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気候変動で植物が巨大化、水不足の原因に

  • 2019年11月7日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

 今世紀末には、植物は今よりも多くの水を消費するようになる。結果、降水量が増えたとしても、北米、ヨーロッパ、中央アジアの人々が使える水は減ってしまうだろう――先日、学術誌「Nature Geoscience」に発表された最新研究の結論だ。

 植物は、水循環を調節する重要な因子だ。実に、地上から大気への水の移動の60パーセントを植物が担っている。今回の研究は、気候変動が水の循環という重要なサイクルに、さまざまな面で影響することを示している。

「植物は大気にとって、ストローのような存在です。地上から大気への水の移動をつかさどっていると言っていいでしょう」。論文の主執筆者で、米ダートマス大学の気候地理学者、ジャスティン・マンキン氏はそう語る。

 このあと数十年で、二酸化炭素排出量が大幅に削減されない限り、世界の平均気温は4〜6℃上昇し、大気中のCO2濃度は今世紀末までに2倍に増加する。こうした「温室」環境では、栄養不足などを考慮しない場合、植物は爆発に増える可能性がある。「その分、人が使える水は減ることになる」とマンキン氏は言う。

 植物の成長に気候変動が与える影響には、次の3つが考えられる。まずは、CO2濃度が上昇すると、植物が光合成に要する水が減るとされる。これは十分に裏付けのある現象で、その結果、人間が利用できる土壌や河川の水は増えると考えられてきた。しかし、これとは逆の効果をもたらす2つ目の影響がある。それは、地球の気温が上昇すれば、植物の成長期間が長くなるため、その分、水を消費する期間が長くなって地上の水が少なくなる、というものだ。

 そして、3つ目の影響は、CO2濃度が上昇すると、光合成の作用が増幅されるというもの。これこそ、今回研究者が示したことだ。より暑く、CO2濃度が高い環境にある植物は、より大きく成長し、葉の数も増える。つまり、雨が降った際、濡れた葉の表面積が広くなり、蒸発する水も増えることを意味する。モデルを使ったシミュレーションでは、こうした葉からの蒸発の増加は、地下に吸収されずに流れる雨水や、土壌の水分量に大きく影響すると、マンキン氏は言う。

 マンキン氏のチームは、過去のデータを組み込んだ16種類の気候モデルを用いて、降水量、葉からの蒸発量、土壌からの蒸発量、葉面積指数、土壌水分など、様々な変数について、過去の条件をできるだけ正確に再現した。さらに、地表の気温やCO2濃度などの将来の気候に関する変数を加えることで、地球の水循環にどんな影響があるかを探った。

 暖かくCO2濃度の高い地域では、どこも現在より多くの水を植物が消費する。そして、大気に放たれた水は、高緯度地域や熱帯地域では、植物が成長のために消費した量を相殺する降水があるとマンキン氏らは予測している。

 つまり、このことは一方で、北米やヨーロッパ、中央アジアを含む中緯度地域で、河川の水量が減少することを示しているのだ。

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残念なニュース

「CO2濃度の上昇が植物に影響を及ぼすことで、淡水がより多く利用できる可能性があるとの説がかつてはありました」。こう話すのは、地球の水問題を扱う米パシフィック研究所の元所長で、同分野の世界的な権威であるピーター・グリック氏は言う。

「林冠を含むバイオマス全体を、より正確にモデリングすれば、よりはっきりと"残念な結論"が出ることでしょう。CO2濃度の上昇と関連する気候変動は、水の利用可能性を改善するのではなく、悪化させるからです」

 この結果は、「米国西部にとっては、ほぼ確実に悪いニュース」だと、グリック氏は付け加えた。

 これまで、気候に関する研究では、CO2排出量が現在のまま変わらなければ、米南西部とグレートプレーンズ中央部は、2100年までに80パーセントの確率で35年以上の「大干ばつ」に見舞われるとされてきた。CO2排出量を多少減らしたくらいでは、このリスクが60パーセントまで減少するだけだ。ちなみに、この大干ばつモデルには、今回の研究で示された、植物の変化が条件を悪化させるというデータは含まれていないと、グリック氏は指摘する。

 大気中のCO2濃度はすでに上昇しており、気候は温暖化に向かいつつある。衛星写真からは、過去40年間で植物が大幅に増えていることが見て取れると、マンキン氏は言う。植物の成長シーズンも長くなっているが、こうした近年における植物増加が、気候変動だけによるものなのかどうかは判然としない。なぜなら過去100年間で人間が地表にもたらした変化は、あまりにも多岐にわたるからだ。

上昇を続けるCO2濃度

 少なくとも過去80万年の間、大気中のCO2濃度は180〜290ppmの間で変動していた。過去1万年間は280ppm前後で推移していたが、変化のきっかけとなったのは、産業革命で石炭の使用が爆発的に増加したことだ。

 2019年9月のCO2濃度は412ppmで、産業革命前よりも47パーセント高い。これ以前にCO2濃度が400ppmを超えたのは2500〜1600万年前のことで、そのころは地球も、その気候も今とはまるで違っていた。

 CO2濃度は毎年2ppmずつ上昇している。石炭、ガス、石油をこのまま使い続ければ、中緯度地域の干ばつの進行はより速く、より長く、より深刻になるだろう。

 水不足はすでに重大な社会課題となっており、2016年の研究によると、40億もの人が1年に1カ月は深刻な水不足に苦しめられているという。水の供給量が将来的に少しでも減るというのは、極めて残念なニュースだ。米国のように経済的に豊かな国でさえ、デトロイトから南西部に至るまで、水不足に悩まされている人々が存在するのが現状だと、マンキン氏は言う。

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