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野生のボブキャットが米国の首都に出没、レア

  • 2020年1月17日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 米国の首都ワシントンD.C.の面積は、東京都区部の4分の1ほど。生態学者のダン・ヘレラ氏は、この都会でカメラトラップ(自動撮影装置)を使い、さまざまな動物を観察している。とりわけ、街の北西に位置するポトマック川周辺の森は動物の宝庫で、同氏はここでコヨーテやアカギツネ、ビーバー、さらにはモモンガなどを発見している。

 撮影された写真を見直していたヘレラ氏はある日、驚くべき動物を発見した。ボブキャットだ。性別不明の野生のボブキャットで、2019年11月9日午前6時21分、カメラの前を通過した(保存されている写真はまだたくさんあり、ヘレラ氏は現在、確認作業を進めている)。

 この発見に「とても興奮しています」と言うのは、米国のスミソニアン保全生物学研究所の研究者マイケル・コーブ氏。氏はたびたびヘレラ氏と共同研究を行っており、「まさかDCでボブキャットを見ることになるとは思いませんでした」と語る。近年、ワシントンD.C.でボブキャットが正式に確認された例はない。

「都会でボブキャットが見つかる例は、私の知る範囲だと米国西部では報告がありますが、東海岸では新しい現象です」とヘレラ氏は説明する。「興味をそそる発見であり、話題になることを期待しています」

 これらの写真は、「DCキャット・カウント」というプロジェクトの一環として収集された。このプロジェクトの目的は、ワシントンD.C.とその周辺に暮らす、ペットのネコと野生のネコ科動物の個体数を予測することだ。

都市化が進んだ地域には足を踏み入れない

 ワシントンD.C.は、ボブキャットの本来の生息域に含まれている。しかしこの動物は用心深く、通常、都市化が進んだ地域には足を踏み入れない。近年ワシントンD.C.で確認された唯一のボブキャットは、2017年にスミソニアン国立動物園から脱走した雄のオリーだ。オリーは動物園の敷地内で捕獲されている。

 ボブキャット(学名Lynx rufus)は米国本土の48州に分布し、比較的繁栄している。カリフォルニア州南部とその周辺を対象にボブキャットの分布状況を調べているクリストファー・コザキエビッチ氏によれば、絶滅した地域に再導入された例もあるという。

 ただ、ボブキャットが生息するには、ネズミ、リス、ウサギなどの小型哺乳類が十分な数を保てるくらい広大な緑地を必要とする。都市の周辺でよく見られるコヨーテやキツネといった雑食性の動物に比べると、ボブキャットはそれほど適応力が高くないと、コーブ氏は説明する。

 ポトマック川に沿った米国立歴史公園チェサピーク・オハイオ運河では、長年、ワシントンD.C.の緑地の改善に取り組んでおり、一帯には樹木でおおわれた川岸が広がっている。ジョージ・メイソン大学の都市生態学者トラビス・ギャロ氏は今回の発見について、「D.C.の緑地の質の高さを物語っています」と話す。

次ページ:カメラトラップが撮影した首都のボブキャット

用心深く、人を避けるボブキャット

 コーブ氏によれば、これまでにボブキャットが正式に確認されているワシントンD.C.から一番近い場所は、約40キロ西のバージニア州ラウドン郡だった。ただし、その場所で暮らしていたかどうかは不明だ。バージニア州のほかの国立公園などにも、繁殖可能な安定した個体群が存在すると、コーブ氏は説明する。

 ポトマック川は、ボブキャットがワシントンD.C.から郊外へ抜ける“通路”として機能している。例えば、ボブキャットが定着しているアパラチア山脈地方へも抜けられる。

 ボブキャットは夜行性で用心深い。活動中でも、めったに見かけることはない。「彼らはとても用心深く、明らかに人を避けています」とコザキエビッチ氏は語る。

 米農務省の野生生物学者ジュリー・ヤング氏によれば、通常、ボブキャットは、人が飼っているペットも避けるという。同氏はテキサス州のダラス近郊でボブキャットの分布と食性を調べたことがある。ヤング氏らがボブキャットの排せつ物を調べた結果、ネコやイヌを捕食している証拠は見つからなかった。

 ボブキャットはダラスで繁栄しており、ゴルフコースのような緑地に現れることもあれば、地下道や店舗の駐車場などを移動に使うこともあると、ヤング氏は言う。

 ヘレラ氏によると、こうした行動は東海岸で見られることはあまりなく、東海岸のボブキャットはさらに用心深いのかもしれないと分析している。

 DCキャット・カウントのプロジェクトは継続され、ジョージ・メイソン大学のギャロ氏らも2020年春、ワシントンD.C.大都市圏にカメラトラップを設置する予定だ。「ボブキャットや他のめずらしい動物がこれらの緑地を通過しているだけなのか、実際に暮らしているのかを確かめたいと思います」

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