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ジュラ紀の生態系崩壊、原因は地球の極移動、新研究

  • 2019年11月19日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 最初は気候変動による絶滅だと思われていた。今から1億6000万年以上前のジュラ紀、現在の中国東北部にあたる地域の涼しくて雨の多い森林では、奇妙な動物たちが地を這い、泳ぎ、空を飛んでいた。ところがその後、地質学的には一瞬とも言えるような短い期間に気温が上昇し、大地は干からびていった。水は失われ、生命も失われた。研究者たちは、このとき生態系が崩壊した原因を特定しようと奮闘してきたが、答えは見つかっていなかった。

 地質学の専門誌『Geology』に10月15日付けで発表された新しい論文で、変化したのは気候ではなく、この土地の地理的な位置であったとする新説が発表された。岩石に刻まれた古地磁気学な記録を調べると、1億7400万年前から1億5700万年前にかけ、この地域全体が南に25度も移動し、緑の森を高温乾燥帯へと変容させたことを示す証拠があったという。

 この変化は、地球の表面に近い地殻やマントルが大きく回転する、「真の極移動」と呼ばれる現象の一部である。

 問題の時期に、地球の表面とマントルがアフリカ西岸を貫く想像上の軸のまわりにぐるりと回転し、アジア大陸は大きく南に移動した、とするのが今回の説だ。

 これよりも小規模な真の極移動は地球の歴史を通じて何度も起きていて、一部の科学者は、今日も続いていると考えている。

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解明されていなかった東アジアの過去

 こうした回転によって、地表は大きな影響を受けるが、地球の磁場は基本的に影響を受けない。なぜなら地球の磁場は、地球表面から約2900kmの深さに位置する外核の、溶融した鉄とニッケルの流動によって生じるからだ。

 研究者は、地磁気に沿って整列した鉱物を分析することで、地球の込み入った過去を解き明かすことができる。堆積物が集まって凝固したり、溶岩が冷え固まって岩石になったりするとき、これらの鉱物はコンパスの針のように地磁気に沿って整列し、その地域が特定の時代に地球上のどこにあったかをスナップショットのように記録するからだ。

 米ラトガーズ大学とコロンビア大学に所属する古地磁気学者のデニス・ケント氏と、カナダ地質調査所の故エドワード・アービング氏は、火山岩の研究から、ジュラ紀に非常に大きな移動があった証拠を発見している。彼らが2010年に発表した論文は、1億6000万年前から1億4500万年前までの間に地球の表面が約30度も移動したことを示していた。

 その後の研究で、今日のアフリカ、北米、南米、中東から見つかった証拠により古地磁気記録の穴が埋まると、地球の表面全体がジュラ紀に大きく回転していたことがますます確実になっていった。けれども1カ所だけ、ほとんど動いていないように見える場所があった。モンゴル、中国、北朝鮮、韓国からなる東アジアブロックだ。

 今回の論文の共著者である米フロリダ大学の古地磁気学者ジョゼフ・メールト氏は、「東アジアブロックの緯度は、ジュラ紀にはほとんど動いていないように見えました」と言う。「これは乾燥化の事実と一致しません」

 メールト氏によると、問題の一部は幅広い時代の岩石サンプルを採取していなかったことにあるという。火山岩は磁北を忠実に記録するが、磁極は移動しているため、数千年分のデータを平均する必要があるのだ。

大規模な移動が起きていた?

 今回の論文の筆頭著者である中国科学院地質研究所の易治宇氏は、より強固な古地磁気記録を収集して東アジアの地質学的移動を解明するため、2015年夏と2018年春に新しい研究チームが現地調査に赴いたと説明する。

 中国各地のさまざまな色合いの岩石は、それぞれが形成された異なる時代背景を伝えている。ジュラ紀の初期から中期にかけての堆積物は黒っぽい色をしていて石炭を多く含み、植物が繁茂する湿度の高い土地だったことを示唆する。これに対して、ジュラ紀後期の地層では、乾燥していたことを示す、錆びたような赤い色の堆積物が見られる。

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 研究チームは57の地点で、こうした入り組んだ地層に織り込まれた火山石のサンプルを採取。分析の結果、ジュラ紀後期の赤い岩石が低緯度の場所で形成されていたことが示された。さらに、より古いサンプルを分析したところ、驚くほど高緯度の場所で形成されていたことがわかったのだ。

「その瞬間、データの意味がわかりました。私たちはついに真の極移動の証拠を見つけたのです」と易氏は言う。

分析結果は、ジュラ紀の地球の表面が少なくとも毎年17cmずつ移動していたことを示唆している。これにより東アジアは徐々に乾燥し、燕遼生物群と呼ばれるこの地域の古代の動植物の多くを衰退させた。

 過去の研究から、約1億3000万年前にもう一度小さな真の極移動が起きて東アジアは再び穏やかな気候になり、熱河生物群と呼ばれる多様な生物が登場したことがわかっている。熱河生物群の化石は保存状態が非常に良く、最初の羽毛恐竜など多くの驚くべき発見があった。

真の極移動をめぐり残る謎

 科学者の中には、今回明らかになった移動とその大きさは過去の研究とよく一致していて、謎の気候変化をうまく説明できていると評価する声がある一方で、こうした現象はすべてプレートの運動で説明できるとして、真の極移動の存在そのものを否定する声もある。

 実際にジュラ紀に大きな真の極移動があったとしても、多くの問題が残っている。例えば、地球表面の質量のこれだけ大規模な再分配を起こすような大移動の原動力は何なのだろうか。1枚のプレートが別のプレートの下に潜り込む「沈み込み帯」の誕生が、その原動力なのかもしれない。あるいは、すでに沈み込んだ部分がバラバラになり、マントル中を沈んでゆく破片が惑星の質量バランスを乱すのかもしれない。ジュラ紀の真の極移動の謎を解明するには、地質学の謎を1つ1つ解明していくしかない。

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