは、ティラノサウルスやトリケラトプスが生きていた時代の現生鳥類の仲間がどのような姿をしていたのかをはっきりと見せてくれます」

 今回の6670万年前の化石は北半球で発見されたが、これまでに知られている白亜紀の現生鳥類の仲間はいずれも南半球で見つかっていた。南極半島で発見され、2005年に記載された6650万年前のカモに似た鳥「ベガビス・イアアイ」もその1つだ。

 恐竜と同じ時代を生きた鳥類は多いが、その多くは、歯を持つエナンティオルニス類などの原始的な鳥で、陸上に生息するほとんどの大型動物とともに絶滅した。現生の鳥類はすべて白亜紀末期に出現した新鳥類と呼ばれる1つのグループに由来している。

「美しい標本です。白亜紀の新鳥類の標本として、初めて本当に美しいと言えるものです」と、中国の北京にある古脊椎動物・古人類学研究所の化石鳥類の専門家ジンマイ・オコナー氏は称賛する。

 オコナー氏によると、今日の鳥の祖先にあたる白亜紀の鳥の化石のほとんどが「断片的で疑わしいもの」だったが、今回の発見により、恐竜時代に暮らしていた現生鳥類の保存状態の良い化石がさらに発見される希望が出てきたという。なお、氏は今回の研究には参加していない。

「ワンダーチキン」の解剖学的特徴

 アステリオルニスは、ガンやカモなどのカモ目と、ニワトリやシチメンチョウなどのキジ目の最後の共通祖先に近いと考えられる。「キジとカモが白亜紀に枝分かれしたことは以前からわかっていたので、彼らの祖先が白亜紀にいたこともわかっていました」とオコナー氏。「今回ついにそれが見つかったのです」

「現生のニワトリとカモの頭蓋骨は大きく異なっています。アステリオルニスの頭蓋骨は、カモ目とキジ目の最も新しい共通祖先の頭蓋骨がどのような形だったかを初めて教えてくれます」とフィールド氏は言う。

 白亜紀に現れたと考えられているほかの現生鳥類の仲間には、ダチョウ、エミュー、レア、ヒクイドリなどの古顎類(こがくるい)がある。古顎類、カモ目、キジ目は現生鳥類の中ではかなり古くに枝分かれし、その他の鳥たちの多くは隕石衝突後に初めて出現したと考えられている。

次ページ:白紙になった鳥の南半球起源説

偶然の発見

 2000年に「ワンダーチキン」の化石を発見したファン・ディンター氏は、この標本をオランダのマーストリヒト自然史博物館に寄付した。2018年、博物館のキュレーターで論文の共著者であるジョン・ヤハト氏は、脚の骨が見える4個の小さな岩石をフィールド氏に送った。

 フィールド氏が外から見たかぎりでは、岩石には折れた脚の骨ぐらいしか入っていないように思われた。しかし、白亜紀末期の鳥は珍しいので、岩石の中に何が隠れているかを確認するため、高解像度CTスキャンを行ってみたという。

 博士課程に在籍していた学生のフアン・ベニート氏と一緒に「美しく保存された現生鳥類のほぼ完全な3D頭蓋骨」を見つけたフィールド氏は、驚きのあまりよろめいたという。「中生代に生息していた現生鳥類の頭蓋骨が発見されたのは初めてで、その上、化石鳥類の頭蓋骨の保存状態としては、あらゆる年代を通じて最高レベルでした」

 発見の瞬間は、フィールド氏の科学者生活の中で最もワクワクするものの1つだった。研究チームはこの鳥の学名をギリシャ神話に登場するティターン一族の流星の女神「アステリア」からとった。アステリアはウズラに姿を変えたとされているので、恐竜の時代を終わらせた隕石衝突の直前に生きていた鳥の名前にはぴったりだ。

白紙になった鳥の南半球起源説

 近年の発見から、現生鳥類のグループがどのように出現し、地球の歴史上最大の絶滅の1つをどのように生き抜いてきたかが徐々に明らかになってきた。つい最近もニュージーランドと南極で、隕石衝突から間もない時代に生息していた化石鳥類に関する報告があった。

 これまで最古とされていた南極大陸のベガビスをはじめ、現生鳥類の古い化石の多くは南半球で発見されているため、一部の古生物学者は、現生鳥類は恐竜時代に超大陸ゴンドワナの南部から生じたと主張していた。しかし今回、ベガビスよりもさらに古い鳥が北半球で発見されたことで、物語はそう単純ではないことが明らかになった。

「現段階で確実に言えるのは、現生鳥類の地理的起源は謎に包まれているということです」とフィールズ氏は言う。「現生鳥類が地球のどこで生じたかは、今後発見される化石だけが教えてくれるでしょう」

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