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1億年前のハチの巣を発見、グループで最古

  • 2020年2月17日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 新たに発見された化石に、古生物学者らが騒然としている。1億年前の南米パタゴニア地方に生きていたハチの巣の化石だ。ミツバチをはじめ花を訪れる「ハナバチ類」としては最古の証拠だという。論文は1月29日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表された。

 この巣穴はブドウの房のような形をしており、幼虫が成熟するための小部屋と、それらをつなぐトンネルからなる。現生の昆虫のうち、こうした形の巣穴を作るのはコハナバチ科のハチだけだ。コハナバチ科は世界中に生息し、非常に多くの種がある。一部の現生種は、今回見つかった化石にそっくりな巣穴を地下に作る。

 たまたま同じ構造の巣穴を作るまったく別の生物がいたとは考えにくいため、研究者らは、今回の化石の巣を作ったのはコハナバチ科のハチだったと確信している。新発見の巣穴は、1億〜1億500万年前に形成された岩石の中に保存されていた。

 これに次いで古いハナバチの巣の化石は9400万〜9700万年前のもので、ハナバチそのものの最古の化石となると、確定しているのはおよそ7200万年前のものである。

 ハナバチは、最も重要な花粉媒介者の1つだ。今回の発見は、ハナバチの進化の物語に重要な一節を書き加えるとともに、白亜紀初期にハナバチと初期の顕花植物(花を咲かせる植物)の一部がともに多様化したことを裏付けている。

「ハチが多様化した時期をさらに絞り込むことができました。巣穴の化石が残っていたことは驚異的としか言いようがありません。私たち古生物学者にとっては宝くじを当てたような幸運です」と、米ニュージャージー工科大学の進化生物学者フィル・バーデン氏は言う。なお、氏は今回の研究には参加していない。

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特定の瞬間をとらえた化石

 化石が見つかったと聞けば、ふつうは動物の骨格や輪郭を想像するだろう。けれども、古代の動物が残した足跡、巣、糞なども化石になり、生痕化石と呼ばれている。生痕化石は、絶滅した動物たちが生きていた時代の特定の瞬間をとらえており、彼らの行動を詳細に教えてくれる。

「生痕化石を調べることで、昆虫が移動し、穴を掘り、花に止まり、巣を作るのを『見る』ことができます」と、研究チームを率いたアルゼンチン、ベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館の古生物学者ホルヘ・フェルナンド・へニセ氏は語る。

 へニセ氏は、子どもの頃にスズメバチに魅せられて以来、昆虫の研究に没頭してきた。2017年には、生痕化石から先史時代の昆虫を調べる方法についての本も出版している。彼が主に注目している時代は白亜紀。生痕化石を残す昆虫のほとんどが出現または多様化した時代だ。

 2015年にへニセ氏のチームは、古代の昆虫の巣を探すため、アルゼンチン南部にあるカスティージョ累層の露頭を訪れた。カスティージョ累層は1億〜1億500万年前に形成された地層である。目的地までの道のりは、公園の散歩とは全く違った。パタゴニア平原はどこまでも広がっていて、日中は強烈な日差しと強風、夜は厳しい寒さに苦しめられた。「野外調査は本当に過酷なのですが、同時に、岩石の中に隠れた宝物を見つけ、科学に役立てるのは大きな喜びです」とへニセ氏。

次ページ:遺伝子と化石で進化をたどる

 岩壁から飛び出している構造物に気が付いたのは、研究チームのメンバーであるアルゼンチン、エジディオ・フェルグリオ古生物学博物館のJ・マルセロ・クラウセ氏だった。それがコハナバチ科の巣穴の化石と判明したとき、研究チームはクラウセ氏の貢献を讃えて、この生痕化石を「ケルリカリクヌス・クラウセイ(Cellicalichnus krausei)」と命名した。

 へニセ氏のチームは2017年に再び現地を訪れ、新たに甲虫やスズメバチの生痕化石も含め、見つけた化石をできる限り採集した。また、ハチたちが巣穴を掘った古代の土壌の性質を解明するため、化学的なデータも収集した。昆虫たちは、氾濫原の中の、比較的積もったばかりの火山灰からなる土壌に巣を作ったようだ。

遺伝子と化石で進化をたどる

 へニセ氏のチームは、現生の64種のハナバチのDNAと、新発見の巣の化石や以前に見つかっていた化石から得られる情報とを組み合わせ、ハナバチの系統樹を描き直した。DNAだけでも有益な系統樹は得られるが、さまざまなグループのハチが生きていた時期や、それらが分岐していった時期を見積もるのは非常に難しい。へニセ氏らは、化石から得られるデータを加えることで、いくつかのグループについて時期を絞り込むことができた。また、今回発見された巣から、コハナバチが1億年以上前に進化したことも明らかになった。

 氏らのモデルは、現生のハナバチの仲間が1億1400万年前頃から猛スピードで多様化しはじめたことを示している。これは、真正双子葉類(顕花植物の75%を占めるグループ)が多様化しはじめたのと同時期だ。今回の結果は、花粉を媒介するハチと顕花植物がごく初期から共進化してきたとする説を補強し、過去に得られたいくつかの遺伝学研究の成果を裏付ける。

 へニセ氏らは現在、古代のトンボの行動を保存した化石や、古代のアリクイの仲間に破壊されたと思われるアリの巣穴など、他の珍しい生痕化石の分析に取り組んでいる。「このチームなら、どんな研究でもできます」と氏は言う。

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