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世界最大の洞窟魚を発見、驚きの大きさ、インド

  • 2020年2月19日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 洞窟をすみかとする魚たちは、今のところ、250種ほど報告されている。彼らは永遠の暗闇の中で、乏しい食べ物に頼って暮らしている。そのため、洞窟魚の多くは体長10センチに満たないほど小さい。

 ところが、インド北東部にある洞窟で、体長約45センチ、体重が既知の種のおよそ10倍にまで成長する大型の洞窟魚が見つかり、学術誌「Cave and Karst Science」に報告された。

 2019年の調査でこの魚を発見したとき、英ヘリオット・ワット大学の生物学者、ダニエル・ハリーズ氏は、驚くと同時に困惑したと語る。

「この魚を実際に目にして最初に思ったのは、『しまった、もっと大きな網がいるな』ということでした」

 異例の大きさは、彼らがどのように体の大きさを維持し、餌を採り、洞窟内の生活に適応しているのかといった、さまざまな疑問をもたらした。多くの「真洞窟性動物(一生を洞窟の中で送る動物)」と同様、この魚は基本的に盲目だが、光を感じる能力はある程度持っているようだ。

 この魚は新種として進化する途上にあるのではないかと、ハリーズ氏は論文で述べている。

洞窟に広がる驚きの光景

 ハリーズ氏がこの魚を発見したのは、洞窟探検家のトーマス・アーベンツ氏をリーダーとして行われたインド、メガラヤ州への遠征ツアーの最中だった。一帯は石灰岩が豊富なカルスト地形になっており、雨水によって削られてできた数多くの洞窟がある。

 調査チームは、仲間の探検家から事前に件の魚の写真を見せられており、おそらく新種だろうと考えていた。それでも、ウム・ラダウ洞窟と呼ばれる地下約90メートルの狭い空間で、彼らが実際に見た光景は、にわかには信じがたいものだった。

次ページ:【動画】元気に泳ぎ回り、足にかじりつく世界最大の洞窟魚

 深い水たまりで、大きな魚が何十匹も泳いでいた。「わたしは水槽の熱帯魚を捕まえるような小さな網を手にして、呆然と水中を見下ろしていました」とハリーズ氏は言う。網が役に立たないことに気づいた同氏は、防水バッグの中にビスケットを入れたトラップで、なんとか魚を捕らえることに成功した。

 この魚はおそらく、雨で地下に流されてきた植物を食べていると考えられるが、現場でそうした場面は見られなかったという。

 雨期には一帯が水浸しになるため、ウム・ラダウ洞窟には、冬の乾期にしか入れない。

 洞窟魚がどのようにしてこれほど大型化し、また何を食べているのかは、まだ謎のままだとハリーズ氏は言う。洞窟内にはかりを持ち込むのが難しかったため、当時体重は計測しなかったが、おそらく1キロ程度と見積もられた。

 これまで発見された中で最も長い洞窟魚は、メキシコのユカタン半島の固有種ブラインド・スワンプ・イール (Ophisternon infernale)と、オーストラリア西部のブラインド・ケーブ・イール(Ophisternon candidum)の2種とされている。いずれも国際自然保護連合(IUCN)では絶滅危惧種(endangered)で、非常にほっそりとしたリボンのような体形だ。一方、今回発見された魚は「体はずっと太く、重さは次に大きな洞窟魚より少なくともひと桁は大きい」と、調査チームは報告している。

 チームは現在、インドの共同研究者、ニーレシュ・ダハヌカー氏、ラジーブ・ラガバン氏と共に、この魚が本当に新種かどうかを特定するために遺伝子を解析中だ。2020年1月に写真家のロビー・ショーン氏を伴って洞窟を再訪したハリーズ氏らは、数匹の生体のほか、研究室で分析にかけるためにひれの組織を採取した。

「わたしは20年前から洞窟の生物を撮影していますが、これほど大きなものを見たのは初めてです」とショーン氏は驚きを隠さない。

新種の発見、進化はどのように進む?

 ハリーズ氏によると、今回発見された魚は、普通の川にすむゴールデンマハシール(Tor putitora)というやはり絶滅危惧種と近い関係にあることは間違いないという。

 両者は非常に似通っている。見た目の違いは、洞窟魚の方には色素がないこと(体色は透明に近い白)、そして目がないと言っていいほど発達していないことだけだ。

 洞窟魚の方はまた、体長数メートルにまで成長するゴールデンマハシールよりも体が小さい。

 体の形と構造は非常によく似ているものの、この洞窟魚とゴールデンマハシールは、別の種と認められるには十分に異なるだろうと研究者らは考えている。

次ページ:「動物は大きく異なる形態へと比較的急速に進化できる」

 これと同じ状況にある魚が、メキシカンテトラ(Astyanax mexicanus、別名ブラインドケーブ・カラシン)だ。この洞窟魚は、地表にすむテトラ類とよく似ているが、目と色素を持たない。これはおそらく、地表にすんでいた魚がはるか昔に地下に隔絶され、その後、光のないすみかに適応する特徴を発達させていったものと考えられる。

 メキシカンテトラが色素と視力を失うまでの遺伝的な過程についての研究は複数存在する。今回のインドの種についても同様の研究が行われることで、こうした適応に関する遺伝的な基盤の理解はさらに進むだろう。

 メキシカンテトラ、そしておそらくは新たに発見されたインドの魚も、種に分かれる進化の途上にあると思われる。

 一般に、進化は非常にゆっくりとした過程だと考えられているが、そうではないとハリーズ氏は言う。「こうしたシステムについての研究からは、動物は大きく異なる形態へと比較的急速に進化できるようです」

 さらに、今回の発見のように、洞窟には独自の生き物が生息しており、その保護が重要だとハリーズ氏は言う。通常、石灰岩にできる洞窟は、世界中で水質汚染、セメントや石炭のための開発といった脅威にさらされている。そのせいで、洞窟に生息する種が、記録される前に絶滅してしまう可能性がある。

新たな発見はまだまだ続く

 完全な暗闇で暮らしているにも関わらず、新たに発見された洞窟魚は素早く泳ぎまわれる。これは明らかに、自分がすんでいる水場がどこまで広がっているのかを感知できるからだろう。また彼らは好奇心旺盛で、お腹もすかせているようだった。

「ブーツや指を水中に入れると、近寄ってきてかじりつくのです」と、ハリーズ氏は言う。

 最初のうちは、彼らが光を感じ取っている様子はなかった。しかし何度か観察しているうちに、こちらが明かりをつけると、彼らが逃げようとすることがわかってきた。

 照明は、調査チームが動き回ったり写真を撮ったりするうえで欠かせない。ショーン氏によると、洞窟内の撮影が厄介な理由のひとつは、光をすべて自前で用意しなければならない点だという。

「最低限のことができるようになるまでに、何年もかかりました。今もまだ勉強中です」

 それでも、今回のような新発見は刺激的で、大半の人が見たこともないものを追い求めたくなるのだと、ショーン氏は言う。

「発見されていないものは、まだたくさんあります」

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